ニューヨーク・タイムズに中国環境計画アカデミー(環境局の一部門)が2010年の環境劣化environmental degradationコストはGDPの3.5%約2,300億ドル(1.54兆人民元、約21兆8千億円)だったと発表したと報じていた。ただしこのコスト計算については低すぎるという意見もあると同紙は述べる。IHSグローバル・インサイトのチャイナエコノミストは調査官は完全なデータを持っていないので、2,300億ドルというコスト見積は不完全でもっと大きい可能性があると指摘している。
不完全というと中国の場合、GDPそのものの数字が不完全だ。まずGDPの計算そのものに十分な信頼がおけない。東京ベースのオンラインマガジンThe diplomat http://thediplomat.com/china-power/the-curious-case-of-chinas-gd-figures/は、2012年のGDPについて国家統計局が発表した数字と、各省が発表するGDPの合計の数字では、5.7兆元(約85兆円)も各省合計が大きかったと指摘している。またロイターも新しく首相になった李克強氏が2007年に中国のGDPは人工的で信頼出来ないと述べたとwikileaksがリリースしたと報じている。真偽を見定める情報もないし、その気もないので、この話は深追いしないが、各省レベルの高官が、経済パフォーマンス次第で昇進するので、GDPを過大に見せる強いインセンティブを持つという説明は中々説得力がある。
一方他国との比較では、人民元は実力が過小評価されているので、中国のGDPは市場レートではなく、購買力平価ベース(PPP)で判断する必要があると言われている。2011年のGDPは47兆2880億人民元で現在の為替レートで換算して約7.6兆ドルだが、CIAはPPPベースで中国の2012年のGDPを12.3兆ドルと推計している。
ちなみにCIAデータによるとGDP1位はユーロ圏で15.7兆ドル、2位アメリカ15.6兆ドル、3位中国12.3兆ドル、4位はぐっと差が開いてインド4.7兆ドル、日本は5位で4.6兆ドルだ。
もし環境劣化コストも購買力平価ベースで引き直すすればと、4,300億ドル(40兆円強)と巨額なものになる。GDPは過大に報告され、環境劣化コストは過少に報告される傾向があるので、全貌は見えないが、中国の環境リスクはかなりやばいレベルに達しているのだろう。