今エンリコ・モレッティの「年収は『住むところ』で決まる」という本(プレジデント社 読んでいるのはKindle版)を読んでいる。軽い表題の本だが、中身はしっかりした経済学の本なので、まだ読み終えていない。
この本を読み始めたきっかけは「東京どこに住む?」(速水 健朗著 朝日新書)に、モレッティの学説が紹介されていたからだ。ちなみに「東京・・」は気楽に読むことができる本なのですぐ読み終わった。
モレッティの主張は「昨今の経済論議の中では見落とされがちだが、一国の経済のある部分が経済的に苦しんでいるなかで、別の部分が繁栄を謳歌しているケースがある。とくに際立っているのは、一国内での地理的な格差が拡大してきていることだ」(日本語版への序章)だ。
この地域的な格差という事実を念頭に置かないと、東京都心部への人口集中・地方の衰退・空き家問題等を正確に分析することはできないだろう。
モレッティの研究は米国をベースにしたものだが、日本でもほぼ同じような現象が起きていると考えてよいだろう。
WSJにThe Divide between America's prospererous cities and struggling small towns「アメリカの繁栄する都市と苦しむ小さな町」という統計データをベースにした記事がでていた。これは地域格差を可視化したものである。
データの幾つかを紹介しよう。
現在約99.5百万人が住む大都市圏中心部では大不況の2007年以降人口は9.5%増加しているが、地方では人口は0.4%しか増加していない。
大都市圏中心部の家計収入の中央値は、68,240ドルだが地方では、43,505ドルである。
16歳以上の男子の労働参加率は、大都市圏中心部では65%だが、地方では56%である。
何故都市に住むと給料が良くなるのか?給料が良くなったから都市中心部に住むのではないのか?といった疑問が起きるだろう。
私もそれらの疑問を持ち上がら、「年収は住むところで決まる」を読んでいるが、都市特に都心部には情報が集まり、その情報に接しているだけで「頭が良くなり」「生産性が向上する」というのが、結論になりそうだ。
「田舎の三年 京の昼寝」という諺がある。田舎で本を読んで勉強するより、京の都に出て、昼寝でもしながら、色々なところに出歩いているだけで、知識が身に着くという意味だ。
昔の人も都市の持つ力を直観していたのだろうか?