詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

アルメ時代33 雨の形

2020-07-30 22:13:48 | アルメ時代
アルメ時代33 雨の形  谷内修三



ワイパーが雨をぬぐっていく
消えていく気持ちを
いまなら持っていることができる
言い聞かせて
疲労のほてりを踏んでいく靴を負う
電話ボックスは溶けだしている
横顔があきらめたように直立する
見覚えがある
この時間には見覚えがある
(裏切っていくのは疲れた
肉体だろうか精神だろうか)
こめかみをガラスに押しつける
雨の角度が見える



(アルメ252 、1987年09月25日)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Estoy loco por espana(番外篇81)Josep Blanche

2020-07-30 18:39:35 | estoy loco por espana


Josep Blanche
Laberinto(Pintura acrilica y collage sobre tela 130x130 cm)

Rojo, negro y gris.
No se’ si puedo resumirlo asi’, pero veo estos tres colores.
Todos los colores son tranquilos.
Estos colores tienen el aroma de un "tiempo dominado ".
"Tiempo" tambie’n es "pasado (historia)".
Se necesita "tiempo" para que el color rojo de la pintura cambie al color rojo de este trabajo, pero ese tiempo fortalece el color en si’.
Este rojo tiene el poder de extenderse para siempre.
Gris lo confina. Por el contrario, se puede decir que el gris protege al rojo.
El gris que rodea los cuatro lados hace que el trabajo se vea ma’s grande.
Esto es parte del "mundo (rojo)". Me hace sentir que "rojo (mundo)" se esta’ extendiendo de la misma manera fuera de esto.

赤と黒と灰色。
こう要約していいのかどうかわからないが、この三つの色が見える。
どの色も落ち着いている。
つかいこなされた「時間」の匂いがする。
「時間」は「過去(歴史)」でもある。
絵の具の赤が、この作品の赤に変わるまでに経てきた「時間」が、色そのものを強固にする。
どこまでも広がっていくことができる赤かもしれない。
それを灰色が閉じこめている。あるいは、守っているといえばいいのだろうか。
四方を取り囲んだ灰色が、作品を逆に大きく見せている。
これは「世界(赤)」の一部なのだ。「赤(世界)」はこの外にも同じように広がっているのだと感じさせる。.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

破棄された詩のための注釈03

2020-07-30 17:51:16 | 破棄された詩のための注釈
破棄された詩のための注釈03

 「雨が、恋人がなかにいるのを見つけたときのように、窓を叩いた」ということばと、「額にはりついた濡れた髪」という剽窃されたことばを知っていることを示すために、男は額にはりついた髪を指でなで上げた。
 それから二人は近くのホテルへ駆け込んだ。
 ひとりが先に声を上げる、ひとりがそれをおしとどめ、追い越す。「作品と批評との、理想の関係のように。」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山川宗司『家からの距離』

2020-07-30 12:28:49 | 詩集
山川宗司『家からの距離』(余白社、02月05日発行)

 山川宗司『家からの距離』。「さりげないもの」という詩がある。

生きるのが
すきなんです

差し込まない
庭の藪に陽が射した瞬間
ふわりと
その葉にとまった

そんなさりげないもの
その日から
その言葉を
持ち歩いている

 何もことばをつけくわえたくない。
 「七月の暑い日」は、こんな風だ。

何度かなおしたのですが
いつのまにかそうなっているのです
くせ だったのでしょうね
新宿区の脳神経外科の先生はそう話した
意識がもどらないまま
左側にちょっと首をかしげたかっこうで
姉は生涯最後の眠りについた

 左側にちょっと首をかしげた瞬間、姉には、山川が見た蝶が見えたのかもしれない。ひとはいつも何かを持ち歩いている。そのために、姿勢に「くせ」がある。そう思うと、その「くせ」の方へちょっと近づいていきたくなるではないか。
 「なおす」ためではなく、「くせ」に触れるために。
 「空き地に土管が」。

