金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

分別ある意見は臆病と間違えられる

2019年08月31日 | うんちく・小ネタ

最近は異常気象と呼ばれる現象が多いですね。一回の降水量が数百ミリという数十年に一度の雨がしばしば降ります(しばしばが数十年に一度起こることは矛盾していますが)。

気象も異常だけれど、世界各国の政治情勢も不安定で、各地でデモや紛争のリスクが高まっていて一種の異常状態です。その原因は様々なのですが、一つは欧米で大衆受けする極端な政策を標榜する政治家が目立ってきたことです。いわゆるポピュリズムの蔓延です。

現在のところ日本ではそれほどポピュリズムの影響はありません。その理由を詳しく研究した訳ではありませんが、可能性としては「現在の日本には一般有権者を熱くするような政治的トッピク(移民問題等)がない」ということが挙げられると思います。

選挙は候補者間の戦いであり、外交は国と国との間の血を流さない戦争です。戦時の雰囲気の中ですと威勢の良い意見は評判が良くなり、分別ある意見は大概臆病と間違えられて評判が悪くなります。選挙戦が接戦の場合、論戦に力が入り、レトリックとして威勢の良い意見を述べることが多くなると思います。威勢の良い意見は極論のことが多く実現可能性にはクエスチョンマークがつくことも多いのですが、とにかく受ける訳です。

武田信玄の遺訓に次のような言葉があるそうです。

1.分別ある者を悪人と見ること

1.遠慮ある者を臆病と見ること

1.軽躁なる者を勇剛と見ること

これは主将が陥りやすい三大失観である。

サラリーマン生活の中でも後先考えずに威勢の良いことを言っていた人間が上司の受けが良く出世するなんてことはありましたね。分別や遠慮のある者は臆病と見られ、エクストリームな意見を吐く者が勇者と見られ人気が高くなる。

これがポピュリズムであり、ポピュリズムが世界各地で政治と外交の振幅を大きくしているのです。

 

 

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韓国、「財政悪化」も日本のせい?

2019年08月29日 | ニュース

昨日(8月28日)韓国は来年度政府支出を9.3%増加させ4,234憶ドル相当に拡大すると発表した。この結果GDPに対する政府負債比率は今年の37.1%から39.8%に拡大する見込みだが、経済成長鈍化対策として韓国政府は積極財政策を採用することにした。

経済成長鈍化要因としては、米中貿易摩擦による世界的な景気減速が一番大きいが日韓の貿易論争もマイナス要因の一つではある。ただし政府は何が主な要因なのかを冷静に評価する義務があるだろう。

WSJによると韓国の企画財政部は「幾つかのキーとなるハイテク部品や設備に関する日本の輸出制限に対応するため、韓国政府は地場産業を支えるため財政支出を大幅に拡大するだろう」と述べている。

何事にせよ、外部にモノゴトの責任を押し付けるのが、韓国政府の癖だとは思うが、財政支出拡大→財政悪化の責任まで日本政府に押し付けようとする物言いである。

WSJはThe outlook for South Korea's is gloomy.Exports fell for an eight straight month in July.と述べている。

「韓国の見通しは暗い。輸出は7月時点で8カ月連続で減少した。」ということだ。

日本がフッ化水素等の対韓国輸出を厳格化したのは7月から。つまり日本の輸出厳格化の前から韓国経済は減速していたのだが、あたかも日本が経済成長を鈍化させたという物言いである。このような物言いを続けると国民の対日感情を悪化させ、妥協点を見出すのが益々難しくなるのではないだろうか?

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米中貿易抗争、中国は長期戦の構え

2019年08月29日 | 投資

昨日(8月28日)の米国株は、経済統計の発表や米中貿易問題の目立った進展がなかったが、ダウは258ポイント(1%)上昇した。ヒューレットパッカードなどの好決算が薄商いの相場を牽引した。

米中貿易問題の目立った進展がなかったと書いたが、ひょっとすると相場は少し米中貿易問題の進展に一喜一憂するのに疲れてきたのかもしれない。特に交渉の当事者の少なくとも一方が早期解決を望んでいないとすれば、交渉が長期化するのは必至であり、細かい動きはそれほど意味を持たないからだ。

