金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

長期政権は堕落する~河井法相辞任

2019年10月31日 | ライフプランニングファイル

今朝(10月31日)のNHKニュース(ネット配信)によると河井法務大臣は「先の参院選挙で当選した妻の河井案里参議院議員の事務所が法律で定めらえた上限を上回る報酬を運動員に支払っていた」疑いが報じられたことを受けて安倍首相に辞任を提出した。

河井氏は9月の内閣改造で初入閣したばかりだが、法務行政への影響を避けるため辞任することを決めたらしい。菅原経済産業相に続く閣僚辞任は「長期政権は堕落する」という言葉を想起させる。

この格言の出どころはイギリスの歴史学者・政治家アクトン卿のPower tends to corrupt, and absolute power corrupts absolutelyでcorruptは腐敗と訳され「権力は腐敗する傾向がある。そして絶対的な権力は絶対的に腐敗する」という訳で親炙しているようだ。

私は腐敗よりはやや柔らかい?堕落という言葉を用いたが。

権力の頂点に立つ人間の能力や資質の如何にかかわらず、長期政権下の組織は堕落する。それは「人間の緊張は持続するものではない」という生物としての当たり前の原則に起因する。つまり緊張が持続しすぎるとストレスは、個体を痛め、病気や最悪の場合死に至らしめる。よって人は安定状態に入ると弛緩するように設計されているのである。

共和制を取っていた古代ローマでは、外敵の侵入等非常事態が発生した場合、一人の独裁官に大きな権限を与え事態に対処する仕組みを取っていた。ただし独裁官の任期は半年に限られていたが。

この制度を参考にしたのが米国の大統領制度で任期は2期8年に限られる。

安倍首相の在任期間は来月20日には過去最長の桂太郎と並んで2,886日になるらしい。2,886日は7年と11ケ月。

米国大統領の例を見てもこの辺りが権力の座の限界かもしれない。

なおウイキペディアによるとアクトン卿の言葉はGreat men are almost always bad menと続いている。

「偉い人はほとんど常に悪人である」という意味だが、こちらはそのまま受け止めて良いかどうかは分からない。

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パウエル議長の緩和スタンス維持発言でS&P500は新高値へ

2019年10月31日 | 投資

昨日(10月30日)米連邦公開市場員会FOMCは2日間の会合を終え、政策金利の0.25%引き下げを決定した。これでふぇどファンドレートの目標レンジは1.5~1.75%になった。

相場が注目していたのはパウエル議長の発言だった。連銀はこれまで過去3回のFOMC会合後の声明で使っていたact as appropriate(適切の行動する)という言葉を取り去り、The current stance of policy is likely to remain appropriate as long as the economy expands moderately and the labor market stays strong「経済が程よく拡大し、労働市場が強含んでいる限り、現在の(金利)政策は妥当性を維持している」と述べた。

これまでの声明にも今回の声明にもappropriateという言葉が使われているので、同じようなものではないか?と思うかもしれないが、過去3回のact as appropriateは政策金利の引き下げを示唆したと考えられるので、今回は削除したと解される。

つまり連銀は年内の更なる政策金利の引き下げ期待を冷やすとともに、将来景気や雇用市場が悪化した場合は金利引下げを考えると述べ、かつ引き続き緩和基調を持続すると表明した。

株式市場をこのスタンスを好感し、S&P500は新高値を更新した。日本株も小高く寄り付いている。

ただし明日の雇用統計待ちで大きな方向感はでないだろう。

昨日発表されたADP(民間給与計算会社)の10月の雇用増は125千人で事前予想の100千人を若干上回っている。ただし単月のADPデータは必ずしも、非農業部門雇用者数と連動するものではないので、まあ明日の数字は出たとこ勝負ということで・・・・

 

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次に米国株相場を牽引するのはどの銘柄?

2019年10月29日 | 投資

昨日(10月28日)の米国株は米中貿易摩擦の緩和期待や好調な企業決算に支えられ好調に推移。S&P500は引け値3,039.24と史上最高値を付けた。

だが記録は達成されると同時に既に過去のものになり、投資家の関心は既に次の相場を牽引する銘柄探しに移っている。

CNBCは、After new record, these are the stocks Wall Street thinks will lead the next market leg higher という記事で10銘柄をあげていた。アマゾン、ボーイング、ジョンソンエンドジョンソン、セールスフォース、ディズニー、フェイスブック、メルク、ネットフリックス、ユナイテッドヘルス、ペイパルである。

列挙された総ての銘柄をカタカナで書いたようにこれらの会社の名前は日本でも広く知られているし、その取扱商品・サービスを説明できる人も多いだろう。

今後1年後の予想株価上昇率をアナリストの株価予想平均に基づいて算出するとアマゾン24.8%、フェイスブック25.8%、セールスフォース24.1%、ジョンソンアンドジョンソン17.2%、ボーイング18.0%などとなっている。

アナリスト予想は2つのことを示唆している。一つはFANG銘柄が引き続き相場を牽引すると判断していることだ。昨日増益ながらクラウドサービスへの先行投資負担で減益になったアルファベット(グーグル親会社)は引け後に株価を下げたし、少し前に決算内容がアナリスト予想に届かなかったアマゾンの株価もパッとしなかった。だが四半期決算に一喜一憂はあってもハイテク株は高値を追うというのがアナリストの予想だ。

もう一つは業界のトップ銘柄が引き続き相場を牽引するという判断だ。ジョンソンアンドジョンソン、ボーイングなどはその代表例だ。

今私が維持し構築しようとしているポートフォリオは、国や地域を超えて業界のトップ企業にフォーカスするポートフォリオだ。つまり家庭用医療用品や医薬品であればジョンソンアンドジョンソンを、娯楽関係ならディズニーを、という具合にだ。

ただし業種ごとに好き嫌いがあるし、第一投資資金に限度があるので、全方位投資はできないが、投資をするなら業界トップを第一に検討したいと考えている。不透明感が高い時期だけに同じようなことを考える人が多いのではないだろうか?

