古書店に注文してあった本が届きました。
アーロン・アントノフスキー『健康の謎を解く――ストレス対処と健康保持のメカニズム』(山崎喜比古・吉井清子訳、有信堂 2001年)。
昨今のストレスフルな状況をいかに乗りきるか。考えるほどに「SOC(Sense of Coherence)」が重要になる気がしてなりません。日本語にすると「首尾一貫感覚」。
おもに保険・医療の分野で用いられている言葉のようで、ユダヤ系アメリカ人のアーロン・アントノフスキーという人が1980年前後から唱え始めた健康生成論の概念です。
健康生成論とは、人が病気になる原因を考えるのではなく、不健康に陥らない原因を探ろうという、医学的、心理学的、社会学的アプローチ。
戦前に生まれ、第二次大戦を生き抜き、戦後イスラエルにたどりついた婦人たちの健康状態を調べたアントノフスキーは、中でも、ナチスの収容所体験がある人と、そうでない人との違いに注目しました。そして、収容所体験のある人の7割が健康に問題を抱えていることを知ったのです。これは、そうでない人たちの5割という数字に比べ、かなり高い。やはり収容所体験は過酷で、後の人生にも影を落としていたのです。
この事実を見たアントノフスキーは、しかし、逆に3割の収容所体験者たちが健康を保っていることが重要だと考え、何がそれを可能にしたのかを調べました。そしてSOCという概念にたどり着いたのです。
SOC(Sense of Coherence:首尾一貫感覚)とは、彼女たちが抱いている「確信」の内容を3つにまとめたもので――
- 把握可能感 : ものごとは説明がつくものだ
- 処理可能感 : 出来事に対処できる
- 有意味感 : 生きることには価値がある
といった要素からなっています。
以上の内容はウェブや概説記事で得たものですが、できれば元の論文に当たって勉強したい。
普段なら図書館で借りて読むのですが、閉館中で借りることができない。というか、そもそも我が街の図書館にも隣町の図書館にもこの本はないのです。都立図書館にならありますが、いずれにせよ、すぐに読むことはできない。さいわい「日本の古本屋」さんで1冊だけヒットしたので注文しました。
これから時間を見つけてじっくり読んでゆきたいと考えています。
コロナ禍で先が見えない時代を乗り切るのに、収容所を生き延びた人たちの知恵はきっと役に立つはず。SOCを身につけるためには、私たちはどう考え、どう行動すればよいのか。それも考えてゆきたいと思っています。