北畑光男『合歓の花』(思潮社、2018年11月20日発行)
北畑光男『合歓の花』の「岩魚」が印象に残った。
読みながら、この岩魚は北畑だろうか、と思ったのだ。岩魚を釣りにいって、岩魚がかかった瞬間、釣り人は釣り人ではなく、岩魚になる。
一回だけではなく、繰り返す。そこに、どうしても伝えたいという必死さがある。
そして、この「あっちにいけ」は、きちんと説明できるわけではないのだが、なんとなく北畑が、詩を読んでいる人に向かって言っているような感じがしたのだ。
「すずむし」にも同じようなことばがある。
「あっちにいけ」と「くるな」は同じことを言っていると思う。
こんなふうに死ぬな、といっている。
こんなふう、とは、どんなふう?
「いとざくら」が教えてくれるかもしれない。
この方言は一揆を起こした人のあいだで語り継がれてきた、と読むことができる。最終連にこうある。
一揆を起こした人(首謀者)は、そのためにたいへんな目にあっただろう。でも、そうするしかなかった。そうするしかなかったが、人にはそうしろとはいわなかっただろう。「あっちへいけ」「こっちへくるな」と、一人で苦しみを背負っただろう。
そういうことを感じさせる。
いま、天皇が強制退位させられ、戦争へまっしぐらに体制をととのえる憲法の改正がもくろまれている。北畑は戦争を実際に体験した人ではないようだが、体験を直接聞いた世代かもしれない。その語り聞いた「あっちへいけ、こっちへくるな」(逃げろ)という「声」を私はなんとなく感じる。
「いとざくら」は「いちばんはやいさくら」という意味だろうか。いちばん敏感なものの「悲鳴」と読んでしまう。
*
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2500円(送料、別途注文部数によって変更になります)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
なお、私あてに直接お申し込みいただければ、送料は私が負担します。ご連絡ください。
「詩はどこにあるか」12月の詩の批評を一冊にまとめました。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168075066
オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
(4)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
北畑光男『合歓の花』の「岩魚」が印象に残った。
俺は死んでいきます
食べなければならなかった
カゲロウの幼虫
川面を飛ぶ蝶
もう俺の食べる分だけは
死ななくていいから
五月になっても雪のある
山奥の渓流では
釣針にひっかかったもう一匹の岩魚が
尾で夕陽をはじき
仲間に知らせています
あっちにいけ
あっちにいけ
読みながら、この岩魚は北畑だろうか、と思ったのだ。岩魚を釣りにいって、岩魚がかかった瞬間、釣り人は釣り人ではなく、岩魚になる。
あっちにいけ
あっちにいけ
一回だけではなく、繰り返す。そこに、どうしても伝えたいという必死さがある。
そして、この「あっちにいけ」は、きちんと説明できるわけではないのだが、なんとなく北畑が、詩を読んでいる人に向かって言っているような感じがしたのだ。
「すずむし」にも同じようなことばがある。
ねえさん
おともなくきえていったあの
しろいほうしゃじょうのてんはなに
おまえはくるな
くさつゆのなかでいきるおまえはくるな
なげられたひかるこえ
りつりつ
「あっちにいけ」と「くるな」は同じことを言っていると思う。
こんなふうに死ぬな、といっている。
こんなふう、とは、どんなふう?
「いとざくら」が教えてくれるかもしれない。
幼くして故郷を離れたおれの
初めて聞いた花の名前
いとざくら
方言で辛夷のこと
この方言は一揆を起こした人のあいだで語り継がれてきた、と読むことができる。最終連にこうある。
「困る」の字の代りに
小さい丸を筵旗に掲げる
山瀬の吹きおろす北上山地である
凍てついた狭い道の雪も消えた
傾斜地に残った
一本のいとざくらが咲いて
一揆を起こした人(首謀者)は、そのためにたいへんな目にあっただろう。でも、そうするしかなかった。そうするしかなかったが、人にはそうしろとはいわなかっただろう。「あっちへいけ」「こっちへくるな」と、一人で苦しみを背負っただろう。
そういうことを感じさせる。
いま、天皇が強制退位させられ、戦争へまっしぐらに体制をととのえる憲法の改正がもくろまれている。北畑は戦争を実際に体験した人ではないようだが、体験を直接聞いた世代かもしれない。その語り聞いた「あっちへいけ、こっちへくるな」(逃げろ)という「声」を私はなんとなく感じる。
「いとざくら」は「いちばんはやいさくら」という意味だろうか。いちばん敏感なものの「悲鳴」と読んでしまう。
*
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2500円(送料、別途注文部数によって変更になります)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
なお、私あてに直接お申し込みいただければ、送料は私が負担します。ご連絡ください。
「詩はどこにあるか」12月の詩の批評を一冊にまとめました。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168075066
オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
(4)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
![]() | 北の蜻蛉―詩集 |
クリエーター情報なし | |
花神社 |