金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

サーム・ルールは景気後退を示唆しているが・・・・

2024年08月05日 | 投資
 このところの日本株の下げは激しいですね。グーグルファイナンスで見ると過去1カ月の間に日経平均は16.3%下落しています。ダウは0.92%の上昇となっています。
 今回の日米の株価下落の最大の要因はアメリカの景気後退懸念ですが、アメリカの株価下落を上回るペースで日本株の下落が起きていることを見ると、海外投資家などが年初来、利益が出ている資産を売却する動きを強めている気がします。
 昨今新NISAなどで投資を始められた人の中には必要以上に不安を感じている人がいるかもしれませんが、私自身はそれほど慌ててはいません。それは今年の前半に人工知能ブームでアメリカのチップメーカーなどの株価が相場を押し上げ過ぎていたからです。
 つまり株価は実力以上に高い値段で買われていたため、調整が必要だったのだと考えています。
 そのきっかけの一つが、政策金利引き下げを見越した先月起きたハイテク銘柄から出遅れ銘柄や小型株へのローテーションです。
 そして先週発表された雇用統計などの経済指標の悪化がリセッションを示唆しているという投資家の恐れからくるリスク回避の動きです。
 WSJには「サーム・ルール」の話がでていました。これは経済学者クラウディア・サーム博士によって考案された景気後退を予測する指標で「直近3カ月の失業率の平均が、過去12カ月の最低失業率を0.5%以上上回った時、景気後退に入ったと判断する」というものです。先週発表された雇用統計により、過去3カ月の平均失業率は4.13%でこれは昨年の最低水準3.6%を0.5%以上上回ったので統計的に景気後退に入ったと考えた人がいたということです。
もっともこの統計的な法則を発見したサーム博士自身「経済がただちに景気後退の瀬戸際にあるとは考えていない」(WSJ)そうですから、天変地異が起きるほど驚くことはないでしょう。
 楽観的なことをいう訳ではありませんが、大統領選挙の前にリセッションが起きると現職の大統領が不利になる傾向が強いということですから、民主党政権としては、リセッション回避のために何か手を打つ可能性があるのではないか?と私は考えています。
 それに7月の雇用統計はハリケーンの影響で弱い数字がでているという見方もありますからもう少し全体を見渡した方が良さそうです。
 いずれにせよ今年の前半飛ばし過ぎた反動がきていることは間違いありませんね。
 
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連銀の利下げ確実視で米国株は上昇、激動の月を締めくくったが・・・

2024年08月01日 | 投資
 昨日米連銀は政策金利を据え置いたが、インフレ率の低下が続けば9月に利下げする用意があることを示唆した。これを受けて主要3指数は大幅に上昇した。
 月間を通じてはダウは4.4%,S&P500は1.1%上昇し、ナスダックは0.8%
下落した。
 この状況をWSJは A broad-based rally sweeps markets Wednesday, ending a turbulent month「水曜日の広範な上昇相場が市場を席巻し、激動の月が終わった」と表現していた。
 ただしこれはドル・ドル投資を行っているアメリカの投資家の話で、円投で米国株に投資いている日本人投資家にとっては、急速な円高で月次ベースでは大幅な資産の目減りが起きた。
 先月日本は総額5.5兆円(368億ドル相当)の為替介入を行って円安を阻止した。また昨日日銀は政策金利を0.25%程度に引き上げた。なおロイターによると日銀内には経済・物価情勢が順調に進めば来年度にかけて政策金利を1%まで引き上げておくのが望ましいという声もでているようだ。
 さて日本の金融政策を正常化するということを考えると利上げだけではなく、日銀による国債やETFの買入がどうなっていくのかということも視野に入れる必要がある。
 日本からの米国株投資あるいは日本株投資については、まだまだ激動の月は締めくくっていないようだ。

 
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マイクロソフト、増収増益ながらクラウド部門が予想に届かず株価下落