私はかなり前から「中国はトランプ大統領との取引を避けて2020年の大統領選挙後の交渉を期待している」と判断していたが、中国指導部はもっと長いスパンで交渉問題をとらえている可能性があることも視野に入れるべきだと思うようになった。

CNBCにChina's playing the long game, and is making key moves to hedge against Trump's tariffsという記事が出ていた。

ポイントは中国は1980年代の日米貿易摩擦の経験(貿易摩擦は10年以上続いた)などを踏まえ長期戦の準備を進めている(ドイチェ銀行のエコノミストの意見)。具体的には米国への依存度を低下させ、タイ、日本、韓国、南米諸国との貿易拡大を図り、商業道路のインフラ改善、コンビニエンスストア網の拡充など国内市場基盤強化に努めている。

また米国の関税引き上げ圧力に対し、小さな範囲で目標を絞った報復措置を行う作戦を取っている。これは中国の目標が相手のダメージの極大化を目指すのではなく、相手(米国)が関税競争を続けるインセンティブを失わせることにあると考えれられるからだ。

私はこの分析は中々説得力があると考えている。中国は現時点で強烈な反攻を行わず、交渉再開にも意欲を示しながら、一方長期戦に備え、米国依存度を低下させる戦略を取るという分析。無論中国が有利と判断する条件を引き出すことができるなら、早期を手打ちもありだが、中国側から取引は急がないという姿勢だろう。

中国のアキレス腱は経済成長鈍化が引き起こす民間・地方政府の債務増加問題やインフラ整備が後回しになることだが、そこは一党独裁の強みで逆風を乗り越えられると判断しているのだろう。

長征など長い戦いに慣れている国だけに、貿易戦争の長期化も左程気にならないのかもしれない。

 

 

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貿易戦争どこ吹く風、コストコ上海に買い物客殺到

2019年08月28日 | 投資

米中貿易摩擦が高まる中、昨日米国のコストコが中国に初めて出店した。場所は上海。

店には買い物客が殺到し、コストコは午後1時には来店客を締め切らざるを得ない状況になった。

中国では外資の大型店の開店時に客が殺到することはしばしば起きることで、2007年にカールフルが上海に出店した時は3人の死者が出ている。

米中貿易摩擦の緊張が高まる中、上海の米国商工会議所は日曜日の夜、米国政府の米中貿易のリバランスを図るという政策を支持すると声明を発表した。

なおトランプ大統領は中国に拠点を持つ米国企業に拠点見直しを求める見解を発表したが、同商工会議所は「中国から退去する米国企業を見たことがない」と述べていた(WSJによる)。

古い言葉でいうと政冷経熱である。まあ、それ位が良いと思う。

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米中貿易問題、決着は来年10月?~CSISの予想から

2019年08月26日 | 投資

交渉の行方が見えなくなっている米中貿易問題についてCSIS戦略国際問題研究所のウイリアム・ラインシュ氏が、興味深い意見を述べていた。

ラインシュ氏は「トランプ大統領が2020年11月行われる大統領選挙で勝つためには、選挙前に貿易問題で中国と合意に達する必要がある。ただしここ数カ月間の間に合意に達すると大統領選挙前に米国民が米中貿易協定が米国にとって良いかどうかを詳細に検討する時間を与える。それは選挙戦術上得策ではない。大統領選挙前に協定の中身の良し悪しを検討する時間を与えない方が良いだろう。だとすると決着時期は選挙直前の10月位かな?」と述べていた。

なおラインシュ氏は米中双方とも、自ら交渉を壊したと思われたくないので、押したり引いたりしながら交渉は続いていくだろうと述べていた。

米中貿易交渉の着地点を大統領選挙戦術のみから探るのは単純化し過ぎているような気がするが、ボトムラインとして「遅くとも来年10月頃までにはディールはまとまる」と考える一つの根拠にはなる話だ。

一方貿易交渉の長期化が世界経済の減速を鮮明化させ、その影響が米国に及び米国で景気減速が鮮明化する可能性がある。株価を人気のバロメーターと考えているトランプ大統領としてはそれも避けたいところだ。

ただし株価の上昇も上昇時期が選挙時点から離れすぎているとインパクトが弱い。投票者が大統領の力量を強く感じるには、いつ頃ラリーが起きるのが良いか?などということも選挙参謀連中は考えているかもしれない。これは根拠のない個人的かんぐりに過ぎないが。

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