空き地に
土管が積まれている
そのなかのひとつの土管に
入り込んでいくのがぼくです
四つん這になって
這っていくと
そのことに気づいたのもぼくです

 詩にはつづきがあって、そのつづきの部分こそ山川が書きたいことなのかもしれないが、それを承知で、ここでは引用しない。
 私は、「四つん這になって/這っていく」。土管の中へ「四つん這になって」「入り込んでいくのがぼくです」と気づいたと読みたいのだ。
 「気づく自分」「気づかれた自分」。どちらがほんとうの自分?
 気づくときは、一瞬、自分を忘れるときでもある。
 これを最初に引用した、ことばと蝶にあてはめてみる。
 「生きているのが/すきなんです」と気づいたとき、山川は何を否定したんだろうか。「蝶」に気づいたとき、山川は何を忘れたんだろうか。それを特定することはむずかしい。気づいた瞬間、山川は「生きているのが/すきなんです」ということばになり、また一匹の蝶になっている。
 首をかしげて死んだ姉の、その首の傾げ方に気づいたとき(それをみつめるとき)、山川は姉になっている。姉になって、生きる。何が見えるわけではない。ただ、瞬間的に、姉になってしまう。
 それに気づいたか、気づかなかったか。
 気づきは、あまりにも短いので、気づきと意識されないこともある。

 「気づく」とはどういうことか。そのことを考えさせられた。





**********************************************************************

「現代詩通信講座」開講のお知らせ

メールを使っての「現代詩通信講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントを1週間以内に返送します。

定員30人。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円です。
費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。


お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

**********************************************************************

「詩はどこにあるか」6月号を発売中です。
132ページ、1750円(送料別)
オンデマンド出版です。発注から1週間-10日ほどでお手許に届きます。
リンク先をクリックして、「製本のご注文はこちら」のボタンを押すと、購入フォームが開きます。

https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168079402



オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977





問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

なぜ、質問しない?

2020-07-30 11:38:52 | 自民党憲法改正草案を読む
東京新聞web版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/45454?fbclid=IwAR2mUAWETsQsmtYTIYA446aa_N6DFBE6GuG3w50Flh5DxM4a6rbQ1G8M2Jk
に、こんな見出し。

「Go To」混乱 挽回へ政府が次の一手 「ワーケーション」って何?

この記事に、こんな部分がある。
***************************************
日本を訪れる外国人旅行者は2013年に1000万人を突破し、19年には3188万人に伸びたものの、新型コロナまん延で出入国規制が強化され、今年1~6月の上半期は394万7000人にまで落ち込んだ。東京五輪・パラリンピックが予定されていた20年は4000万人を目標に掲げていたが、実現は絶望的だ。
***************************************
↑↑↑↑
これを指摘するなら、「go to」にしろ「ワーケーション」にしろ、何の効果もないことを指摘しないといけない。
「go to」「ワーケーション」の利用者は日本人。
外国人観光客が増えるわけではない。
外国人観光客が日本でつかう金が日本を支えている。
日本人が観光にいくら金をつかおうが、日本の収入にはならない。
(間接的に貢献することはあっても、外国人4000万人分を補てんすることは絶対にできない。4000万人は、日本の人口の約三分の一。)

ここから、さらに考えるべきである。
日本人が日本の観光地で金をつかう。たしかに、観光地は一時的にうるおう。
それ以上に、そういう「事業」をおしすすめるひとが「中抜き」でもうける。
ほんとうに外国人に観光地に来てもらうには、まず日本が「コロナ感染国」ではなくなることが必要。
いまは日本は「コロナ感染拡大国」である。
しかも、政府はそれに対して何もしようとしていない。
こんな国に、どこから観光客がくるだろか。

で、もう一度考えてみよう。
「go to」「ワーケーション」でほんとうにうるおうのは誰なのか。
観光地は「感染予防対策」を徹底しなければならない。その準備には金がかかる。「補助金」は、準備で消えてしまうかもしれない。
絶対に消えない「金」は何か。「手出し」がない仕事をしている人である。
「中抜き」している人である。「キックバック」をもらっている人である。
その「キックバック」「中抜き」をしているひとが「利益が少ない」と不満をもらし、「利益を増やす」ために、つぎつぎに奇妙なことをやっている。
政治家と電通の「キックバック」「中抜き」補てんのために、国民の健康が台無しにされ、税金が投入されている。

新聞は、官僚が発表する「日本を訪れる外国人旅行者は2013年に1000万人を突破し、19年には3188万人に伸びたものの、新型コロナまん延で出入国規制が強化され、今年1~6月の上半期は394万7000人にまで落ち込んだ。東京五輪・パラリンピックが予定されていた20年は4000万人を目標に掲げていたが、実現は絶望的だ。」というような資料をそのまま発表するだけではダメ。きちんと、批判しないといけない。
「go to」「ワーケーション」で、外国人観光客が入ってくるんですか?
ひとことでいいから、そう質問すべきだ。
こんな疑問さえ嘆かせないとしたら、ジャーナリストではない。
単なる宣伝マンだ。
「ワーケーション」って何?と疑問を投げかけ、批判しているように見せかけて、批判になっていない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする