詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

Estoy loco por espana(番外篇79) Eduardo Mun'oz

2020-07-24 19:32:01 | estoy loco por espana


La trabajo de Eduardo Mun'oz

Es una cara.
Es hombre o mujer? Lo veo como un hombre.
Es un nin’o o un adulto?
La izquierda es un nin’o.
Los ojos simplemente esta’n sorprendidos.
Los ojos redondos muestran sorpresa.
La boca esta’ completamente abierta y el cuerpo ( o espi’ritu) esta’ vaci’o.
El nin’o se olvida a si’í mismo.
La mitad derecha es un adulto.
El adulto critica lo que ven.
Los ojos son tan redondos como el nin’o, pero en realidad esta’n cerrados.
El adulto no acepta lo que ven.
El adulto se protege con una ma’scara de cri’tica.

Hay cosas conflictivas en una gente.
Piensa en el conflicto, incluso en el momento de la sorpresa.
Eduardo hereda de Picasso el método de expresar "mu’ltiples seres".

男か、女か。私は男と見る。
少年か、大人か。
左は少年。目が単純に驚いている。まんまるな目が、驚きをあらわしている。
口もまんまるに開けて、肉体のなかが空っぽになっている。
少年は我を忘れている。
右半分は大人だ。
大人は見たものを批判している。
目を丸く見開いてはいるが、実際は、閉ざしている。
大人は見たものを受け入れていない。
大人は、批判という仮面で、自分自身を守っている。

人間には相反するものがある。
驚いた瞬間にさえ、相反することを考える。
この「複数の自己」を瞬間として表現する方法は、ピカソに通じる。
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村上春樹『一人称単数』

2020-07-24 19:01:26 | その他(音楽、小説etc)


村上春樹『一人称単数』(文藝春秋、2020年07月20日発行)

 私は村上春樹の文体が嫌いである。翻訳されることを意識して書かれた文体だからである。特に長編小説は、翻訳されることが強く意識されている。私は翻訳はしないが、直感的に、そう感じてしまう。澱みがなく、読みやすい。次に出てくることば、次に何が書かれるか「予測」しやすい。
 どんな作品でも(あるいは日常会話でも)、ことばは常に次にどんなことばがあらわれるか、「予測」しながら読む(聞く)のがふつうのやり方だ。この「予測」をどれだけていねいに導くか、あるいは裏切るかが「作品」の価値を決めるときがある。すぐれた文学は「予測」させると同時に、その「予測」を許さないという両面から成り立っているが、「予測を許さない」という部分が多くないと、「初めて読む」という感動が起きない。村上春樹の小説は(私は、嫌いだからほとんど読んだことはないのだが、読んでいるかぎりでいえば)、「予測」が非常に簡単である。すらすらと読める。私は目が悪く、「速読」はむりなのに、である。
 で。
 その「予測可能な文体」のなかに、ときどき、あまりにも「予測」をそのまま利用したことばがあらわれるときがある。このときに、私は、どう言っていいのかわからないが、ぞっとする。ウェルメイドの「料理」であるはずなのに、「味の素」の粒が溶けずにそのまま残っていて、それを噛んでしまったという感じ。それまでの「ていねい」に準備されてきた(つくられてきた)ものが、「手抜き」によって崩れていく。もともと村上春樹の文体は好きではないが、この瞬間は、ぞっとするとしかいえない。
 この部分こそいちばん大切に書かないといけないのに、「味の素(もうつかわれなくなった定型)」で処理されている、と感じる。
 ひとつだけ例を挙げる。「謝肉祭(Carnaval)」の、女友だちが詐欺師だったとわかったあとの部分。女友だちは「醜い」が、「特殊な吸引力」でひとをひきつける(主人公も、その吸引力にひきつけられた)。その夫はハンサムだ。
 その二人の組み合わせから、主人公は、こんなことを考える。

彼女のそのような特殊な吸引力と、若い夫のモデル並みに端正なルックスがひとつに組み合わせられれば、あるいはそこで多くのことが可能になるかもしれない。人々はそのような合成物に抗いがたく引き寄せられていくかもしれない。そこには悪の方程式のようなものが、常識や理屈を飛び越えてたちあげられるかもしれない。(178ページ)

