金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

長引く米政府機関閉鎖、買い場と見るか続落と見るか

2013年10月03日 | 株式

昨日(10月2日)日本株は米国政府の部分閉鎖の影響で円高が進行したことなどから、大きく売り込まれ、日経平均は314.23ポイント2.16%の下落で、14,170.49ポイントとなった。

米国ではダウが58.56ポイント(0.4%)ダウンして15,133.14ポイントとなった。ダウは早い時間帯では147ポイント下落する場面もあったが、ハリー・リード上院議員が下院共和党に交渉を申入れたことを受けて、下落幅をかなり取り戻した。

経済統計としては、ADPが発表した9月の民間企業の雇用増は166千人で市場予想の178千人を下回った。ADPの統計は市場が一番注目している毎月最初の金曜日に発表される雇用統計、特に非農業部門雇用者増の先行指標的な役割を果たすと考えれているから、予想を下方修正するエコノミストが出るかもしれない。

だがそれよりも問題は政府機関の閉鎖が続くと、雇用統計が予定どおりに発表されない可能性が高まっていることだ。今米国連銀は雇用統計というバックミラーを見ながら金融政策の舵取りを行っているが、そのバックミラーが突然曇ってしまうリスクが高まっている。

過去の例では議会の衝突による予算交渉の行き詰まりで、株価が下落した後、妥協案が成立すると株価が反発した例が多かったので、恐らく最初の日(10月1日)の米国市場では買いが入った。しかし日本株の下落や長引きそうな政府機関閉鎖に対する懸念などから昨日は売られたというところだろうか?

さて短期間に妥協点が見いだせるかどうかについて私は明確なビューを持っている訳ではないが、余り楽観的には考えていない。というのは9月下旬に行われたピューリサーチ社の「政府機関の閉鎖が起きた場合誰が非難されるべきか?」という質問に対する回答は共和党39%、オバマ政権36%、双方17%と拮抗していた。つまりガチンコ勝負で引くに引けない感じなのだ。

昨日のシカゴ先物市場では日経平均先物はほとんど動かなかった。今日の東京市場は昨日下げ過ぎたので少しあげるのではないか?と私は判断している。ただしここがdip in buyのチャンスなのか偽りの夜明けなのかはまだ分からないが。

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米国株、今年最長の連続下落、でもまだ余裕が・・・

2013年09月26日 | 株式

昨日(9月25日)も米国株は下落した。これでダウは4日連続、S&P500は5日続けての下落だ。5日続けての続落は今年一番のスランプだが、市場参加者のコメントを見ると、それほど慌てている様子はない。

先週連銀がテーパリングの先延ばしを発表した後、S&Pは1,725.52ポイントの最高値をつけた。その後2%弱下落しているが、第三四半期全体では5.4%上昇しているし、年初からでは19%も上昇しているので、まだ余裕ありというところだろう。

既に投資家は株高を見越して大量の資金を投入しているので、しばらくは株式市場への大きな資金流入は期待薄、というのが専門筋の見方だ。

昨日の悪材料としては、ウォールマートが大量の売れ残り在庫を抱えたので、サプライヤーへの注文をカットしたというニュース(後でウォールマート社は、ブルンバーグに流れたニュースは誤報だと否定したが)で同社株が売り込まれたことや連邦議会での歳出をめぐる協議難航で投資家の間に連邦政府の一時的閉鎖懸念が高まったことだった。

ただし協議難航はヘルスケア(オバマケア)法案への大統領署名を遅らせようとする駆け引きで、連邦政府が長期にわたる閉鎖に追い込まれる可能性は低いというのが大方の見方だ。

経済統計では、8月の耐久消費財受注は、0.1%と若干増加(7月は8.1%の減少)。また商務省が発表した航空機を除くコア資本財は1.5%の伸び(市場予想は2%)。

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信託銀行は優良企業を選別できるか?

2013年08月10日 | 株式

日本株相場は足踏みが続いている。お盆シーズンは相場がダレる時だし、今年前半の上昇が急だったのでお休みと見れば慌てることはないのかもしれない。

だが相場全体が大きく上昇する局面は当分こないだろうと私は考えている。アベノミクスの三本目の矢、つまり経済成長戦略を本気で追求していくならば、優勝劣敗の企業淘汰が行われるはずである。心ある株主は資本効率の高い企業に投資を振り向けることになり、優良企業の株価は上昇するが、それ以外の企業の株価は低迷する。

WSJを見ていると、三井住友信託銀行の小田誠志株式運用部長が「どの会社が企業価値を高めるために投資を行うのが、ファンドマネージャーの仕事だがこれまで十分責務を果たして来なかった。だがそれは機関投資家の努めだと思う。」とWSJのインタビューで述べていた。

小田氏はまた「中核業務にフォーカスする会社と適切な時期に自社株買を行う会社にもっと資金を投資したい」と述べている。小田氏個人としての投資スタンスは世界市場での競争力があることから、自動車とインフラエンジニア企業を選好すると述べていた。また銀行や小売業も内需拡大の追い風を受けるので強気と考えているということだった。

