惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

「鳩時計スピーチ」

2020-05-05 21:05:43 | 映画

 今朝もイチゴが1~2個、消えているような気がしましたが、どこにどれだけあったのか、記憶がはっきりしないのでよくわかりません。もう少し、見てみなくては。

 今日は長ネギの植え付けをしました。2月の始めに種蒔きし、苗の丈が30センチ近くになったので。

 昨年と同じく、板を利用しての密植栽培。育てた苗、約40本と、再生苗(料理に使ったネギの根を埋めて、芽を出させたやつ)を15本ほど(いちばん手前の列)。
 収穫まで7か月ぐらいかかるでしょうか。葉っぱを食べる野菜なのに、ネギは特別、時間がかかります。

 永年、〈ニューヨーカー〉誌を中心にノンフィクションを書いてきたジョン・マクフィーさんの『ノンフィクションの技法』(栗原泉訳、白水社)に出てくる同誌の校閲が凄いことは軽く触れました。
 正しくは「校閲部」ではなく「事実確認部」というのだそうです。同誌に載る記事に出てくる事実関係が正しいかどうか、すべての事項を、ありとあらゆる手段で確認し、可能な限り間違いを排除するのが、その任務。マクフィーさんは、確認出来なかった数字を適当に記して原稿を渡すこともあったとか。事実確認部が正確な数字を調べ出してくれるので、それを当てにしてのことです。こうなると単なる校閲ではなく、調査担当助手のような役割ですね。

 えっ! と驚くようなエピソードも。
 事実確認部のリチャード・サックスという担当者と組んでスイスに関する記事の仕事をした時、マクフィーさんたちはキャロル・リード監督の映画『第三の男』中の有名なセリフが、グレアム・グリーンの書いた脚本にも、後にグリーン自身がノペライズした作品にも登場しないことを発見したといいます。
 そのセリフは、オーソン・ウェルズが扮する主役ハリー・ライムが、友人と観覧車に乗った後で言う、次のようなもの(本書に載っているものをそのまま引用します)――

イタリアではボルジア家が権勢をふるった三〇年間、戦争やテロ、殺人や流血が絶えなかった。だが、ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチやルネサンスが生まれたんだ。スイスはといえば、兄弟愛と民主主義と平和が五〇〇年続いた。それで何が生まれたって? 鳩時計さ。

 英語では

You know what the fellow said - in Italy, for thirty years under the Borgias, they had warfare, terror, murder and bloodshed, but they produced Michelangelo, Leonardo da Vinci and the Renaissance. In Switzerland, they had brotherly love, they had five hundred years of democracy and peace – and what did that produce? The cuckoo clock.

 映画の場面はYouTubeで。

 なぜグレアム・グリーンの書いたものにはこのセリフがなかったのか? オーソン・ウェルズの即興だったというのです。

 英語版のウィキペディアで『第三の男』の項を見てみると、このセリフは現在、出版されている脚本には脚注として載っているようです。ただし、ウェルズのオリジナルというより、古いハンガリーの演劇から引用したとウェルズは言っているとか。"what the fellow said"という最初のひと言がそれを表わしていますね。ウィキペディアの記述はさらにその原典にまで分け入っていて、なかなかに興味深い。

 ここまで明らかになっている「鳩時計スピーチ」問題のきっかけをつくったのが、マクフィーさんと〈ニューヨーカー〉誌の事実確認部だったということなのでしょうね。



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