金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

買収は欧米のみならず中国からも来る

2010年04月30日 | 社会・経済

今秋のエコノミスト誌に「中国企業の日本企業買収が増えている」という主旨の記事が出ていた。題名はScaring the salarymen「日本のサラリーマンを怯えさせる」という意味だ。

Salaryman(men)というのは、Japanese white-collar businessmanを意味する和製英語だったが、注釈もなく使われているということは「日本のサラリーマン」を指す固有名詞として定着したということだろう。ただしこの言葉はwage slaveryのようなマイナスのニュアンスがあるので、自己紹介をする時は「私はサラリーマンです」と言わない方が良いかもしれない。

さて本題に戻ると記事は3月に金型大手のオギハラを中国の自動車メーカーBYD(比亜迪汽車)が買収したことから始まる。記事は微妙なことがらなのでオギハラはディールをおおやけにしていないし、新聞発表もしていないと述べる。もっともオギワラのHPにはディールの記載はないが、新聞等には流れた話なので私も見たことがある。http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P20100327000065&genre=B1&area=Z10

中国企業に買収されるということは、日中両国間の不安定な関係を考えると神経質にならざるを得ない話だが、記事が参照している日本のM&Aブティック・レコフのデータによると、中国企業による買収は急激に増えている。2008年の買収件数は13件だったが、09年には20件に増えている。また2010年は1月から3月の3ヶ月間で30件を越えている。ディール金額も08年は43億円だったが、2010年の3ヶ月で195億円に急増している。

ただ中国企業が買収しているのは、特殊な技術を持った小さな会社の持分の一部とかその子会社というケースが多いので、ディール1件当たりの金額は小さい。

記事は中国企業が51%の持分を買収したラオックスの話も紹介している。買収後のラオックスに中国人観光客が大挙して訪れているシーンはテレビにも流れていた。

中国のオーナーと日本の社員の意見は環境問題や品質管理を巡って衝突することが多いと記事は述べている。そしてそれにも関わらず中国企業による買収は広がると投資家達は想像している。中国企業は日本企業のテクノロジー、スキル、ブランドを欲しているからだ。彼等はそれを中国に持ち帰ったり、他の国で利用することを考えている。

少し前まで日本企業は欧米からの買収に注意していれば良かったが、これからは中国企業による買収にも気をつけないといけないということだ。

しかしものは考えようで、中国企業に買収されることで、活路が開けると考えることもできる。例えばラオックスの買収前の株価は10円だったが、今は110円近辺で取引されている。ラオックスは向こう3年間で中国に110店を出すという話だ。

少子高齢化でパイが拡大しない日本の中で過当競争を繰り返し疲弊するよりは、中国パワーを利用するというアイディアもありうるだろう。もっともこんなことを書くと「あんたは買収される当事者でないからそんな呑気なことが言えるのだ」とお叱りを受けるかもしれないが。

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韋駄天レディに元気を貰った

2010年04月30日 | うんちく・小ネタ

今週の初め、久し振りにマラソン・山好きのSさんと新宿三井クラブに飲みに行った。Sさんはフルマラソンを3時間程度で走るし、富士山山頂まで走る耐久マラソンにも出ている。山は日本百名山の内80座近く登っているというスポーツウーマンだ。スキーも上手で数年前八方尾根を一緒に滑った時はこちらがあごが上がりそうになった。

正確なお年は聞いたことないがが、ご両親の年齢が67,8歳なのでいわゆるアラフォーではないかと思っている。最初はエントリーのタイトルを「韋駄天娘」としていたが、年齢の幅が広いレディに替えた。

こういう元気な女性と話をしていると、「そうだ、俺ももっと走ろう。もっと山に登ろう」という気持ちになってくる。つまり元気を貰えるのだ。去年Sさんは僕等の山の会に参加し一緒に北岳登山に向かったが雨のため途中で引き返した。今年もう一度挑戦しましょうということになっている。

もう一つ貰った元気はSさんが去年結婚したこと。ご主人はランニング好きの方とか。お付き合いを始めて1年弱のスピード結婚だ。僕が「内に娘が二人いるんだけど中々結婚しなくてねぇ」というとSさんは全然心配ありませんよと笑い飛ばした。

これが貰った二番目の元気。

☆   ☆   ☆

人に夢や元気を与える生き方をしたいと思う時がある。

沢木耕太郎の「馬車は走る」というエッセイ集の中の「オケラのカーニバル」の中に次のような話がでている。

それはイギリスの中高年のヨットマンの話だ。

「第一回の大西洋シングルハンド・レースの優勝者であるフランシス・チチェスターは、1966年、イギリスのプリマスを出航した。『ジプシー・モスⅣ』に乗り、一人で世界一周をするためだった。その時、チチェスターは65歳になろうとしていた。1967年、再びプリマスに『ジプシーⅣ』が姿を現すや、ロンドン市民は熱狂してこれを迎え、エリザベス女王はチチェスターをナイトに叙した。そして、その熱狂の理由は、老チチェスターが彼自身の夢を生きたばかりでなく、『墓場への長く空しい旅』を続けている人々の夢をも生きてくれたからだ、とアンダステンはいう。」

小さくてもよいから、周りの人に元気や夢を与える生き方をしたいと思う。韋駄天レディにはそういうところがある。

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ギリシアの問題は欧州の金融機関の問題に発展

2010年04月29日 | 金融

ギリシアに端を発する国債危機は4月28日スペインに飛び火した。S&Pがスペイン国債をAA+からAAにダウングレードした。FTによるとOECDのチーフはこの国債危機の感染状況を「エボラ熱」の伝染に例えている。

