金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米中貿易問題の政治化で解決の糸口は遠のく?

2019年08月15日 | 国際・政治

昨日(8月14日)トランプ大統領はツイッターで「香港のデモ問題を解決するために習近平首相と個人的に会ってもよい」と示唆した。

またトランプ大統領は「中国が貿易交渉をまとめたいと思うのなら、香港問題を人道的に解決するべきだ」と述べた。

米国議会には香港のデモを民主化運動として支持する声が高まっていたが、大統領はこの問題に言及していなかった。

中国政府の息のかかったメディアは、香港問題は中国の内政問題であるとして米国の干渉に嫌悪感を示している。

目下のところトップ会談提案に対する中国側の回答はない。

ここにきて大統領が米中貿易問題と香港の民主化運動を結びつける発言をしたことで、貿易問題の解決の糸口は遠のいたのではないか?と私は考えている。

 

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半導体輸出制限に韓国は日本製タバコ・ビールのボイコットで対抗

2019年07月19日 | 国際・政治

日韓の貿易紛争は海外でも耳目を集め始めている。

日本が7月1日に発表したフッ化ポリイミド・レジストなど半導体素材輸出規制について、日本政府は公式には韓国政府に対する報復措置ではないと報じている。しかし安倍首相の「相手国が約束を遵守しない状況で、従来の優遇措置を与えることはできない」の言葉が示すとおり、実質的には報復措置であり、しかもそれは韓国経済にとって強烈なパンチのようだ。

たとえばチップの重要素材であるフッ化ポリイミドについて、韓国は90%を日本からの輸入に頼っている。フッ化ポリイミドのような素材の調達が進まないとスマートフォンの出荷が遅れることになるので、世界の経済界は日韓の貿易紛争問題に注目している訳だ。

エコノミスト誌は、A trade dispute between Japan and South Korea has Trumpian echoesという記事の中で、日本がメモリーチップ生産の喉元を抑えていることを紹介するとともに、この貿易紛争の淵源が1910年~1945年の日韓併合時代に戻るこを説明している。

またWSJはSnapshot of a South Korean Boycott: "This mart doesn't sell Japanese prodcts!"の中で、韓国ではこれまで人気が高かった日本製のタバコやビール、ユニクロ製品の不買運動が高まっていると報じている。

ボイコット運動が高まっていることは、韓国人の興奮しやすい気質の現れであるとともに、貿易政策で日本に対抗措置を取れないことの裏返しともいえそうだ。つまり韓国側にこの商品の輸出を抑えると日本が音をあげるといったキーとなる商品がないのである。

日本の半導体輸出制限策はまさにタリフマンと自称するトランプ大統領の対外交渉術を応用したものと言えるが、国と国との約束を守ることができない国に対しては妥当な対応策だと私は考えている。

対外交渉において戦争で無条件降伏を勝ち取った場合以外は100%の勝利を得ることは難しい。難しい中でその時々に交渉当事国はその時々の決着をつけてそれを条約化していく。結ばれた条約は政権交代を超えて維持されて行かねばならない。たとえば日本では江戸末期に徳川政権がフランスなどから多額の借款を行い造船場を建設したことがあった。明治政府はこの借金を引き継ぎ、営々と返済を続けたのである。

現在韓国側が主張する「元徴用工に対する補償問題」は、実は日韓両国が1965年の国交回復時に調印した「日韓請求権協定」に基づき、韓国人労働者の請求権問題は解決済みであり、韓国の民間人が日本側に再度賠償を求めることはできないのである(日本政府の立場)

この点については、残念ながらエコノミスト誌にしてもWSJにしても明確に日本の主張が正しいという立場を取っている訳ではない。

またこれまでこの問題に対し傍観者的立場を取っていた米国も少し問題を気にしだしたようで、デービッド・スティルウエル国務次官補が訪韓し解決に向けて援助する意向を明らかにした。

WSJによると同氏はWashington would do what it can to help patch up the frayed relationship its two alliesと述べている。

「米国政府はボロボロになった二つの同盟国(日本と韓国)の関係を修復するためにできることをするつもりだ」ということだ。

ただしPatch upにはシステム用語で「パッチをあてる」という使われ方をするように、本格対応ではなく一時的な修復を指すと考えるべきだ。

つまり米国が仲介役になっても、日韓間の問題は簡単には片付かないのである。

 

 

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米下院トランプ大統領非難決議、与党議員の一部も賛成投票

2019年07月17日 | 国際・政治

昨日(7月17日)米下院は、トランプ大統領が白人でない女性議員を念頭に、「アメリカが気に入らないなら出ていけばよい」という趣旨の発言をしたことに対し、「人種差別発言だ」とヒートアップして、大統領非難を決議した。下院は野党民主党が優勢だが、上院は与党共和党が優勢なので、上院では非難決議は否決される見込みだ。