小田氏は約1年前FTのインタビューで「日本企業の幹部は株価にそれほど注意を払っていない。なぜなら彼らは役員報酬を現金で受け取るからである。企業の役員会は外部の金融の専門家の意見より社内意見を尊重する傾向があり、役員会の決定が投下資本の極大化に必ずしも合致するものではない」と述べていた。

因みに1年前はTOPIXが米国S&P500に対して8年ぶりの低水準に近づいていた。円高要因もあるが、基本的に日本企業が株主利益を軽視するということで世界の機関投資家が日本株を敬遠していたと見るべきだろう。

私は約10年ほど前ある信託銀行で企業年金業務に関わっていたことがあるが、その時の株式運用の基本方針はパッシブ(市場連動型)運用だった。パッシブ運用では企業価値の判断を行わない。企業価値は市場が判断する、という立場を取っている訳だ。

だが市場とは何なのだろう?市場とは個々の投資家の人気投票の場である。投資家は美しい会社を選ぶのではない。自分たちの利益を大切にする企業を選ぶのである。大口票を持つ機関投資家の責任は大きいはずだ。

企業年金の運用を行う信託銀行など機関投資家が、積極的に企業の投資価値を判断し、優勝劣敗の判断を下して来なかったことが、日本の株式市場の低迷を招いた一つの原因というと言い過ぎだろうか?

機関投資家が優良企業(資本効率の高い企業)を選別する努力を高めるかどうかが、今後の日本株市場の一つの重要なポイントだろう。

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暑い夏来い、日本電産も熱い

2013年08月03日 | 株式

日本電産の株を買ったのは2年前。小型モーターの世界トップ企業と永守さんの経営力に期待していたのだが、株価は下がる一方だった。昨年暮れ頃からはアベノミックスに乗って株価が回復してきたが、先月から業績予想の引き上げを受けて株価の急上昇が続いている。

現在の株価は8500円ほどだが、SMBC日興証券は目標株価を11,000円に引き上げた。

業績予想引き上げの一つの理由はエアコン向けモーターの拡販を織り込んだことだ。省エネ規制の強化で、同社のブラシレスDCモーターの需要が高まっている。エアコンは白物家電の中では成長性が高いといわれている商品だ。

東京はここ数日曇りがちで気温はそれほど上がらなかったが、今日から暑くなりそうだ。風が吹けば桶屋が儲かるではないが、熱い夏がくれば日本電産の株価があがる。

私はブログであまり個別株のことを書かない。個別株の選別力に優れているとは思わないし、個別株の選別力(専門的にはアルファと言ったかなぁ)を運用の主眼とはしていない。日本電産についても、たまたま成長神話の有名銘柄だった(過去形)から、持ってみただけの話である。

HDD向けモーター需要の低迷などで業績はぱっとしなかったが、同社得意のブラシレスモーターに省エネ規制強化という追い風が吹いた。省エネは今後の大きなな投資テーマだが、メリットを受ける企業は色々なところにある、という一例だと感じた次第だ。

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ディフェンシブがディフェンシブでない米国株

2013年07月02日 | 株式

株式投資でディフェンシブといえば、景気循環に左右されにくい生活必需品などの銘柄を指す。伝統的にはこれらの銘柄は、上昇相場では上昇速度が遅いかわりに、下げ相場でも下落速度が緩やかであると考えられている。つまりベータが小さいのである。

ところが米国では今年の上昇相場で、この伝統と異なる現象が起きていた、とWSJの記事Defensive stocks won't shield investorsは語っている。記事によると、年初から5月21日(バーナンキショックの前日)までの、市場平均1S&Pの上昇率は17%で、ディフェンシブセクターの加重平均指数の上昇率は19.2%だった。また従来上昇速度が市場平均より高いと思われた景気敏感株指数の上昇率は16.4%にとどまった。ディフェンシブ銘柄は上昇度合いが大きかっただけ、下落割合も大きく、バーナンキショック以降3.9%下落。一方景気循環株の下落は3%だった。どうしてこういう奇妙な現象が起きたのかというと、多くの投資家が景気先行き懸念から、ディフェンシブ銘柄を集中的な買ったことから、ディフェンシブ銘柄が割高になったということのようだ。

ちょっと日本株について考えてみた。昨年10月末から昨日までの間に、日経平均は55%上昇している。この間に一般的にはディフェンシブ銘柄(消費必需品、ヘルスケア、通信、電気・ガスなど)の一つと思われる携帯電話については、ドコモの上昇率が31%強、ソフトバンクは130%、KDDIは55%だった。

海外M&Aやiphoneでシェアを伸ばすソフトバンクの勢いがドコモを圧倒するなど、同じ通信の中でもパフォーマンスの差は大きい。あるいは携帯電話を「通信」のカテゴリーでとらえることが視野を狭めるのだろうか?スマホで音楽を聞き、ゲームを楽しみ、本を読み、テレビも見る・・・時代を改めて考える必要があるのだろうか?

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