 「特殊な吸引力」については、充分に書き込まれているから、そこには不満はない。しかし、「悪の方程式」はどうだろうか。女の魅力と男の魅力があわさって、他人を簡単にだますということなのだろうが、あまりにも「手抜き」のことばではないだろうか。
 「悪の方程式」に中心があるのではなく、女の「特殊な吸引力」がテーマであることは理解できるが、その「特殊な吸引力」の「もうひとつの証拠」のようなものが、こんな「犯罪小説の定型の説明」につかわれるようなことばで書かれてしまうことに、私は納得ができない。
 ここがいちばん肝心なところ。
 「悪の方程式」を「悪の方程式」ということば(慣用句)ではなく、具体的に書かないと、何といえばいいのか……「女友だち」がストーリー(主人公の人生)から簡単に排除されてしまう。「排除の根拠」になってしまう。
 「悪の方程式」というのは、たぶん、日本語だけではなく、外国の犯罪(小説)の説明につかわれることばだと思うが、そう思うと、よけいにいやになる。
 最近、日本では「夜の街」ということばが、「悪の方程式」のようにつかわれているが、そういうことも思い出した。世間に流布している「定型」を利用した表現をキーワードにつかうのは、なんともおもしろくない。ある主張のためにことばを利用する「政治家の文体」を感じる、といえば、私の「ぞっとする」を言い直したことになるかなあ。









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問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

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きょうの読売新聞の「視点」(泣きました)

2020-07-24 13:30:20 | 自民党憲法改正草案を読む
きょうの読売新聞の「視点」(泣きました)
   自民党憲法改正草案を読む/番外369(情報の読み方)

 2020年07月24日の読売新聞(西部版・14版)の26面(社会面)に、非常にいい記事が掲載されていた。「GO TO初の休日」に関する記事だ。
 
豪雨被災地 届かぬ恩恵/旅館 営業見通せず

 九州各県は豪雨に見舞われた。熊本県の人吉温泉。大分県の日田温泉。多くの旅館が被害を受け、まだ後片付けもおわっていない。当然、営業はできない。営業がいつになるかわからない。
 旅館の経営者たちは、こう語っている。

「現時点で政府の支援事業の恩恵はほとんど受けられない。受け入れ態勢が整った後、何からの形で(支援事業=GO TOを)再び実施してもらいたい」
「復旧・復興した被災地に、支援事業の効果が届かないようでは困る」

 彼らは、直接批判を語ってはいないが、私風に言い直せば、こうである。

「被災地はGO TOを受け入れられない。復旧・復興してからGO TOを実施してほしい」

 これは、当然だろう。被災地は、コロナで客が減っただけではなく、復旧・復興のために客を受け入れらない。こういうときに、他の観光地に対しては「GO TO支援」がある。私たちは、見すてられたのか、と言いたいのを我慢して、「復旧・復興したらがんばるから応援してください」と言っている。

 ここから考えるのである。
 「GO TOトラベル」の予算は1・1兆円と言われている。復旧・復興費に投入すれば、状況はずいぶん変わるだろう。はっきりした記憶ではないが、「激甚災害指定」を受けたときの「補助費」が1兆円を超えるというのは記憶にない。
 もし1兆円を投入すれば、今回の九州豪雨の被災地の旅館の復旧など、短期間ですんでしまうのではないだろうか。
 他の観光地も苦しいのは理解できるが、こういうときは、被災地の復旧を優先し、みんなでいっしょに観光をもり立てていこうという気持ちになれないのだろうか。安倍政治の下で、「自分さえもうかればいい(自分のお友だちだけがもうかればいい)」という風潮が、日本中にひろがってしまったのかもしれない。

 「1・1兆円」と書いたついでに。
 1面に「再挑戦 TOKYO2020」という連載がある。なんとしてもオリンピックを開きたいという安倍の姿勢を応援する記事だ。「コロナ対策 暗中模索」という見出しがついているが、記事のメインは金の動きだ。

 東京大会のチケットは、すでに544万枚販売されている。無観客にすると、組織委は約900億円の収入を失い、削減の場合、一部のチケット保有者に観戦を諦めてもらう必要がある。

 「約900億円」は巨額だが「GO TOトラベル」の十分の一より少ない。こう考えると、「GO TO」にかけている予算の大きさがわかる。そして、巨額だから、途中で「中抜き」されても気づく人が少ない。オリンピックのチケットの払い戻しなら、購入者ひとりひとりが金の流れを理解できるし、中抜き(手数料徴収)をされても気がつくが(手数料は組織委が負担するから中抜きということないだろうが)、「GO TO」では、わけがわからない。
 脱線したが。
 オリンピックのチケットの900億円を問題にするなら、「「GO TO」の1・1兆円をもっと問題にすべきだろう。
 この連載には、さらにこういうことも書いてある。

組織委が注目するのは今月10日から観客を入れ始めたプロ野球やJリーグ。入場時に時間差をつけて密集を避けたり、大声での応援やハイタッチを禁じたりしている。武藤敏郎(組織委)事務総長(77)は13日、「非情に参考になる。(入退場や応援法は)五輪でも見当課題になる」と語った。

