詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

谷本州子『綾取り』

2006-04-08 23:07:26 | 詩集
 谷本州子『綾取り』(土曜美術社)。
 耳のいい詩人だ。「握飯」は農家の夕暮れ時を描いている。幼かった詩人と二人の妹。農作業から帰ってくる母を待ちかねて「おなかが空いた」と訴える。母親が急いで「握飯」をつくってくれる。

 じき夕飯やのに
 躾がなっとらん
祖母のいつもの小言を
蜩が茶化した
 ええやないかな かなかなかな
 ほっとかんかな かなかなかな

 この瞬間、ここには書かれていない情景が見える。「蜩」のことばは本当は父か母がもらした声なのだろう。「ええやないかな、ほら蜩も言ってるぞ、ええやないかな、かなかなかな」という具合に。そこに働くことに懸命なだけの父、母とは少し違った父、母がいる。わが子を愛する父と母がいる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする