金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

9月の雇用統計~消費が支えた雇用拡大で米国株躍進

2024年10月05日 | 投資
 昨日(10月4日)発表された米国の雇用統計は、事前予想を大幅に上回る強いものだった。
 9月の非農業部門雇用者増は、予想150千人を大きく上回る254千人だった。また7月および8月の雇用者数は、各々55千人、17千人合計72千人上方修正された。失業率は8月比0.1%低下して4.1%になった。
 時間給は0.4%アップ年率では4%上昇した。
 株式市場は、労働市場の堅調さを素直に好感し、S&P5000.9%、ダウ0.8、ナスダック1.2%上昇した。ダウは高値更新である。
 雇用市場の堅調さが確認されたことで、2つの予想が広がった。一つは「連銀が当面0.5%という大幅な利下げは行わない」という予想だ。
 もう一つは「堅調な経済は、大統領選挙において、経済政策では見劣りするハリス民主党候補にプラス材料だ」という見方だ。だが大統領選挙については、投票日までまだ1カ月あるので、どのようなサプライズがあるかわからない。好調な労働市場は、バイデン大統領の後継者であるハリス氏に有利なことは間違いないだろうが、決定打というほどではないだろう。
 ところで9月の雇用市場を牽引したのは、「レジャー・飲食」部門、ヘルスケア部門、政府部門で、製造業等では若干の雇用減があった。
 また7月、8月の雇用者数が上方修正されたことをみても、個人消費に直結するレジャー・飲食部門が極めて好調なことを示している。高金利環境にも関わらず、米国の消費者は全体としては財布の紐を締めなかったということだ。
 もちろん消費が活況を続けた背景には、株高の持続という資産効果もあった。
 今回の雇用統計で、米国経済がリセッションを経ることなくインフレを終焉させるソフトランディングに向かうという見込みが高まったと思う人は多いだろう。ドル円為替レートでは148円台後半までドル高が進んだ。素直を考えると米株高と合わせて週明けの日本株は急騰する可能性が高い(日経平均先物は1千円上昇している)。
 石破新政権にとっては、追い風になるだろう。まったく新政権の顔触れや政策と関係のない米国の消費者がレジャーにお金を費やした結果なのだが。
 
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ダウ高値更新、9月はアノマリーを打破してプラスで終わるか?

2024年09月28日 | 投資
 昨日(9月27日)のダウは137ポイント上昇し、高値を更新した。S&P500とナスダックは下落したが、月間を通じては3指数とも2%程度の上昇となっている。昨日ダウが好調だったのは、FRBが8月の個人消費支出価格指数(PCE)の年率換算上昇率がエコノミスト予想2.3%を下回る2.2%だったことによる。
 PCEは連銀が好むインフレ指標で、PCEの低下で連銀が自信を持って追加利下げを行うだろうという見方が、トレーダーの間で広がったようだ。
 なおナスダックについてはNvidiaの2%安が重荷となった。
 9月は残すところ30日1日だけとなった。
 9月は歴史的に米国株のパフォーマンスが悪い月だが、今年はプラスで終わるだろう。これはインフレの鈍化が明確になり、連銀が政策金利を0.5%引き下げたことが大きい。
 昨日テレビで、自民党総裁選の様子を見ながら、時々ドル円為替相場にも目をやった。
 高市氏が1回目の投票でトップに立つと急速に円安に振れた。これはアベノミクスを継承する高市氏が首相になると、政策金利の引き上げに反対するという思惑が働いたからだ。その後決選投票と石破氏が新総裁に選ばれると円高が進んだ。石破氏は政策金利の引き上げを支持するだろうという思惑による。
 為替相場というものは、このようにちょっとした思惑で動く。
 短期的な為替相場は、博打に近く、長期的な資産形成には適していない。
 一方長期的なビューを持った米国株投資(為替ヘッジなし)は、長期的な資産形成に適した投資だと思う。それは株式投資が基本的には経済成長にかける投資だからだ。石破新首相の下で日本経済が活性化することを願う。
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連銀、政策金利を0.5%引き下げ。株価の下落は「事実の売り?」

2024年09月19日 | 投資
 昨日米連銀は、政策金利の0.5%引き下げを発表した。4年ぶりの利下げで、これで翌日物貸出金利は4.75%-5.00%のレンジになる。
 市場参加者の間では、数日前まで伝統的な0.25%の金利引き下げを予想する人が多かったが、WSJの記事の影響などで直近では、0.5%の引き下げを期待する人が増えていた。
 そういう意味では、市場が期待していたとおりの利下げになった訳で、利下げ発表後ダウは375ポイント上昇したが、その後下落し前日比103ポイント安で取引を終了した。
 S&P500とナスダックも小幅下落した。
 私はまったくの個人的直観として連銀はまず0.25%の金利引き下げを行うのではないか?と考えていた。その理由は0.25%の金利引き下げであれば、万一インフレがぶり返した場合、金利政策の転換が容易だが0.5%の引き下げを行うとそれが難しくなるだろうというものだった。
 しかし連銀は0.5%の金利引き下げに踏み切った。これはインフレが連銀目標の2%に収束していくことは確実な一方金利が高止まりすると、雇用市場に悪影響を与えると判断したことによる。
 雇用市場が減速していることは、データであきらかだが、どの程度深刻なものなのかは判断が分かれるところだろう。
 連銀が0.5%金利を引き下げたことから、連銀は景気が悪化するリスクが高いと判断すれば、株は下落する。
 さてそのような思惑から株が売られたのだろうか?あるいは相場の「噂で買って事実で売る」という格言に従って株が売られたのだろうか?
 それはよく分からないが私は「連銀が政策金利を引き下げる」という予測で株を買っていた人が、引き下げ発表という事実で売った面があると考えている。いずれにせよ、1日の動きで今後のトレンドを予想することはできない。
 しばらく市場参加者の関心は、今後連銀はどれ位政策金利を引き下げるか?ということに移っていくだろう。
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ウォール街、利下げ前に神経質になっている

2024年09月16日 | 投資
 今朝(9月16日)目にしたWSJの記事のタイトルは、Wall Street tyrns skittish on eve of rate cutsだった。
 人工知能(モニカ)で和訳すると「ウォール街、利下げ前夜に不機嫌に」と出てきた。Skittishを不機嫌と訳すのはこの場合ピンとこないので、DeepLにも聞いてみた。こちらの訳は「ウォール街、利下げ前夜に神経質になる」
 こちらはしっくりくる。モニカ(使ったエンジンはおそらくChatGPT)の訳がよいかDeepLの訳が良いかについては議論している人もいるだろうが、私は勝ったり負けたりではないか?と思っている。ただこの場合はDeepLに軍配があがったが。
 さて今週半ば18日には、米連銀で2020年以降初めての政策金利の引き下げが決定される。利下げはほぼ既定路線で、問題は引き下げ幅だ。
 WSJによるとトレーダーの間で利下げ幅が0.25%か0.5かはほぼ拮抗している。
 またこの記事によると、景気見通しについて債券市場と株式市場では見方が分かれているそうだ。
 金利デリバティブのトレーダーは、来年末の政策金利水準を2.75%程度とみているが、これは0.25%の利下げを10回行うことに相当する。このような連続的な利下げは、連銀がリセッション対応としてのみ行う可能性が高い訳だから、債券市場はリセッションに陥る可能性が高いとみているということになる。
一方株式市場はもっと楽観的だ。固定利付債は、市場金利が低下すると価格が上昇する。基本的に債券投資家は、金利低下つまり景気の減速を歓迎する傾向がある。一方株式投資家は景気の上昇を期待するので、二つの投資家のビューが対立するのは、自然なことかもしれない。
 私自身は、今月の連銀の利下げ幅について、特別な判断材料を持ち合わせないが、大幅な利下げを予想する人の一つの根拠は、クレジットカードや自動車ローンの延滞が増加していることだ。これは低所得消費者層にストレスがかかっている兆候だ。
 しかしこの点を強調して、最初に大幅な利下げを行うと、市場に「連銀はリセッションリスクが高いと判断している」というメッセージを送ることになる可能性がある。
 したがって漠然とではあるが、今月の利下げ幅は0.25%かな、私は感じている。
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米インフレ5カ月連続で鈍化。とこれでインフレは誰の責任なのか?

2024年09月12日 | 投資
 昨日(9月11日)米労働省が発表した8月のインフレ率は2.5%で5カ月連続で低下した。ちなみに7月のインフレ率は2.9%で、WSJによる事前予想は2.6%だった。
 ただし食料品・エネルギーを除くコアインフレ率は3.2%で先月と変わらなかった。
 住宅関連費用の高止まりで、コアインフレ率が事前予想を若干上回ったことから、今月のFOMCで0.5%の政策金利引き下げの見通しが後退したことから、朝方株は大きく売り込まれた。しかし午後にはハイテク銘柄の反発などにより相場は反転し、S&P500は1%強上昇した。ナスダックは2.1%、ダウは0.3%上昇した。
 昨日の大きな出来事は、大統領選挙のテレビ討論会だった。CNNの世論調査によると討論会を視聴した有権者のうち、民主党のハリス副大統領が「勝利」と答えた人が63%、共和党のトランプ前大統領が「勝利」と答えた人は37%だった。
 さてインフレの問題は、大多数の無党派層にとって最大の関心事で、トランプ氏もインフレはバイデン政権の失政の結果であり、ハリス副大統領にもその責任があるという趣旨の主張を繰り返している。
 少し経済に詳しい人であれば、このような単純な議論には組しないだろうが、インフレが沈静化する中で、米国のインフレの原因は何だったのか?ということを見ておきたい。
 おそらく最大の原因は「コロナショック後、経済活動が急速に回復する中で、急増する需要にサプライチェーンの混乱や労働力不足により、供給が追い付かず価格上昇圧力が生じたこと」だ。
 また「コロナ危機に対応するため、連銀が大規模な金融緩和政策を実施したことで市場に大量の資金が供給されたこと」もある。
 また「政府がコロナ禍で疲弊する経済を支えるため大規模な財政支出を行い、消費者の購買意欲が高まり、需要を押し上げたこと」もある。
 また「コロナ禍で労働市場に大きな変化が起こり、人手不足が生じ、賃金上昇が加速したこと」も原因だ。
 これらの原因を総て現政権の失策のせいだとするのは、無理がある。
 しかしインフレの原因を深く考えない多くの有権者にとっては、おそらく「目の前でモノの値段が上がり続けているかいないか?」で、現政権の政策の良し悪しを判断するのではないだろうか?
 つまり大統領選挙が行われる11月初旬にインフレ沈静化がさらに顕著になっているかどうかが民主党政権に対する評価につながり、大統領選挙に影響を与えることになる。
 経済学的に政治の責任を議論するのであれば、財政支出規模の妥当性を議論するというところだろうが、もちろんテレビ討論会ではそんな冷静な話はでなかった。


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