22 壊れた木の椅子を分類する
1
懐疑に属するもの/曲線の輝き。まがるとき、一本の直線がもちはじめる艶。ひめられた水分が浮きでて、静かに広がっていく時間を、埋めるように満ちてくるあつい息。男は木をまげながら、思い出す。ある日、同質のものを女の体に見たことがある。女もまた直線から曲線へ変形していく生き物であるか。(これは視覚から出発し、見ることを放棄した精神、あるいは不在を透視する精神の領域に属することがらでもある。)
2
仮説に属するもの/しなる曲線のなかで用意される抵抗。抵抗のなかで用意される亀裂。復元を願うものと復元を拒むものが同じひとつの名で呼ばれる。抵抗--それはひとつの意志である。模索する男は、美しさはすべてその仮説からはじまることを知る。(これは触覚、体験の領域と重なりながらはみだした場所で明らかにされることである。あるいは突然の破壊にはじきかえされる予感のなかにのみ訪れるものであるか。)
3
独断に属するもの/たわむ存在であろうとするものを、ねじれた状態ととらえなおす男の網膜。しなやかさを生きる弾力を、不徹底な構造と見る男の触覚。内部に分け入り、力を分類し、鍛え、整えなおそうとする男の筋肉。(これらは虚無に属する力の差用である。存在を価値でとらえなおすのは誤った哲学である。想像力が不気味なのは、優しさが含まれているからであることを忘れた男の方法である--と女は言った。)
4
秩序に属するもの/濃密なニスのにおいを破ってあらわれる色。偶然の冬、断念の弱い光。どこにでもある符号が密接さを生成するとき、男の視覚をかすめるのは女である。この必然は失なわれたとき確実になる。(しかし、これは主観に属するものと呼ばれることもある。何に最初に触れたかによって自在に変形していく物語、あるいはどの領域に引き寄せるかで決定されることだからである。)
(アルメ244 、1986年09月25日)
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懐疑に属するもの/曲線の輝き。まがるとき、一本の直線がもちはじめる艶。ひめられた水分が浮きでて、静かに広がっていく時間を、埋めるように満ちてくるあつい息。男は木をまげながら、思い出す。ある日、同質のものを女の体に見たことがある。女もまた直線から曲線へ変形していく生き物であるか。(これは視覚から出発し、見ることを放棄した精神、あるいは不在を透視する精神の領域に属することがらでもある。)
2
仮説に属するもの/しなる曲線のなかで用意される抵抗。抵抗のなかで用意される亀裂。復元を願うものと復元を拒むものが同じひとつの名で呼ばれる。抵抗--それはひとつの意志である。模索する男は、美しさはすべてその仮説からはじまることを知る。(これは触覚、体験の領域と重なりながらはみだした場所で明らかにされることである。あるいは突然の破壊にはじきかえされる予感のなかにのみ訪れるものであるか。)
3
独断に属するもの/たわむ存在であろうとするものを、ねじれた状態ととらえなおす男の網膜。しなやかさを生きる弾力を、不徹底な構造と見る男の触覚。内部に分け入り、力を分類し、鍛え、整えなおそうとする男の筋肉。(これらは虚無に属する力の差用である。存在を価値でとらえなおすのは誤った哲学である。想像力が不気味なのは、優しさが含まれているからであることを忘れた男の方法である--と女は言った。)
4
秩序に属するもの/濃密なニスのにおいを破ってあらわれる色。偶然の冬、断念の弱い光。どこにでもある符号が密接さを生成するとき、男の視覚をかすめるのは女である。この必然は失なわれたとき確実になる。(しかし、これは主観に属するものと呼ばれることもある。何に最初に触れたかによって自在に変形していく物語、あるいはどの領域に引き寄せるかで決定されることだからである。)
(アルメ244 、1986年09月25日)