米国のシティGが政府の子会社になったというニュースが少し前に流れていた。脆弱な銀行を一時的に国有化するべきかどうかについては前から議論があったが、今週に入って「国有化やむなし」という意見が大勢を占めてきた。グリーンスパン氏も国有化を支持しているし、今週のエコノミスト誌も「国有化にはリスクがあるが、それでも最善の方法だろう」と強く国有化を主張している。
このような中、米銀に対するストレス・テストが始まる。エコノミスト誌によると、今市場が注目しているのは、Equity Tier 1(普通株主自己資本比率)で、ストレス・テストはこれに焦点をあてるのではないか?と予想している。「エクイティ ティア ワン」とは聞きなれない言葉だが、銀行の中核自己資本から優先株を差し引いた普通株主自己資本をベースに算定した自己資本比率のことで、来週あたりから日本でも有名になるかもしれない。
何故エクイティ・ティア・ワンが注目されているかというと、この比率の低い銀行の株価が低迷するとともに、クレジット・スプレッドが急拡大しているからだ。米銀大手のTier 1比率は注目されているシティグループやバンカメを含めて10%を超えている(唯一の例外はウエルス・ファーゴ)。だがエクイティ・ティア・ワンについて見ると一番充実しているのはゴールドマン・ザックスで10%を超え、次にほぼ10%でモルガン・スタンレーが続いている。下位はUS Bankcorp、シティ、バンカメなどで5%を切っている。エコノミスト誌は堅固なバランスシートを持っていると推測されるJPモルガンや最も安全と思われる欧州の銀行を参考に必要なエクイティ・ティア・ワン比率水準を決めるのではないか?と推定している。JPモルガンのそれは6.4%である。
普通株主自己資本比率が重視される理由は「普通株」が「優先株」よりも、より良いクッションになるからだ。エコノミスト誌は「普通株では配当を止めて、止めっぱなしにできるが、優先株では配当を一時的に遅らせることはできるが、中止することはできない」という例で、普通株のクッション性を説明している。
このエクイティ・ティア・ワンの話、不良債権の償却等が大きくなってくると、邦銀の健全性測定の上でも話題になるかもしれない。
シティGの場合、政府が既に投入している優先株を普通株式に転換することで、エクイティ・ティア・ワンのハードルをクリアする見込みだ。エコノミスト誌は先程の基準を当てはめると米銀大手で1070億ドルの普通株式が必要で、政府は既に1300億ドルの優先株を出資しているので、これを転換するのだろうと報じている。
銀行の国有化は、スタート点でゴールではない。これからやるべきことは多い。だが方向感がでたことは歓迎するべきだ。