詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

日本語の罠

2020-01-29 13:18:54 | 自民党憲法改正草案を読む
日本語の罠

安倍の語った「募ったけれど、募集していない」は単なる「ことばの意味」を知らない人間の言い逃れ、たわごとのように見えるが、実は、重要な罠を隠している。

ふつう、「逆接」の文章は、前後を入れ替えても「意味」が通じる。
「金がなかったけれど、結婚指輪をプレゼントした」
「結婚指輪をプレゼントしたが、金がなかった」
両方とも、「だからローンにした(借金した)」というようなことを補えば通じる。不自然さがない。

しかし、安倍の文章は、ひっくりかえすと変になる。
「募集していないが、募った」
なにをいいたかったのか、わからなくなる。
「募った」という「肯定形」が意味を強調するからだ。

「嘘はついていないが、事実に反することを語っている(語った)」「虚偽報告はしていないが、事実に反することは語っている(語った)」という具合に、「否定形」を先にすると、こっけいさが際立つと思う。

日本語は、「最後」に大切なことを言う。「結論」は最後に言う。つまり、最初に何を言ったかではなく、一番最後に何を言うかが大事。
「募っているが、募集していない」は、これを利用している。
最後まで聞かないと、何を行っているか特定できないことを利用した「高等戦術」。
安倍を支えている誰かは、ある意味では日本語に精通している。

安倍の「戦術」を笑うひとは多いが、注意しないといけない。
「安倍昭恵は私人ではない」と閣議決定する。そうすると、最後に下された「決定」が「事実(真実)」のように広がっていく。
この奇妙な「日本語の魔法」を安倍は利用している。

この論法を批判するひとは多いが、たぶん、安倍支持者は、「安倍はきちんと説明した。募集していない、と否定している」と理解されているはずだ。

きっと。
中東で自衛艦が攻撃され、自衛隊員が死んでも、「攻撃され、命を落としたが死んだわけではない。御霊は生きている」と言われるだろう。

高校で「論理国語」というものが教えられることになるらしいが、こういう奇妙な「論理」をつかいこなせる「官僚」(安倍を支える官僚)をさらに増やすためだろう。

*

そして、振り返ってみれば、安倍の「戦術」はすべてこの論法なのである。
「結論」だけをおしつける。
途中の議論(矛盾)はすべて無視する。
安倍が判断した「結論」だけを、安倍の仲間が支えるために画策する。安倍の「結論」のために働いた人間だけが「評価」される。
この国には「論理」など、ない。
安倍がすべてを支配している。
「独裁」が、こういうことろからも証明できるのである。

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嵯峨信之『小詩無辺』(1994)を読む(11)

2020-01-29 09:21:37 | 『嵯峨信之全詩集』を読む

生々流転

心の空に
軽気球がぼんやり浮かんでいる

 「空」ではなく「心の空」と書くのが2000年以前の書き方なのかもしない。「軽気球」「ぼんやり」も、それに通じる。
 「生々流転」は、ここでは「判断停止」という一点から眺められているようだ。逆説的なことばの運動だ。




*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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