転売はなぜいけない?
自民党憲法改正草案を読む/番外367(情報の読み方)
2020年07月23日の読売新聞(西部版・14版)の29面(社会面)に、小さな記事が載っている。
「事実」関係は、見出しだけで充分わかる。そして、こういう記事には、おうおうにして奇妙な問題が隠されている。
記事の最後の部分。
もっともらしく聞こえるけれど、この論理でいいのか。
まず、プレミアム宿泊券をみてみる。山口県内のホテル、旅館で利用でき、額面5000円分を2500円で売っている。(個人からいうと5000円分を2500円で買える。)差額は2500円。これは旅行する人の「利益」。
で、その「2500円」をだれが負担し、その「2500円」はだれの手元へ行くのか。県が負担する。これは、すぐにわかる。でも、だれの手元に「2500円」がゆく? 個人(県民)には2500円がもどってくるわけではない。あくまで、それは「割引」。
バーゲンで5000円の服を2500円で買ったとする。2500円は客のもうけに見えるが、もうけではない。2500円損をするのは店。5000円で売るはずが2500円でしか売れずに、見込みが外れた、ということ。それでも2500円で売るのは、「収入」をすこしでも確保するためだろう。
プレミアム宿泊券にもどる。5000円のホテルに2500円で泊まる。(いちばん簡単な例で考える。)ふつうなら、ホテルは2500円の赤字になる。その2500円を県が補助する、というのがプレミアム宿泊券の仕組み。つまり、ホテルの赤字が消える。「補助」というのは赤字にさせないという意味。
ここで、客が、宿泊券を3000円で売る。その券を買ったひとは5000円のホテルに3000円で泊まることになる。このときホテルはいくらの赤字? 2000円の赤字? 違うね。ホテルは宿泊券を提示することで2500円の補助を受ける。券からの補助が減るわけではない。だから、ホテルにとっては、額面5000円の券を、だれが、いくらで購入しようが関係がない。額面5000円の券があれば、2500円の補助が確保できることにかわりがない。
損をするのは、2500円で買える券を3000円で買った個人である。もうけは売った個人である。その「利益」「損失」に、ホテルも県も関与していない。そういうことに県が口を挟むのはおかしい。
単純に考えてみよう。2500円の得(割引)があるなら旅行しようとする人(A)と、2000円の得(割引)でも旅行しようとする人(B)のばあい、2000円の割引でも旅行しようとする人の方が経済的に余裕がある。旅行先で多く金を使うのはBだろう。Aは利益を守るために他の出費を2500円以内におさえようと考えるかもしれない。しかし、Bは出費を2000円以内におさえようなどとは計算しないだろう。いつもより多くつかうかもしれない。そして、この宿泊券は、金持ちに「お得感」を持たせることで、いつもより多く金を使わせようという狙いがこめられているのだから、金持ちが買うなら、それがいくらの値段で売られていようと気にする必要はない。
少なくとも、旅館、ホテルの「宿泊費」に関していえば、旅館、ホテルは、ぜんぜん「損」をしない。そういう仕組みだ。
もし「当てがはずれる」としたら、2000円割安で買ったひとは、おみやげ屋で少し出費をおさえるかもしれない、ということだろう。
こんなところに奇妙な「倫理」めいたものをもちだすことよりも、県がしなければならないことがたくさんあるだろう。「倫理」をもちだして、個人が金儲けをするのは許さないというのは、どうも納得ができない。個人の「転売利益」もまた「経済を動かす(活性化させる)」ひとつの方法だろう。宿泊券を売ったひとは、もうけた「 500円」で何かを買うかもしれない。それが「観光」に結びついていなくても、観光以外の分野で「経済を動かした」ということにかわりはない。
「観光」だけが「経済」、疲弊しているのは「観光業者」だけと考えるのは、観光業者から献金を受けている二階だけなのではないか。逆に言うと、観光が疲弊して、自分に献金が廻ってこない、これは困ったと二階が嘆いたところから、「GO TO トラベル」につながるいろいろなことが動いているだけなのではないか。
そういう二階のような人間の「手先」のような仕事をしている人間が、個人に対して「倫理」をふりかざすな。「倫理」を行政がふりかざすとき、「全体主義」が始まる。そして「全体主義」というのは、「全員が特定の個人の利益に奉仕する」ことである。
#検察庁法改正に反対 #安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位
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自民党憲法改正草案を読む/番外367(情報の読み方)
2020年07月23日の読売新聞(西部版・14版)の29面(社会面)に、小さな記事が載っている。
プレミアム宿泊券/オークション転売/山口県発行
