川上明日夫「ひやで一杯と」、北條裕子「冬空」(「木立ち」136、2020年04月24日発行)
読みやすいことば、読みにくいことば。この違いは、どこからくるのか。
川上明日夫は、私にとっては杉本真維子とは別の「読みづらさ」がつきまとう。そして、その「読みづらさ」はいつも「読みやすさ」と隣り合わせにある。
「ひやで一杯と」の、この部分。「水を改札してやる」に私は非常にひかれる。ここだけ、ことばが「さっぱり」している。たぶん「やる」ということばの強さのためである。ほかのことばは「とほい」「すこし」「そっと」と、かなり気持ちが悪い。ひとつだけなら我慢できるが、重なるとぞっとする。その「ぞっとする感じ」が「くれてゆき」とか「はぐれて」とか「淋しさ」とを呼び寄せる。
杉本のことばが、「主観」と「客観」をぼきぼき折りながらつづいていく不規則性を特徴としているとすれば、川上のことばは「客観」を「主観」でどこまでもどこまてもからめ捕っていくところに特徴がある。
そこへ突然、
「やる」は「主観」の押しつけ。自己主張だが、押しつけるときの「肉体」の動きが、「からめ捕る」ときとは逆なのだ。だから、気持ちがいい。
まあ、こんなことは、私の「主観」にすぎないが。
*
北條裕子「冬空」。
この一行空きのスタイルは何だろうか。わからないけれど、この一行空きが、北條のことばを読みやすくさせている。「嘘」「ほんとう」「裏切る」ということばが出てくるが、その切断と接続が、こんなふうに一行空きのつながりだったらいいだろうなあと思う。もともと「空き」があるのだ。切断するわけではないのだ。「空き」があるから、どんなに接続したつもりになっても、のみこまれるということはない。
「冬空」というタイトルに誘われたのだろうか。冬の星を見ながら、あるともないともいえない「星座」をつくりだしてしまう人間の不思議さを思うのだ。
このリズムは好きだなあ。
**********************************************************************
「現代詩通信講座」開講のお知らせ
メールを使っての「現代詩通信講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントを1週間以内に返送します。
定員30人。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円です。
費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。
お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com
また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571
**********************************************************************
「詩はどこにあるか」6月号を発売中です。
132ページ、1750円(送料別)
オンデマンド出版です。発注から1週間-10日ほどでお手許に届きます。
リンク先をクリックして、「製本のご注文はこちら」のボタンを押すと、購入フォームが開きます。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168079402
*
オンデマンドで以下の本を発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
読みやすいことば、読みにくいことば。この違いは、どこからくるのか。
川上明日夫は、私にとっては杉本真維子とは別の「読みづらさ」がつきまとう。そして、その「読みづらさ」はいつも「読みやすさ」と隣り合わせにある。
ながめは向こう岸にくれてゆき
とほい心に すこしいる
だれかいる
それから そっと わたしを
はぐれて 水を改札してやる
秋
河は 淋しさの面積でしたから
「ひやで一杯と」の、この部分。「水を改札してやる」に私は非常にひかれる。ここだけ、ことばが「さっぱり」している。たぶん「やる」ということばの強さのためである。ほかのことばは「とほい」「すこし」「そっと」と、かなり気持ちが悪い。ひとつだけなら我慢できるが、重なるとぞっとする。その「ぞっとする感じ」が「くれてゆき」とか「はぐれて」とか「淋しさ」とを呼び寄せる。
杉本のことばが、「主観」と「客観」をぼきぼき折りながらつづいていく不規則性を特徴としているとすれば、川上のことばは「客観」を「主観」でどこまでもどこまてもからめ捕っていくところに特徴がある。
そこへ突然、
水を改札してやる
「やる」は「主観」の押しつけ。自己主張だが、押しつけるときの「肉体」の動きが、「からめ捕る」ときとは逆なのだ。だから、気持ちがいい。
まあ、こんなことは、私の「主観」にすぎないが。
*
北條裕子「冬空」。
きみに沿っていくと 嘘をつくことで ほんとうを示したくなる きみに初めて会っ
たときから 瞬時に ぼくはぼく自身を 裏切ることがわかってしまった きみのこ
とは 恋じゃなかった
この一行空きのスタイルは何だろうか。わからないけれど、この一行空きが、北條のことばを読みやすくさせている。「嘘」「ほんとう」「裏切る」ということばが出てくるが、その切断と接続が、こんなふうに一行空きのつながりだったらいいだろうなあと思う。もともと「空き」があるのだ。切断するわけではないのだ。「空き」があるから、どんなに接続したつもりになっても、のみこまれるということはない。
「冬空」というタイトルに誘われたのだろうか。冬の星を見ながら、あるともないともいえない「星座」をつくりだしてしまう人間の不思議さを思うのだ。
JR線は遠くの空を走っているよ ぼくは遠くまでいくことにした
このリズムは好きだなあ。
**********************************************************************
「現代詩通信講座」開講のお知らせ
メールを使っての「現代詩通信講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントを1週間以内に返送します。
定員30人。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円です。
費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。
お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com
また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571
**********************************************************************
「詩はどこにあるか」6月号を発売中です。
132ページ、1750円(送料別)
オンデマンド出版です。発注から1週間-10日ほどでお手許に届きます。
リンク先をクリックして、「製本のご注文はこちら」のボタンを押すと、購入フォームが開きます。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168079402
*
オンデマンドで以下の本を発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com