先週の米国株は高値で引けて7週間連続の株安にちょっと歯止めがかかった格好だ。だがインフレ、ロシアのウクライナ侵攻、中国のロックダウンなどコロナの影響によるサプライチェーンの混乱や景気減速懸念など悪材料はまだ山積みの状態だ。年初来の100日間のS&P500は1970年以降で最悪だというからまさに半世紀ぶりの大変な相場である。
WSJはWhat stock investors are watching for: Signs of stabilityという記事で今投資家が相場の安定つまり底入れのために注目している指標を列挙していた。
その幾つかを紹介したい。
1つは恐怖指数と呼ばれるVIXボラティリティインデックスだ。5月26日時点のVIX指数は27.29、かなり高いがパンデミックの最中2020年3月31日の53.54やリーマンショック時の59.89(2008年10月31日)に較べるとはるかに低い水準だ。記事によるとLaffer Tengler Investmentsのチーフインベストメントオフィサーは「VIX指数は顕著な下落相場に較べて急上昇していない」と述べている。
もう1つの指標はプット・コールレシオだ。これはプットオプションの建玉残高をコールオプションの建玉残高で割った指数で、強気相場ではコールオプションが増加するので低下し、弱気相場ではプットオプションが増加するので上昇する。プット・コールレシオは直近では1程度に低下しているが、4月末頃は1.3を超えていた。しかし2020年3月につけた1.8に較べるとまだ低い水準である。
またS&P500の構成銘柄の内何パーセントの株式が200日移動平均株価より高い値段で取引されているかを注目する投資家もいる。現在3割の株式がまだ200日移動平均線より上の価格で取引されている。移動平均株価は投資家の平均的な株式取得価格と見ることができる。移動平均株価以下で取引される株式が増えると投資家は悲観的になるが、3割というレベルは過去の弱気相場に較べるとまだ高い水準にある。
さてこれらの指標をどう判断すれば良いのだろうか?
これらの指標はこの下落相場は過去の下落相場に較べるとそれ程ひどいものではなく、まだ下落の余地があると解釈することもできるし、幾つかの指標は相場の底が近いことを示唆しているとも解釈することができる。
WSJはThe turmoil in U.S. stocks has nervous investors parsing the market's internal gauges for signs of relief.と述べていた。Perseというのは解剖するとか文法的関係を説明するという動詞だが私が若いころは相場記事であまり目にした記憶がない。もしこの記憶が正しいとすれば、現在の相場分析は昔よりも複雑な要素が絡み合い困難になっているのかもしれない。何せ半世紀ぶりの年初来の株価低迷だから。