「事実」関係は、見出しだけで充分わかる。そして、こういう記事には、おうおうにして奇妙な問題が隠されている。
記事の最後の部分。
県観光政策課は「新型コロナでで劇を受けた宿泊施設のため、プレミアム分を税金で負担する事業。個人の利益のための転売はやめてほしい」としている。
もっともらしく聞こえるけれど、この論理でいいのか。
まず、プレミアム宿泊券をみてみる。山口県内のホテル、旅館で利用でき、額面5000円分を2500円で売っている。(個人からいうと5000円分を2500円で買える。)差額は2500円。これは旅行する人の「利益」。
で、その「2500円」をだれが負担し、その「2500円」はだれの手元へ行くのか。県が負担する。これは、すぐにわかる。でも、だれの手元に「2500円」がゆく? 個人(県民)には2500円がもどってくるわけではない。あくまで、それは「割引」。
バーゲンで5000円の服を2500円で買ったとする。2500円は客のもうけに見えるが、もうけではない。2500円損をするのは店。5000円で売るはずが2500円でしか売れずに、見込みが外れた、ということ。それでも2500円で売るのは、「収入」をすこしでも確保するためだろう。
プレミアム宿泊券にもどる。5000円のホテルに2500円で泊まる。(いちばん簡単な例で考える。)ふつうなら、ホテルは2500円の赤字になる。その2500円を県が補助する、というのがプレミアム宿泊券の仕組み。つまり、ホテルの赤字が消える。「補助」というのは赤字にさせないという意味。
ここで、客が、宿泊券を3000円で売る。その券を買ったひとは5000円のホテルに3000円で泊まることになる。このときホテルはいくらの赤字? 2000円の赤字? 違うね。ホテルは宿泊券を提示することで2500円の補助を受ける。券からの補助が減るわけではない。だから、ホテルにとっては、額面5000円の券を、だれが、いくらで購入しようが関係がない。額面5000円の券があれば、2500円の補助が確保できることにかわりがない。
損をするのは、2500円で買える券を3000円で買った個人である。もうけは売った個人である。その「利益」「損失」に、ホテルも県も関与していない。そういうことに県が口を挟むのはおかしい。
単純に考えてみよう。2500円の得(割引)があるなら旅行しようとする人(A)と、2000円の得(割引)でも旅行しようとする人(B)のばあい、2000円の割引でも旅行しようとする人の方が経済的に余裕がある。旅行先で多く金を使うのはBだろう。Aは利益を守るために他の出費を2500円以内におさえようと考えるかもしれない。しかし、Bは出費を2000円以内におさえようなどとは計算しないだろう。いつもより多くつかうかもしれない。そして、この宿泊券は、金持ちに「お得感」を持たせることで、いつもより多く金を使わせようという狙いがこめられているのだから、金持ちが買うなら、それがいくらの値段で売られていようと気にする必要はない。
少なくとも、旅館、ホテルの「宿泊費」に関していえば、旅館、ホテルは、ぜんぜん「損」をしない。そういう仕組みだ。
もし「当てがはずれる」としたら、2000円割安で買ったひとは、おみやげ屋で少し出費をおさえるかもしれない、ということだろう。
こんなところに奇妙な「倫理」めいたものをもちだすことよりも、県がしなければならないことがたくさんあるだろう。「倫理」をもちだして、個人が金儲けをするのは許さないというのは、どうも納得ができない。個人の「転売利益」もまた「経済を動かす(活性化させる)」ひとつの方法だろう。宿泊券を売ったひとは、もうけた「 500円」で何かを買うかもしれない。それが「観光」に結びついていなくても、観光以外の分野で「経済を動かした」ということにかわりはない。
「観光」だけが「経済」、疲弊しているのは「観光業者」だけと考えるのは、観光業者から献金を受けている二階だけなのではないか。逆に言うと、観光が疲弊して、自分に献金が廻ってこない、これは困ったと二階が嘆いたところから、「GO TO トラベル」につながるいろいろなことが動いているだけなのではないか。
そういう二階のような人間の「手先」のような仕事をしている人間が、個人に対して「倫理」をふりかざすな。「倫理」を行政がふりかざすとき、「全体主義」が始まる。そして「全体主義」というのは、「全員が特定の個人の利益に奉仕する」ことである。
#検察庁法改正に反対 #安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位
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「天皇の悲鳴」(1000円、送料別)はオンデマンド出版です。
アマゾンや一般書店では購入できません。
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