 なんのことはない。オリンピックに備えて、「人体実験」を強行しているのである。何万人も入場する開会式は、時差をつけての検温やチェックリストの点検などできない。全員を入場させることを考えたら、ぜったい、当日の朝からでは間に合わないだろうと、素人の私は思うけれど。だからこそ、何度も何度も「人体実験」で運営をスムーズにする方法を手さぐりしているのだろう。
 見出しにあるように「暗中模索」だ。
 そして、ここから「GO TO」も見直してみる必要がある。単に観光業者のことを思ってキャンペーンをやっているのではない。大勢の人が移動するとき、どういうトラブルがあるか。すでに沖縄では、空港での検温チェックをふりきって市内に出た人がいると報じられている。オリンピックでは、こういうときどうするのか。東京近辺での宿泊施設の対応はスムーズに進むのか。今回、東京が「GO TO」から除外され、東京での「人体実験」はできないが、このままで大丈夫なのか。
 豪雨被災地の旅館ではないが、コロナ感染者が落ち着いたら、東京を対象にして「GO TO」が行われるのではないのか。そして、それは「業者」の要望というよりも、オリンピックを開きたい安倍の「野望」を反映したものだ。(コロナ感染者が減ったとしても、たぶん完全撲滅にはなっていないだろう。どうしてもコロナ対策は維持しないといけない。)

 なお1面のトップニュースは、

コロナ感染 全国981人/最多更新 東京366人 福岡66人

 全国で「人体実験」が始まったと考えるべきだろう。北欧ではスウェーデンが「集団免疫獲得作戦」を展開し、批判を浴びているが、「GO TO」は「集団免疫獲得人体実験」の開始として受け止める方がいい。
 何がしかの「割引」(補助)で「実態実験」であることをごまかしている。
 二階が(安倍が?)、キャンペーンの実施を前倒しにしたがったのは、「連休」に実験しないことには「混雑時の実験」にならないからである。
 一方で、衆院選が取り沙汰されている。二階の「収入(わいろ献金)」が減って、このままではやっていけないということなのだろう、とも思う。政治家も、やっと、「休業」がつづけば「金が必要になってくる」と気づいたのはいいけれど、自分の金の心配しかしないのが、なんとも醜い。
 政治家への献金が少なくなっているように、休業している人たちは収入がなくなっているのである。休業者は麻生のようにパーティーを開いて金を集めるということもできなければ、何かのイベント(キャンペーン)を企画し、手数料を中抜きするということもできない。

 巨額の金が動いている世界の、その「巨額」が実感できない。
 年金生活の私は、1000円を超す買い物をするとき、ずいぶん迷う。翌日まで待ってみる。一週間伸ばしてみる、というのはしょっちゅうである。
 だから1・1兆円も900億円も、どちらが多いかは「頭」では理解できても、実感としては理解できない。実感がないから、どうしても読みとばしてしまう。そんなものかな、と思ってしまう。そういうときこそ、ほかの「数字」は比較してみる。「頭」の理解を「頭」だけでおわらせず、もっと自分ひきつけてみて、これはおかしいと言い直す。
 そう思って新聞を読むと、また「金」に出会う。
 1面。

ALS患者を嘱託殺人/薬物投与 2医師逮捕

 その末尾に、

事件当日まで2人と林さん(被害者)は面識がなかったとみられるが、山本容疑者の講座には事件前、林さんから百数十万円の振込があったという。

 容疑者の「経済状態」を私は知らないし、そのひとの心理状態もわからないが、百数十万円と1・1兆円、900億円という数字を見比べて、私は絶望感に襲われる。
 たとえば、豪雨で旅館が壊滅的な打撃をうけた旅館に、いますぐ「百数十万円」振り込まれたとしたら、どうだろう。ボランティア頼みの旅館の経営者は、すぐにでも土建業者を雇うのではないだろうか。「1・1兆円」を、そういうことにつかうとしたら、何も人の人が「ありがたい」と思うのではないだろうか。
 そういう思いを駆り立てる記事だった。社会面のリポートは。私は新聞を読んでひさびさに泣いてしまった。くやしい思いが込み上げてきたのだ。私は、被災した当事者ではないけれど。旅館の人たちは、私のようには怒ることができない。補助金がしきゅうされなくなると困るからだ。だから、怒りを押し殺して「お願い」のことばを口にしているのだ。














#検察庁法改正に反対 #安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位 
 


*

「天皇の悲鳴」(1000円、送料別)はオンデマンド出版です。
アマゾンや一般書店では購入できません。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

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