スペインでは国債利回りが4.127%に上昇。株価は3%下落した。ギリシアは向こう3年間で1000億ユーロから1200億ユーロの資金が必要とされると推定される。現在提案されている450億ユーロのファイナンスでは、1年分の不足資金をカバーするに過ぎない。

ところでニューヨーク・タイムズはAlready holding Junk, Germany hesitatesという記事で、ドイツの金融機関は既にギリシア国債を十分持っているので、格付低下に悩んでいるという事実を明らかにしていた。銀行のギリシア国債保有額を推定したのはバークレイズ・キャピタルで、ドイツの金融機関は既に370億ドルのギリシア国債を保有している。中でも多額に保有しているのはHypo Real Estate Holdingで105億ドルのギリシア国債を保有している。このHypoは昨年ドイツ政府が救済した金融機関だ。つまり税金が投入されている訳だ。ギリシアの格付が下がり、政府支援を行っているドイツの銀行のバランスシートが劣化すると、最終的にはドイツ国民の負担が増えることになる。

スペインの大手行は今のところ最悪の金融危機から逃れているが、もしポルトガルの国債がギリシア国債のように価格が下がると大きな含み損を被る可能性がある。タイムズはマドリッドを本拠とするSantander銀行は640億ドル相当のポルトガルの資産を持っていると報じている。

欧州各国国債の格付悪化と債券利回りの上昇(価格の下落)は、国債を大量に保有する金融機関のバランスシートに大きなインパクトを与える可能性がある。そしてそれは金融危機時に公的資金を投入された銀行のバランスシートが悪化する場合、最終的には各国の国民の負担が増えることになる。

水曜日には米国連銀の公開市場委員会が「景気が回復する中でも低金利持続する」と発表したので、世界の株価は少し戻した。

このところ四谷怪談の戸板返しのように、ギリシアなど南欧諸国の国債の信用問題で市況が悪化する日と米国の企業業績や金融政策を好感して市況が好転する日が目まぐるしく変わる。

連休明けの戸板はどうなっているのだろうか?

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「ポルトガルはギリシアと違う」という主張も半ば届かず

2010年04月28日 | 国際・政治

4月27日S&Pはギリシアの格付を3段階(BBB+→BB+)、ポルトガルの格付を2段階(A+→A-)引き下げた。欧州の信用不安再燃で、欧州・米国の株安に続いてTOPIXも287円87銭安と今年2番目の下げ幅となった。

先週(22日)のエコノミスト誌はThe importance of not being Greeceというタイトルで、ポルトガル政府は「自分達はギリシアとは違う」と主張していると記事を書いていた。

記事によるとポルトガルの財政赤字はGDPの9.4%(ギリシアは12.7%)、公的債務残高はGDPの85%(ギリシアは124%)だ。また同国の政府会計はギリシアと違い信頼がおける。また必要に応じて厳しい緊縮財政を取り、財政赤字を削減してきた実績もある。中道左派のホセ・ソクラテス政権は改革のパイオニアであり、定年年齢の引き上げを実施している。

それにも関わらずどうして市場はポルトガル国債に高いプレミアム(2年債の利回りは4.8%)を要求するのか?とエコノミスト誌は疑問を投げる。

そして同誌はその一つの答は「ポルトガルの最大の問題は財政問題ではなく、成長性の欠如だ」と述べている。ユーロに加盟して以来ポルトガルの実質GDP成長率はユーロで一番低い。

ポルトガルは低付加価値商品の輸出国だが、労働コストが持続的に上昇し、生産性の伸びを上回ったため、東欧圏に輸出シェアを奪われている。ポルトガルはかって貯蓄熱心な国だったが、今では海外債務に依存するようになっている。

動きの遅い官僚機構、非効率な裁判システム、貧弱な学校教育、規制による競争の欠如、厳格な労働法(欧州で最も労働者保護の強い国)、政治家の改革意識の欠如・・・・・

これらがポルトガルの低成長と競争力劣化の原因である。エコノミスト誌は「ポルトガルは確かにギリシアと違うが市場がこれらの点を注目すると同国の土台を揺さぶる」と警告を発していた。

☆   ☆   ☆

ハイテク分野で競争力を持つ日本をポルトガルと単純に重ね合わせることはできないが、幾つかの点で日本も同様の弱みを持つ。

かなり遠い将来の懸念だが・・・・現在のような混迷が続くと、日本がギリシア並みの債務とポルトガル並みの低成長に喘ぐと言われる日が来る可能性なしとはしないと私は危惧している。

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検察審査会、「小沢氏起訴相当」判断は健全な市民感覚

2010年04月28日 | 政治

今日(4月28日)の新聞一面は「検察審査会、小沢一郎氏は起訴相当と判断」という記事が埋めていた。かって小沢氏については「理念・政策の人」という神話があったが、多くの市民が結局彼は選挙に勝つことにだけに固執しているということに気がつき始めたということだろう。

小沢氏の政治姿勢については文芸春秋五月号に次のような記事が出ている。お読みの方も多いと思うが、思い出したのでご紹介しておこう。

「小沢氏は自民党幹事長だった平成二年の衆院選の際には、中央・地方の財界・企業経営者から計三百億円もの献金を選挙資金としてかき集めた。その時の殺し文句が『自民党が負けて、日本が社会主義の国になってもよろしいか』・・・・野党議員となって財界と疎遠になった後、皮肉にも(小沢氏が)目をつけたのが労組、なかんずく官公労であり、社会主義に理想を求める政治家や国民だったというわけだ。小沢氏が世間で誤解されているような保守政治家でも、「理念・政策の人」でもないkとがよく分かる」(「政権交代は『労組の天下盗り」だった」阿比留瑠比 より)

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