監督 ナ・ホンジン
出演 ハ・ジョンウ、キム・ユンソク、チョ・ソンハ、 イ・チョルミン、カク・ピョンギュ
原題は「黄海」。中国と北朝鮮と韓国に囲まれた海。中国には朝鮮族の人が暮らしている。経済的な事情で韓国へ出稼ぎに行っている、という事情が背景にある。大事なことなのだろうけれど、まあ、いいか。
主人公の妻は韓国へ出稼ぎに行っている。夫の運転手は、妻が出稼ぎに出国する際の借金返済に追われている。その運転手に殺人の依頼が舞い込む。――ここまでと、主人公が殺人の実行に至るまでがおもしろい。
密出国の過程がリアルで、ほう、「脱北」もこんな感じかな、と思う。船の中で死者が出る、その死者は海へ捨てるというようなことも丁寧に(?)描いている。10日間だったかな、期限ぎりぎりまで主人公が殺害の相手を下見するところが特にいい。狭いアパートを宿にするのだが、その殺風景さがいい。下見のとき、寒さに耐えかねてコンビニでカップめんをすする。その間に、標的の顔を見のがす、という細部がいいなあ。まるで殺人者の気分にひたれる。
ビルの階段の明かりがつくタイミングを計る。予行演習をする。そういう部分も丁寧である。そうか、素人殺人者も、こんなに丁寧に計画を練るのか、と感心してしまう。殺人者になるには根気がいるんだぞ、簡単には殺せないんだぞ、とリアルに教えられる。うーん、教訓的、なんて感心したり。
でもそのあとが一転、荒っぽい。標的は別の殺人者が狙っていた。先に殺されてしまう。これでは金が入らない。で、殺人者を殺し、被害者の親指を切り取る(これが殺した証拠)。そのため別の殺人者の組織、警察に追われることになる。さらには依頼主の組織からも追われるようになる。なんだか、ややこしいのだが、このややこしさをアクションで乗り切ってしまう(ごまかしてしまう)。ここがひどい。前半の丁寧さが台無し。
アクションは包丁、鉈を振るっての壮絶なものだし(みんな携帯電話をつかうのに、銃をつかうのは警官だけ。それも犯人ではなく、警官を誤射してしまう)、カーチェイスは映像にならないくらい乱れる。客観的な場所にカメラがあるのではなく、主人公の視点も混じる。えっ、いまのはどっちの車? 私は目が悪いので、よくわからない。まあ、こんなものは分からなくていいんだろうねえ。ひたすら激しいシーンを撮る――それだけが狙いだね。
こういう映画――実は、アクションシーンではなく、動かない部分だね。男の面構え。これが決め手だ。これは、なかなか、いい。主人公の精悍な感じ、依頼主のふてぶてしさ、別の殺人組織(?)の銀行の社長。三者三様の顔。殺される大学教授(?)もあやしげ。ようするに、演技で見せるというより、役者自身の「過去」(存在感)で映像を引っ張ってゆく。
これはこれで、いいか。
出演 ハ・ジョンウ、キム・ユンソク、チョ・ソンハ、 イ・チョルミン、カク・ピョンギュ
原題は「黄海」。中国と北朝鮮と韓国に囲まれた海。中国には朝鮮族の人が暮らしている。経済的な事情で韓国へ出稼ぎに行っている、という事情が背景にある。大事なことなのだろうけれど、まあ、いいか。
主人公の妻は韓国へ出稼ぎに行っている。夫の運転手は、妻が出稼ぎに出国する際の借金返済に追われている。その運転手に殺人の依頼が舞い込む。――ここまでと、主人公が殺人の実行に至るまでがおもしろい。
密出国の過程がリアルで、ほう、「脱北」もこんな感じかな、と思う。船の中で死者が出る、その死者は海へ捨てるというようなことも丁寧に(?)描いている。10日間だったかな、期限ぎりぎりまで主人公が殺害の相手を下見するところが特にいい。狭いアパートを宿にするのだが、その殺風景さがいい。下見のとき、寒さに耐えかねてコンビニでカップめんをすする。その間に、標的の顔を見のがす、という細部がいいなあ。まるで殺人者の気分にひたれる。
ビルの階段の明かりがつくタイミングを計る。予行演習をする。そういう部分も丁寧である。そうか、素人殺人者も、こんなに丁寧に計画を練るのか、と感心してしまう。殺人者になるには根気がいるんだぞ、簡単には殺せないんだぞ、とリアルに教えられる。うーん、教訓的、なんて感心したり。
でもそのあとが一転、荒っぽい。標的は別の殺人者が狙っていた。先に殺されてしまう。これでは金が入らない。で、殺人者を殺し、被害者の親指を切り取る(これが殺した証拠)。そのため別の殺人者の組織、警察に追われることになる。さらには依頼主の組織からも追われるようになる。なんだか、ややこしいのだが、このややこしさをアクションで乗り切ってしまう(ごまかしてしまう)。ここがひどい。前半の丁寧さが台無し。
アクションは包丁、鉈を振るっての壮絶なものだし(みんな携帯電話をつかうのに、銃をつかうのは警官だけ。それも犯人ではなく、警官を誤射してしまう)、カーチェイスは映像にならないくらい乱れる。客観的な場所にカメラがあるのではなく、主人公の視点も混じる。えっ、いまのはどっちの車? 私は目が悪いので、よくわからない。まあ、こんなものは分からなくていいんだろうねえ。ひたすら激しいシーンを撮る――それだけが狙いだね。
こういう映画――実は、アクションシーンではなく、動かない部分だね。男の面構え。これが決め手だ。これは、なかなか、いい。主人公の精悍な感じ、依頼主のふてぶてしさ、別の殺人組織(?)の銀行の社長。三者三様の顔。殺される大学教授(?)もあやしげ。ようするに、演技で見せるというより、役者自身の「過去」(存在感)で映像を引っ張ってゆく。
これはこれで、いいか。
チェイサー [DVD] | |
クリエーター情報なし | |
角川書店 |