非難決議賛成者は240名で反対者は187名。240名の賛成者の内235名は野党民主党で4名は与党共和党で1名は独立系議員だった。

ニュース自体は日本語でも流れているので詳述しないが、私が注目したのは与党議員4名が共和党下院のリーダーに反旗を翻し、トランプ発言を人種差別発言と非難した点だ。

現時点で4名の議員がいかなるバックグラウンドでトランプ非難に回ったのかは知らないが、米国の議員は個人の是々非々の判断で投票する一例を見たようで興味深かった。なお「個人の是々非々の判断」といったが、より正確には自分を選んでくれた選挙民の判断を尊重して投票するという方がより正確だろう。選挙民の意向を尊重しない議員は選挙で痛い目に合うからだ。

日本では各党の党議拘束が強く、議員が個人の判断で投票するケースは少ない。

日本ではまもなく参院選挙投票となる。選挙公報や政見演説の公約をベースに投票することになるが、6年間の議員任期の間には当然選挙時点では、想定されていなかった問題がでてくるはずだ。しかしその時に議員が自分を選んでくれた人の意見を聞き、それを代弁するという動きを取ることは少ないのではないか?

日本でも党議拘束を緩めて、議員がもっと選挙民の意向を尊重しながら自由な投票を行うように変わると政治に対する関心がもう少し高まるのではないか?と感じた次第。

もっとも仮に党議拘束を緩めても、政治や政治家に対する信頼が大幅に改善することはないだろう。日本より自由な投票を行っているアメリカでも政治家への信頼は決して高くないからだ。

 

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現時点では民主党候補がトランプ大統領より優勢だが・・

2019年07月16日 | 国際・政治

数日前のWSJに、大統領選挙に関するWSJ/NBCの世論調査がでていた。

その調査によると、現時点で選挙が行われるとすると民主党の4候補がトランプ大統領よりも優勢であることが分かった。

民主党候補の中で一番優位に立ったのは、ジョー・バイデンWSJに、大統領選挙に関するWSJ/NBCの世論調査がでていた。

 

その調査によると、現時点で選挙が行われるとすると民主党の4候補がトランプ大統領よりも優勢であることが分かった。

 

民主党候補の中で一番優位に立ったのは、ジョー・バイデン。51%の人がバイデンに投票すると答え、トランプに投票すると答えた人は42%だった。

同じくバーニー・サンダース50%対トランプ43%。エリザベス・ウォーレン48%対トランプ43%。カーマラ・ハリス45%対44%である。

誰が民主党の大統領候補になるかは決まっていないが、現時点での世論調査はトランプの苦戦を示唆しているように見える。

だがことはそれ程単純ではない。まず大統領は全国ベースの得票数で決まるのではなく、州ごとの得票数で決まる。前回選挙でトランプ大統領は全国ベースの得票数ではヒラリーに負けたが州ごとの選挙人確保数では上回った。

また現時点でトランプに投票するという人の割合は42~44%で、これは岩盤的なトランプ支持の割合と一致している。

共和党(およびその支持者)の9割はトランプ大統領支持で固まっているので、大統領選挙では民主党候補がどれだけアンチトランプ票を集めることができるかどうかが、勝ち負けの分岐点だろう。

さて大統領選挙では何が争点になるのだろうか?

先のことは分からないというしかないが、仮に景気が比較的順調で大きなリセッション入りをしていなければ、経済問題は大きな論点にはならないだろう。むしろ論点になるのは、移民問題や中絶問題ではないだろうか?

これらの問題は、私にはあまり身近な問題ではないので、論評を加えにくい。恐らく相当な米国通の人でないと理解しにくいことが大きな争点となり、大統領が選ばれていくことになる。ある意味では~中絶反対が公然と論じられ、一部立法措置化されている~米国は、世界的に見て特殊な国である。世界と日本に最も大きな影響力を持つ国の大統領が、米国固有の論点で決まっていくのは、当たり前だといえば当たり前だし、興味深いといえば興味深い話である。

 

 

 

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対中国関税強化でも製造業は回帰せず、アメリカへ

2019年07月11日 | 国際・政治

WSJに掲題の記事が出ていた。原題は"Reshoring" report finds factory work not returning to U.S.である。

アメリカが製造業の国内回帰を目標の一つとして中国への関税強化をしているとすると、その点ではアメリカの政策は的外れとなっている。

対中国関税強化にも関わらず、2018年の中国および他のアジア13か国からの米国への工業品の輸入は9%増加して8,160億ドルとなった。またアジア諸国からの輸入品と米国国産品の比率も2017年の12.7%から2018年には13.1%に増加している。

この問題を取り上げているATカーニーのレポートは「我々が見ているものは一種の中国の分散である」と述べている。米国企業は一部を除き、米国回帰を行うよりは、サプライチェーンをベトナム、フィリピン、カンボジア、インドに拡大している。

これら中国以外のアジア諸国は賃金の点では中国より安いが、物流インフラや工場のキャパシティでは中国に劣るので、中国が米国への最大の輸出拠点であることは変わりがない。

なお工場の米国回帰が検討されている分野は精密機械等自動化により米国の高い賃金を吸収できる分野に限られているようだ。

一方中国では関税の影響で、工場出荷価格の上昇率が鈍化していて、今後下落する可能性が高いとみるエコノミストがいる。出荷価格の低迷は中国企業の収益を悪化させる。

米中貿易摩擦は、製造業についてみると米中ともに頭の痛い話である。

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