詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

Estoy loco por espana(番外篇74) Luis Serranoの写真

2020-06-25 07:10:45 | estoy loco por espana


Luis Serranoの写真

La sombra no es un solo color.
La sombreado de la sombra (sombra negra, sombra gris, sombra blanca, etc..)crean una nueva existencia como si fuera una criatura viviente.
Es como la interacción sexual.
Y la vida nace.
Incluso puedo escuchar la alegri’a de la vida.

影は一色ではない。
影の濃淡が、まるで生きもののように新しい存在を生み出していく。
それはまるで性交のようだ。
重なる。交わる。
そしていのちが生まれる。
いのちの歓喜の声まで聞こえてきそうだ。
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荒木元「西安の夜」

2020-06-25 06:51:12 | 詩(雑誌・同人誌)
荒木元「西安の夜」(「GA-GYU+」7、2020年06月15日発行)

 詩は、ほんとうのことを書く必要はない。体験を書く必要はない。それなのに、あ、これは「ほんとうのことだ」と感じることばに出会うことがある。そういうことばが、私は実は好きである。
 荒木元「西安の夜」。

雨の夜
全身ずぶ濡れの男が 青海湖をめぐって
ここまで来たと言ってあらわれた

 「西安」は中国の都市だろう。「青海湖」は中国の湖だろう。私は知らない。だから、ここに書かれていることが現実のことが、架空のことか、私は判断しない。
 雨が降りつづいていて、遠くに稲妻が光る。それを見て、日本人旅行者が歓声をあげる。

男は 青海湖に浮かぶ空のような眼で
ほほ笑みながらそれを見つめている

男は 湖畔で野宿した夜の
星空について ことばすくなに話してくれた

 「青海湖に浮かぶ空のような眼」は「ことば」になりすぎている。ほんとうのことかもしれないが、私は、こういうことばを「ほんとう」とは感じない。むしろ、嘘っぽく感じる。だから、これからどんな嘘が詩として捏造されるのだろうと思いながら、ことばを追い始める。
 「湖畔の野宿」「星空」はお膳立てどおり、つまり「定型」だなあ、と思って読んでいる。
 「現代詩」とは「わざと」書くものだと西脇は定義していたと思うが、これでは「わざと」にもならない、と思いながら読んでいる。
 つまり、「ケチ」をつけるために読んでいるなあ、と気づきながら読んでいる。
 ところが、

見渡すかぎりの闇の中で
夜通し ひとり寝袋にくるまって
空を見上げる男の姿が浮かんだ

 この三行で、とても奇妙なことが起きた。「浮かんだ」は「思い浮かんだ」であり、想像したということなのだが、「思い」が省略されているために、私はなぜか、男の体が宙に浮いている(浮かんでいる)姿を見てしまったのである。「男」がそのまま「浮かんだ」のである。
 そして、ここに「ほんとう」が書かれている、と感動したのだ。
 これはもちろん私の「誤読」なのだが、「誤読」した瞬間、これは「ほんとう」のことが書いてある、と確信したのだ。
 この私の「誤読」を、荒木のことばがさらに推し進める。

男を乗せた丘が めまいのように
漆黒の宇宙に回転している

 荒木は、男を「丘」ごと宇宙に放り投げているが、私は男が宇宙に「浮かんでいる」と感じたのだ。あ、宇宙まで行ってしまったのだと感じた。それが「見渡すかぎりの闇」ではなく「見渡すかぎりの星の中」のできごとなのだ。
 どうして、こんなふうに「誤読」したのか。

星空について ことばすくなに話してくれた

 「ことば」が「少ない」からだ。もっと聞きたいという気持ちが、男からことばを奪い、さらにそのことばを聞いた荒木からもことばを奪い、私が「見渡すかぎり」の「星」を見つめる男になってしまって、私そのものが「宇宙」に浮いてしまったのだ。
 「見渡すかぎりの闇の中」は「漆黒の宇宙」と言い直されているのだが、その「漆黒」はそのまま「星空」なのだ。それは地上で見上げる「光景」ではなく、「宇宙」のなかでしか体験できない光景である。
 この男は、その後どうなったか。
 最終行。

男はすでに 青海湖の夜空を残して 旅立っていた

 「宇宙」へ旅立っていた、と私は読む。
 他の都市へ出発していたという意味なら、気取ったことばづかい、「詩的ないいまわし(もう古いけれど)」の「定型」へになってしまうが、「夜空」そのものを置き去りにして、「夜空」のはるか向こうの「宇宙」へ行ってしまったと、私は読んでしまうのだ。
 荒木が「思い浮かべた」のではなく、男が「事実」として「浮かんだ(地上を離れた)」が、そのことが「結果」として証明されるのだ。







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