金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

相続学会、7月のセミナー内容が固まりました

2015年05月18日 | 学問

一般社団法人 日本相続学会は7月9日(木曜日)に、お茶の水駅に近い中央大学駿河台記念館にて、午後5時~8時で「家族信託」に関するオープンセミナーを開催します。

家族信託は長寿化の時代の財産管理の一つの切り札です。その家族信託について、専門家による講演とパネルディスカッションを

行います。

ご関心のある方はHPをご覧ください。

一般社団法人 日本相続学会

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動物に「相続」はあるのだろうか?

2014年08月03日 | 学問

私が事務局長を務めている日本相続学会の秋の研究大会のメインスピーカーを霊長類学者の方にお願いすることにした。するとあるメンバーの方から「お猿さんに相続ってあるのでしょうか?」という質問がきた。

無論「法律論的」には動物に相続はない。いくら可愛がっていたペットといえども、遺言で財産を残してあげることはできない。日本の法律では相続できるのは自然人か法人に限られているからだ。ペットはものに過ぎないから相続「人」になることはできない。

だが「法律論」を離れて、人も動物も「個体は遺伝子の乗り物に過ぎない」という現代動物学的な観点から見れば、人も動物も「あるものを子孫に伝えていく」ので、それを相続と呼ぶならば、動物にも相続はあると私は考えている。

その「あるもの」とは、エサを獲ることを含めた生きる知恵や技術とテリトリーつまり縄張りである。カバは子どもに泳ぎ方を教え、象は乾期の間の水場のあり場所を次世代の象たちに伝え、それによって子どもたちは命をつないでいくことができる。

これは学会の見解ではなく、私の個人的な直観に過ぎないのだが、人類の相続も古い時代は生産活動に必要な知恵やノウハウを生産基盤を劣化させることなく、子孫に伝えていく行為が相続だったのではないか?と私は考えている。

今ではあまり使われないが「たわけもの」という言葉がある。馬鹿者という意味だが、その語源については「相続時に田を子どもの間で分けると生産力が落ちて家が没落するので、田を分けるものは馬鹿者だ」という説がある(違う説もある)。つまり第二次大戦前までは、「生産基盤を効率良く子孫に伝える」ことが相続だったと考えられる。そして家を継いだ長男は両親の老後の世話をしたからそれはそれで一つの完結した生産と命のサイクルだったと思われる。

これに対して現在の日本の民法は均等相続が原則だ。親や先祖が残した生産財の規模が縮小して効率が落ちることよりも、相続人間の平等を重視したのだ。土地価格の持続的な上昇や慢性的な住宅不足の経験は、特に財産を残す高齢者層の不動産へのこだわりを強くしている。

だが私はここにきて、再度動物学的な観点から広義の「相続」を考えてみる必要があると考え始めている。その大きな理由は、日本の不動産価値の長期的な下落見込みと先進国の低金利の持続とグローバルな雇用競争の拡大にあると考えている。

不動産特に居住用不動産に不足感があった時代は不動産は相続財産として重宝がられた。だが今や日本全体では750万軒の空き家があり、更に将来は1,500万軒まで拡大するという予想もあるように、全国的に見れば居住用不動産は供給過剰である。つまり賃貸物件などを相続しても、固定資産税に泣かされるだけという時代が迫っている。

次に日本をはじめ先進国の低金利は相当持続すると判断する。つまり利子収入をあてにできる時代は中々やってこないのである。

一方雇用を考えるとアジア諸国から高い学力と国際的なビジネスを行うチャレンジ精神にあふれた若者が日本企業の門戸を叩くことが益々続くだろう。

以上のような環境条件を考えると「自分が先祖から受け継いできた遺伝子を子どもに伝えるベストの方法は、不動産や金融資産を多く残すことではなく、子どもに出来る限りの教育を与え、国際的なビジネスを行うための経験を積ませる」ことが、この時代における最適な相続戦略になると私は考えている。

法律が定める相続は「財産に属した権利義務」でそれは被相続人が死亡した時に発生する。動物は傍から見ると財産を持っていないように見えるかもしれないが、私は違うのではないか?と考えている。たとえばある森はある猿の群れが「エサを獲る権利」を持った森であり、その権利は子どもたちに承継されていくのではないだろうか?だが何らかの理由でその森で木の実が獲れなくなれば、猿たちは新しい森を探してそこを去るはずだ。

日本の不動産や金融資産は昔は美味しい実のなる森だったが、今は痩せ衰えて余り美味しい実は獲れないかもしれない。

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