読者のHikoさんから「日本人総意として日本の政治に何を望むのか?その方向性は見えないけれどGW中に考えたい」というコメントを頂きました。
私も方向性がはっきり見えている訳ではありませんが、たまたまギャラップの「生活満足度調査」を見たものですから、そこから少し考えるところを述べたいと思います。http://www.gallup.com/poll/147167/High-Wellbeing-Eludes-Masses-Countries-Worldwide.aspx?version=print
「生活満足度」はwellbeingを訳したのですが、ギャラップの調査は次のように行なわれました。それはキャントリル・セルフ・アンカリング尺度と言われるもので、調査対象者に「0から10までの10段階のハシゴをイメージしてください。起こりうる最良の生活に10点、最悪の生活を0点とする場合、『今あなたはどの段階にいると感じますか』『5年後にどの段階にいると思いますか』」と質問します。
そして「現時点について7以上」「5年後について8以上」の点数をつけた人を「好調」thriving、「現時点と5年後について4以下」の点数をつけた人を「苦しんでいる」sufferingと分類し、その中間を「ほどほどに満足ないしは満足度が安定しない状態」strugllingと分類します。「苦しんでいる」状態とは、しばしば食や住まいが不十分であったり、肉体的な苦痛を伴っています。平たくいうと「不幸な状態」です。
昨年菅直人さんが首相になった時「最小不幸社会」というスローガンを掲げました。彼がギャラップの調査を知っていたかどうかしりませんが、ギャラップの言葉を使うと「苦しんでいる人」sufferingを最小化することが一つの政治目的だったということができます。
ところで昨年のギャラップ調査によると、日本人(1千名を対象に固定電話で調査)で生活状態が「好調」という人は19%、「ほどほど」という人は69%、「苦しんでいる」という人は12%でした。先日発表された今年の調査結果では「好調」26%「そこそこ」63%「苦しい」12%でしたから、6%の人が「そこそこ」から「好調」に好転した訳です。
ところでこの生活満足度を世界各国と較べてみましょう。
生活満足度が世界で高い国はデンマーク、スェーデン、カナダ、オーストラリア、フィンランドなど北欧、オセアニア圏を中心とした欧米諸国です。例えばデンマークでは「好調」72%、「そこそこ」27%で「苦しい」人は1%に過ぎません。
「苦しい」人が5%以下の国は30カ国程度あります。その中にはブラジルやメキシコのように一人当たりGDPが日本より低い国もかなりあります。
一人当たりGDPとギャラップ「生活満足度」の関係をざっと見ると(統計処理をした訳ではない)と、かなり高い相関関係がありそうですが、日本はその回帰曲線からかないずれていると思われます。
購買力平価ベースでみた日本の一人当たりGDPは世界38番目で、直ぐ下の39番目にフランス、二つ上の26番目に英国、その少し上の31番目にドイツがいます。これらの国の生活満足度はフランスが「好調」42%「そこそこ」54%「苦しい」4%、英国が「好調」54%「そこそこ」42%「苦しい」4%、ドイツが「好調」44%「そこそこ」51%「苦しい」4%です。
この数字を見ると日本との生活満足度の違いに唖然としてしまいます。
ギャラップは日本の生活満足度が低い理由について説明はしていません。従って以下のことは私の仮説です。
(1)デフレ、高齢化の進む日本では5年後の見通しが低い
(2)精神的文化的伝統として中庸を好むので、他国と比較して相応の収入があっても「好調」を選ばず「そこそこ」を選択する。生活に満足することを良しとしない伝統がある
(3)最低賃金が他の先進国に較べて低く本当に「苦しい」人が多い
(4)職業等のモビリティが低く、閉塞感が高い
政治が目指すことは「国民の生活満足度を向上させる」ことです。ただしそれは政治だけではできないと思います。また「どうすれば満足度が高まるのか?」という議論もしなければなりません。
政治に何を望むのか?という問題は、我々がこの国をどのような国にしたいのか?ということの投影なのでしょう。あるべき国の姿・社会の姿を考えてこなかった我々自身に問題があるのかもしれません。