谷川俊太郎「こころ」再読(4)
3連目の「さいころ」がとても楽しい。「こころ」という音には「お」の音が多い。そしてこの詩も「お」の音が多い。「ころん」「ころころ」「よろよろ」「ごろごろ」「とろとろ」「ころり」「のろのろ」「そろそろ」。みんな子音+「お」で始まる。「さいころ」だけ「あ」の音で始まる。
この音楽はどこからくるのだろう。
この「さいころ」の異質な感じは、これまで私が「矛盾」と呼んできたものと似ているかもしれない。異質。異質なものが突然ぶつかり、そこで化学変化をおこす。それに似て、何か、それまでとは違ったものになっていく。そのきっかけ。
最後の1行の「こころ いれかえる」は「ねころんで」怠けているのをやめてというような「こころを入れ換える」ではないね。「さいころ遊び」をするような、やくざなこころを入れ換えるだろうね。
でも、そんな簡単には入れ換えられない。もちろんねころんで怠ける癖もそうだけれど、博打(?)ひるの方がもっと、なんというか脱けだせない。入れ換えを許さない力が強い(と思う)。魔力がある(と思う)。
そして、そこには何かしら「さびしい」感じがある。やくざなことをやってみたいなあ、という未練のようなものがある。「暗い」ものがある。
それが魅力的。
ひとつ、注文。
は、ちょっと健康的すぎる。だから「さいころ」で補っている(?)のかもしれない。でも、もうちょっとはみだして、
くらいのことをどこかにしのばせてくれたらなあ。でも、そうすると、青少年向けではなくなる?
思い返してみると。
谷川って、詩が清潔だねえ。
「さいころ」だって、ほんとうのやくざな感じとはちょっと違う。溺れて脱けだせないという感じがしない。
こころ ころころ
こころ ころんところんだら
こころ ころころころがって
こころ ころころわらいだす
こころ よろよろへたりこみ
こころ ごろごろねころんで
こころ とろとろねむくなる
こころ さいころこころみて
こころ ころりとだまされた
こころ のろのろめをさまし
そろそろこころ いれかえる
3連目の「さいころ」がとても楽しい。「こころ」という音には「お」の音が多い。そしてこの詩も「お」の音が多い。「ころん」「ころころ」「よろよろ」「ごろごろ」「とろとろ」「ころり」「のろのろ」「そろそろ」。みんな子音+「お」で始まる。「さいころ」だけ「あ」の音で始まる。
この音楽はどこからくるのだろう。
この「さいころ」の異質な感じは、これまで私が「矛盾」と呼んできたものと似ているかもしれない。異質。異質なものが突然ぶつかり、そこで化学変化をおこす。それに似て、何か、それまでとは違ったものになっていく。そのきっかけ。
最後の1行の「こころ いれかえる」は「ねころんで」怠けているのをやめてというような「こころを入れ換える」ではないね。「さいころ遊び」をするような、やくざなこころを入れ換えるだろうね。
でも、そんな簡単には入れ換えられない。もちろんねころんで怠ける癖もそうだけれど、博打(?)ひるの方がもっと、なんというか脱けだせない。入れ換えを許さない力が強い(と思う)。魔力がある(と思う)。
そして、そこには何かしら「さびしい」感じがある。やくざなことをやってみたいなあ、という未練のようなものがある。「暗い」ものがある。
それが魅力的。
ひとつ、注文。
こころ ころころねころんで
は、ちょっと健康的すぎる。だから「さいころ」で補っている(?)のかもしれない。でも、もうちょっとはみだして、
こころ ころころねんごろに
くらいのことをどこかにしのばせてくれたらなあ。でも、そうすると、青少年向けではなくなる?
思い返してみると。
谷川って、詩が清潔だねえ。
「さいころ」だって、ほんとうのやくざな感じとはちょっと違う。溺れて脱けだせないという感じがしない。
これが私の優しさです 谷川俊太郎詩集 (集英社文庫) | |
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