 

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講演「女の一生と相続」を聴いて

2019年10月28日 | ライフプランニングファイル

先週日本相続学会の研究大会の基調講演「女の一生と相続」を聴いた。講師は横浜国立大学大学院教授の常岡史子先生。常岡教授は親族法・相続法の専門家で相続学会でもしばしば講演やパネルディスカッションに登壇されている。

この講演は明治民法下における妻の財産権(何と結婚すると妻は財産管理については準禁治産者並の扱いとなった)の問題から今回の民法改正で誕生した配偶者居住権の問題におよぶ興味深いもので、結婚後の妻の財産権の変遷について考えさせるものだった。

ところで相続学会のコアメンバーは弁護士や税理士などの実務家が多いので、あまり経済学的視点から議論をしたことはないが、私は「相続は生産手段維持最適化に従う」という仮説を持っている。経済学的視点から少しコメントしてみたい。

明治民法は嫡出長男の単独相続を前提としていたが、これは「コメ作りをベースにした生産体制下では遺産相続で農地が細分化されることを防ぐ」ことが生産性維持上最重要課題と認識されていたことを意味する。つまり生産性維持の命題により相続財産の相続人による均等分割という命題が抹殺された訳だ。

また昔のモンゴルでは末子相続がスタンダードだったという。これは末子が一番若く元気があるので、一族を率いて放牧を続け、時には外敵と戦う上で最適の選択だった訳だ。

長男の単独相続は一方で長男に一族の扶養義務を負わせた。従ってモデル的な家督相続では、配偶者居住権のような問題は発生しなかったと考えられる(典型的には生存配偶者=長男の母親であり、長男が母親と居住権を争うことはなかっただろう)。

時代は変わり、人々は農業から離れ、多くの人は給与労働者となることを選択した。高度成長時代は夫が働き妻は専業主婦というのが一般的なモデルだったが、最近では夫婦共稼ぎが一般的なモデルである。

「相続は生産手段維持最適化に従う」という観点から考えると、現在では共稼ぎの夫婦が一方の配偶者が亡くなっても、最後まで安心して暮らすことができることをサポートするような相続制度が望ましいということになる。

別に言い方をすると「夫婦が共稼ぎで築いた財産を子を含めて他の人に奪われる可能性がある」相続制度は時代のニーズに合っていないということができるかもしれない。

たとえば子供のいない夫婦のどちらかが死亡して、残った配偶者にすべての遺産を相続させるといった遺言書がない ない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人になり相続財産の一部を相続してしてしまう可能性がある。

また兄弟姉妹には遺留分がないので遺留分侵害の問題は起こらないが、生存配偶者と子が相続人になる場合は遺言書により生存配偶者が大部分の遺産を相続する場合には遺留分侵害の問題が発生する可能性が高い。

このような制度は過去の生産体制の残滓を引きずっているようなものだという気がするがいかがなものだろうか? 

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自己を習うというは自己を忘るるなり

2019年10月27日 | ライフプランニングファイル

毎月届くJR東日本の「大人の休日倶楽部」。その10月号に「北陸で禅をかじる」という特集があった。その最初の書き出しが「自己を習うというは自己を忘るるなり」-道元「正法眼蔵」だ。そして取材者は修験道場の空気にふれている内に聞きかじりの禅語が不意に心に落ちるような旅になるかもしれないと続けている。

特集が紹介している福井の永平寺や富山高岡市の瑞龍寺を訪問する予定はないが、ひさしぶりに正法眼蔵を開いて道元禅師のお言葉を聞いてみることにした。

禅師は「仏道をならふといふは、自己をならふ也。自己をならふといふは自己をわするるなり。自己をわするるといふは、万法に証せらるるなり。万法に証せらるるというは、自己の身心および他己の身心をして脱落せしむるなり」と述べておられる(正法眼蔵・現成公案)。

私はこの一文が曹洞宗の本質をついた言葉であり、お釈迦様が説いたオリジナル仏教の教えに近いと感じている。

正法眼蔵は難しい言葉が連なり、理解に苦しむことが多いが、この部分はほぼ意味がわかる。自己流の解釈を加えると次のようなことだろう。

「仏教を修め悟るとは自分を修め悟るということです。自分を修め悟るということは、いったん既成観念に凝り固まった自分を忘れるということです。固定観念を離れた時、すべてのことが教えてくれるところが分かってきます。だからすべてのことに教えられるとは自己も他己も身心脱落(自我意識を捨てる)ことなのです」

もっと現代風に解釈すると「自己学習の目的は既成概念や価値観を取っ払い、社会現象や自然現象に謙虚に向き合うことです。そうすると社会現象や自然現象の方からあなたに何かを語りかけてくるでしょう。そうするためには自我意識を捨てることが必要なのです」ということになるだろう。

自我意識を捨てると上から目線でなく相手をありのままに見ることができるようになる。それが「自己の身心および他己の身心をして脱落せしむるなり」の意味するところではないか?と私は解釈している。

 

 

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