トランプ大統領の就任以来の行動を見ていると、大統領令を頻繁に発出し、かなり独裁者的に振る舞ってきたと私は感じていた。
ここ数日政策金利を引き下げないパウエル連銀議長に対し、ソーシャルメディアに「パウエル議長の解任が早く来て欲しい」と書き込むなど言いたい放題だな、と呆れていた。
そのトランプだが昨日は「金利引き下げにもう少し積極的になって欲しいが、パウエル議長を解任する予定はない」と大統領執務室で発言し、さらに中国に対する関税を引き下げる可能性を示唆した。
市場はこの動きを好感し、ダウ、S&P500,ナスダックとも2.5%を超える上昇となり、ドル円為替も142円台半ばまで戻してきた。
しかしこれで市場が落ち着くと考える人は多くないと私は思う。
理由はトランプ大統領が発言を頻繁に翻すからだ。
中国に「綸言汗の如し」という古い諺がある。綸言というのは皇帝の言葉で、皇帝の言葉は一度発せられるとかいてしまった汗のように戻すことはできないという意味だ。
国家の支配者の発言は神聖で絶対無謬性を有するとされ、皇帝が自分の発言を訂正することは、自ら皇帝の権威を貶めてしまうためタブーだったのだ。
トランプ大統領は皇帝ではない。今のところプーチンや習近平ほどの独裁者でもない。本人は大統領に3選されて独裁的権限を強めたいと考えているかもしれないが。
しかし私はトランプのように自らの発言をコロコロ変える人は指導者としての権威を貶めていると思う。
「綸言汗の如し」に相当する英語のことわざは知らない。
ただ昔娘がユーヨーク公共図書館でお土産に買ってきた冷蔵庫用マグネットプレートに次の文字があった。趣旨は同じだろう。
Think before you speak. Read before you think.
この言葉をトランプ大統領に当てはめるなら次のとおりだろう。
「発言する前に後先のことを考えてくれ。考える前に歴史や経済・金融理論を読んでくれ」