例年クリスマスシーズンを過ぎると米国株は新年度入りで上昇することが多い。これをサンタクロース・ラリーと呼び、S&P500は1950年以降78%の確率でこの期間上昇している。ところが今年は世界的な景気低迷予測やインフレ抑制のための政策金利引き上げが続き、株価は低迷を続けている。
おそらく株価低迷は2023年になってもしばらく続くだろうし、債券利回りもまだ上昇しそうだ。そう考えると投資対象を定めるのが難しいだろう。
そんな中WSJにThe Best Investment to make in 2023 is in Yourself(2023年の投資は時分に投資するのが一番)という記事が出ていた。
確かに先行き見通しがはっきりしない時、株や債券に投資をしても目先の利益を得られない可能性が高い。いや目先の利益が得られないだけでなく、高値でつかんだ株価はポートフォリオの重荷になる可能性がある。それよりは自分自身への投資を行った方が確実かもしれない。
記事はボストンカレッジの法学部教授ダイアン・リングさんの自分自身への投資は「プロフェッショナル、パーソナル、ヘルス」の3つのカテゴリーがあるという説を紹介している。
プロフェッショナルへの投資とはキャリアへの投資つまり新しい技術や資格の習得に対する投資だ。
パーソナルへの投資とは老後を豊かに過ごすために新しい趣味を始めるなどといった個人生活を充実させるための投資と考えてよい。
ヘルスとは健康への投資で、スポーツジムに通う、卓球サークルに入って卓球を行うなどの運動への投資や定期的な歯のチェックアップなど予防的な医療費支出も投資に入れてよいと思う。
前述のリング教授は3つの投資つまりキャリアへの投資、趣味的なものへの投資、健康投資をバランス良く行い、燃え尽き症候群に陥らないようにすることが重要だと指摘している。
老後資金確保のための投資が地味で忍耐を伴う長期の投資であるように、自分への投資もまた長い道のりであると考える方が良いだろう。
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以上の話は働いている人を対象とした新聞記事なので、シニア向けにいくつか私の蛇足を付け加えようと思う。
まず大部分の人はビジネスから足を洗うのでキャリアへの投資はあまり考えなくて良いだろう。ただし既に獲得しているスキル(たとえばIT技術など)があれば、陳腐化を防ぐ程度の投資はしておいた方が良い。なぜならそれらのスキルはボランティア活動などで活かせるからだ。スキルがあると頼られることが増え、頼られることが増えると生きがいが生まれ、生きがいが生まれると健康にプラスだからだ。
次に投資~消費に終わる可能性はあるが~には旬(しゅん)があるということだ。元気な時でないと海外旅行に行くことはできないなどその時でないと使えないお金がある。もっと高齢になるとお金のかかる趣味に使う時間が減ってくるだろうから、それを見越して自分がしたいことができる時に思い切ってお金を使うというのも一つの方法だと私は考えている。
最後に「自分への投資もライフプランの一環として行うべきだ」ということだ。この点について拙著「マインドマップとエクセルでライフプランノートを作る~健康で充実した人生を送るために」(Kindle本)でも書いたが、「現状認識」と「自分のやりたいことの可視化」が重要だ。
著名な経営学者ピーター・ドラッカーは「未来を語る前に今の現実をしらなければならない、人間は現実からしかスタートできないのだから」と述べている。
自分への投資もまた自分の現実を見つめることからスタートすべきなのだ。そしてやりたいことをライフプランノートに書いて可視化することを次のステップにするべきだろう。