2024年07月31日 | 投資
 昨日(7月30日)マイクロソフトの4半期決算が発表された。全体的は収益は残念同期比15%増の647億ドルで、純利益は10%増の220億ドルだった。
 悪くない決算内容だと思うが、一部の投資家が着目したのは、AI事業の中心であるAzureクラウド部門の収益が29%増加に留まった点だった。これは禅四半期の31%増を下回り、FactSetによるアナリスト予想30%増を若干ながら下回った。
 このクラウド部門の増収率が鈍化していることが、AI事業の成長鈍化の代理指標となり、投資家の売りを招いた。同社株は決算発表の前に1%下落し、決算発表後の場外取引では一時6%下落したが、最終的には3%下落まで値を戻した。
 マイクロソフトの株価は今月初旬につけた467ドルから昨日の422ドルまで急速に値を下げた。
 最大の原因は、年初来高いパフォーマンスをあげてきた情報通信産業株を売って、出遅れ株や小型株を買うローテーションの波に押されたことが原因だ。
 クラウド部門のわずかなカゲリに焦点が当たったのもこの流れに一環だろう。

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9月の政策金利引き下げ可能性は90%

2024年07月27日 | 投資
 昨日(7月26日)米国商務省が発表した6月の個人消費支出インフレ率は、事前予想どおり前年比2.5%だった。また食糧・エネルギーを除いたコアインフレ率も予想どおり2.6%だった。
 連銀金利を予想するFedWatchツールによると、9月に連銀が政策金利を0.25%引き下げる見込みは90%で変わらないが、今月政策金利を下げるだろうという予想は1週間前の4.1%から6.7%へ若干増加した。
 株式市場ではこのインフレ統計に加えて、今週は売られ過ぎたというセンチメントも広がり、大幅に反発した。ダウは1.64%、S&P500は1.11%、ナスダックは1.03%上昇した。
 
 

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株式市場と雇用市場を支えた力学が変わりつつある

2024年07月25日 | 投資
 昨日(7月24日)米国株は大きく下落した。下げ幅が大きかったのは、ナスダックで3.6%下落した(ダウは1.2%,S&P500は2.3%下落)。WSJによるとナスダックが3%以上下落したのは400営業日ぶりということだ。
 下落の引き金は、テスラとアルファベットの決算が投資家の失望を招いたことにあった。
 アルファベットの決算については、事前予想を若干上回ったものの、AIに関する投資が投資家の懸念となった。
 そうじて「マグニフィセントセブン」と呼ばれる今年前半の相場を牽引したIT大手企業の決算に対する見方厳しい。
 WSJはLittle Harbor Advisorsのポートフォリオマネージャーの「事前予想を達成するだけでは駄目で事前予想を上回らないといけない」という言葉を紹介している。これまで買い進まれて割高になっているIT大手については、高い株価を正当化するより良い決算が求められている訳だ。
 投資家はこれから発表されるNvidiaやマイクロソフトの決算を固唾をのんで見守っているだろう。
 ところで今朝読んだWSJではThe Hottest Job market in a generation is over「一世代で最も熱い雇用市場は終わった」という記事が気になった。
 記事は「何百万人もの労働者が新しい仕事を見つけ、賃金が上昇し、キャリア再開発の道が広がっていた雇用市場は、より平凡な時代にとって代わられるつつある」と述べる。
 先月の失業率は4.1%に上昇し、2021年以来初めて4%を超えた。歴史的な尺度でみると失業率はまだまだ低い水準だが、労働者は猛烈なペースで仕事を辞めなくなり、求人倍率はコロナ前の1.2倍という水準に戻ってきた。
 この記事の中にEconomists say the historically unusual dynamics that caused the boom—an economy that shut down and then roared back to life during a pandemic—were always going to be fleeting. という一文があった。
 「経済学者たちは、ブームを引き起こした歴史的にみて異常な力学は、常に束の間のものだった」ということだ。
 パンデミックで収縮する経済を支えるための金融緩和、大規模な財政支援、過剰すぎた在宅勤務、それを支えたIT機器やサービス、世界的なサプライチェーンの綻び、世界的な人手不足等々で生まれた大きな力がノーマルな状態に戻りつつあるということだろう。
 その視点で株価と雇用に関する記事を読むと、世の中がパンデミックが生み出した異常な力学の世界からそれ以前の世界に戻るなかで、何が起きようとしているのかある程度予想が付いてくるのではないか?
 米国株で起きているセクターローテーションもその文脈で見るとまともな投資行動なのかもしれない。
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