阿部幸織「ティンパニー」(「読売新聞」2009年08月28日朝刊)
読売新聞の「くらい」面に「こどもの詩」というコーナーがある。そこに載っていた作品。阿部幸織「ティンパニー」の全行。
音楽は聞くものであると同時に見るもの。見て楽しくなる音楽も確かにある。阿部幸織は「すいそう楽を見たよ」と1行目に書いている。この素直さに引き込まれてしまった。「見る」とうことから音楽に近づいていって、最後に「さつまいもをたたいたら/どんな音がでるのかな」と音にたどり着くのもおもしろかった。
しかし、それよりも楽しいのは、長田弘の感想。
どんどん楽器が増えていく。視覚が楽器を増やして行き、音が増えてゆく。そして、音楽になってゆく。音と音とが互いの音を聞きながら、自分の音を出す。和音ができ、メロディーが生まれる。リズムが生まれる。
長田弘は、こどもの感性にあわせて(こどもだけではないだろうけれど)、音楽を生み出すことができる人だ。
批評とは、作品の音、メロディーを、こんな風に育てていくことだ――読みながら、はっとさせられた。
楽しくなって、詩を読み返した。そして、私は脱線した。「誤読」した。2行目。「えんそう中にならした」。「さつまいも」が頭にあるためか、「おならした」と読み違えてしまった。みんなが演奏中におならして、おならの合奏が始まると楽しいかもしれない。太った人、痩せた人、背の高い人、低い人、立った人、座った人、たくさん食べた人、少ししか食べなかった人、思いっきりおならする人、はずかしそうにおならする人、いろんな音が混じり賑やかな笑いがひろがるだろうなあ。
読売新聞の「くらい」面に「こどもの詩」というコーナーがある。そこに載っていた作品。阿部幸織「ティンパニー」の全行。
すいそう楽を見たよ
えんそう中にならしていた
ティンパニー
さつまいもを
わぎりに切った形だったよ
さつまいもをたたいたら
どんな音がでるのかな
音楽は聞くものであると同時に見るもの。見て楽しくなる音楽も確かにある。阿部幸織は「すいそう楽を見たよ」と1行目に書いている。この素直さに引き込まれてしまった。「見る」とうことから音楽に近づいていって、最後に「さつまいもをたたいたら/どんな音がでるのかな」と音にたどり着くのもおもしろかった。
しかし、それよりも楽しいのは、長田弘の感想。
輪切りの形はティンパニー。ほかほかホルン。細長ならクラリネット。吹奏楽器なんだ。さつまいもは。
どんどん楽器が増えていく。視覚が楽器を増やして行き、音が増えてゆく。そして、音楽になってゆく。音と音とが互いの音を聞きながら、自分の音を出す。和音ができ、メロディーが生まれる。リズムが生まれる。
長田弘は、こどもの感性にあわせて(こどもだけではないだろうけれど)、音楽を生み出すことができる人だ。
批評とは、作品の音、メロディーを、こんな風に育てていくことだ――読みながら、はっとさせられた。
楽しくなって、詩を読み返した。そして、私は脱線した。「誤読」した。2行目。「えんそう中にならした」。「さつまいも」が頭にあるためか、「おならした」と読み違えてしまった。みんなが演奏中におならして、おならの合奏が始まると楽しいかもしれない。太った人、痩せた人、背の高い人、低い人、立った人、座った人、たくさん食べた人、少ししか食べなかった人、思いっきりおならする人、はずかしそうにおならする人、いろんな音が混じり賑やかな笑いがひろがるだろうなあ。
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