日韓の貿易紛争は海外でも耳目を集め始めている。
日本が7月1日に発表したフッ化ポリイミド・レジストなど半導体素材輸出規制について、日本政府は公式には韓国政府に対する報復措置ではないと報じている。しかし安倍首相の「相手国が約束を遵守しない状況で、従来の優遇措置を与えることはできない」の言葉が示すとおり、実質的には報復措置であり、しかもそれは韓国経済にとって強烈なパンチのようだ。
たとえばチップの重要素材であるフッ化ポリイミドについて、韓国は90%を日本からの輸入に頼っている。フッ化ポリイミドのような素材の調達が進まないとスマートフォンの出荷が遅れることになるので、世界の経済界は日韓の貿易紛争問題に注目している訳だ。
エコノミスト誌は、A trade dispute between Japan and South Korea has Trumpian echoesという記事の中で、日本がメモリーチップ生産の喉元を抑えていることを紹介するとともに、この貿易紛争の淵源が1910年~1945年の日韓併合時代に戻るこを説明している。
またWSJはSnapshot of a South Korean Boycott: "This mart doesn't sell Japanese prodcts!"の中で、韓国ではこれまで人気が高かった日本製のタバコやビール、ユニクロ製品の不買運動が高まっていると報じている。
ボイコット運動が高まっていることは、韓国人の興奮しやすい気質の現れであるとともに、貿易政策で日本に対抗措置を取れないことの裏返しともいえそうだ。つまり韓国側にこの商品の輸出を抑えると日本が音をあげるといったキーとなる商品がないのである。
日本の半導体輸出制限策はまさにタリフマンと自称するトランプ大統領の対外交渉術を応用したものと言えるが、国と国との約束を守ることができない国に対しては妥当な対応策だと私は考えている。
対外交渉において戦争で無条件降伏を勝ち取った場合以外は100%の勝利を得ることは難しい。難しい中でその時々に交渉当事国はその時々の決着をつけてそれを条約化していく。結ばれた条約は政権交代を超えて維持されて行かねばならない。たとえば日本では江戸末期に徳川政権がフランスなどから多額の借款を行い造船場を建設したことがあった。明治政府はこの借金を引き継ぎ、営々と返済を続けたのである。
現在韓国側が主張する「元徴用工に対する補償問題」は、実は日韓両国が1965年の国交回復時に調印した「日韓請求権協定」に基づき、韓国人労働者の請求権問題は解決済みであり、韓国の民間人が日本側に再度賠償を求めることはできないのである(日本政府の立場)。
この点については、残念ながらエコノミスト誌にしてもWSJにしても明確に日本の主張が正しいという立場を取っている訳ではない。
またこれまでこの問題に対し傍観者的立場を取っていた米国も少し問題を気にしだしたようで、デービッド・スティルウエル国務次官補が訪韓し解決に向けて援助する意向を明らかにした。
WSJによると同氏はWashington would do what it can to help patch up the frayed relationship its two alliesと述べている。
「米国政府はボロボロになった二つの同盟国(日本と韓国)の関係を修復するためにできることをするつもりだ」ということだ。
ただしPatch upにはシステム用語で「パッチをあてる」という使われ方をするように、本格対応ではなく一時的な修復を指すと考えるべきだ。
つまり米国が仲介役になっても、日韓間の問題は簡単には片付かないのである。