詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

嵯峨信之『小詩無辺』(1994)を読む(13)

2020-01-31 08:48:18 | 『嵯峨信之全詩集』を読む

鵜原の海--鵜原抄の詩人へ

ある日は雨で
翌日は遠い空から晴れてくることもある

 海の上には空が広がっている。沖を見つめていると海を見つめているのか、空を見つめているのか、わからなくなる。嵯峨は、空に視線を引っ張られる詩人だったのか。
 「ある日」「翌日」ということばのなかを時間が過ぎてゆく。この「経過」の感覚が「遠い」を呼び出す。
 「晴れてくる」の「くる」に明るさがある。その明るさは、「くる」を「いく」へと転換させる。呼応がある。次の展開には、だから「いく」という動詞を補うことができる。

小雨のなかをぼくは泳いだ
あるいは心の海を泳いだのかもしれない







*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
『誤読』販売のページ
定価の下の「注文して製本する」のボタンを押すと購入の手続きが始まります。
私あてにメール(yachisyuso@gmail.com)でも受け付けています。(その場合は多少時間がかかります)
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