國峰照子「帽子屋」(「かねこと」13、2018年03月31日発行)
國峰照子「帽子屋」は「帽子屋は言った」という一行からはじまる。
一日に五分でも日に当ててください
本来自然のなかの生きものですから
なるほど。でも、こういう強い思い入れは、「うさんくさい」。「本来自然のなかの生きものですから」の「……ですから」は「理由(根拠)」を指し示す。「うさんくささ」は「論理」で説明するからである。
私は、こういう「論理」を口にする帽子屋からは帽子を買わないだろうなあ。
そのあと、こうも言う。
帰宅後はかならずブラシをかけてやってください
これは、いいなあ。「ブラシをかける」という行動が具体的なので、そこに生きている人間が見える。「かならず」には愛情がこもっている。こういうことを言われると、帽子を買う気になる。
「商売」は「ことば」しだいだね。
行き先は帽子の気分しだい
坂を下りるときまって帽子屋の前を通る
ブラインドの隙間から伺うような眼
わたしの右手がHiと鐔をあげる
そうしたいからでなく
帽子がさせるのだ
「帽子」と「わたし」が入れ代わる。
ここがおもしろい。
「帰宅後はかならずブラシをかけてやってください」を守った結果、そうなったのだろう。「かならず」は「坂を下りるときまって帽子屋の前を通る」の「きまって」ということばに引き継がれている。
「かならず」は「決める」ことで「気分」になる。「気分」が生まれる。この「気分」は「帽子」と「わたし」のあいだで共有される。こういうことを「一体になる」ともいう。
*
「詩はどこにあるか」3月の詩の批評を一冊にまとめました。186ページ
詩はどこにあるか3月号注文
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ここをクリックして1750円(送料、別途250円)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
目次
森口みや「コタローへ」2 池井昌樹『未知』4
石毛拓郎「藁のひかり」15 近藤久也「暮れに、はみ出る」、和田まさ子「主語をなくす」19
劉燕子「チベットの秘密」、松尾真由美「音と音との楔の機微」23
細田傳造『アジュモニの家』26 坂口簾『鈴と桔梗』30
今井義行『Meeting of The Soul (たましい、し、あわせ)』33 松岡政則「ありがとう」36
岩佐なを「のぞみ」、たかとう匡子「部屋の内外」39
今井義行への質問47 ことばを読む53
水木ユヤ「わたし」、山本純子「いいことがあったとき」56 菊池祐子『おんなうた』61
谷合吉重「火花」、原口哲也「鏡」63
*
谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(下)68
オンデマンド形式です。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
國峰照子「帽子屋」は「帽子屋は言った」という一行からはじまる。
一日に五分でも日に当ててください
本来自然のなかの生きものですから
なるほど。でも、こういう強い思い入れは、「うさんくさい」。「本来自然のなかの生きものですから」の「……ですから」は「理由(根拠)」を指し示す。「うさんくささ」は「論理」で説明するからである。
私は、こういう「論理」を口にする帽子屋からは帽子を買わないだろうなあ。
そのあと、こうも言う。
帰宅後はかならずブラシをかけてやってください
これは、いいなあ。「ブラシをかける」という行動が具体的なので、そこに生きている人間が見える。「かならず」には愛情がこもっている。こういうことを言われると、帽子を買う気になる。
「商売」は「ことば」しだいだね。
行き先は帽子の気分しだい
坂を下りるときまって帽子屋の前を通る
ブラインドの隙間から伺うような眼
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「帽子」と「わたし」が入れ代わる。
ここがおもしろい。
「帰宅後はかならずブラシをかけてやってください」を守った結果、そうなったのだろう。「かならず」は「坂を下りるときまって帽子屋の前を通る」の「きまって」ということばに引き継がれている。
「かならず」は「決める」ことで「気分」になる。「気分」が生まれる。この「気分」は「帽子」と「わたし」のあいだで共有される。こういうことを「一体になる」ともいう。
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「詩はどこにあるか」3月の詩の批評を一冊にまとめました。186ページ
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目次
森口みや「コタローへ」2 池井昌樹『未知』4
石毛拓郎「藁のひかり」15 近藤久也「暮れに、はみ出る」、和田まさ子「主語をなくす」19
劉燕子「チベットの秘密」、松尾真由美「音と音との楔の機微」23
細田傳造『アジュモニの家』26 坂口簾『鈴と桔梗』30
今井義行『Meeting of The Soul (たましい、し、あわせ)』33 松岡政則「ありがとう」36
岩佐なを「のぞみ」、たかとう匡子「部屋の内外」39
今井義行への質問47 ことばを読む53
水木ユヤ「わたし」、山本純子「いいことがあったとき」56 菊池祐子『おんなうた』61
谷合吉重「火花」、原口哲也「鏡」63
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谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(下)68
オンデマンド形式です。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
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(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
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(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
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問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
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