ギリーズ・マッキノン監督「ウイスキーと2 人の花嫁」(★★★★★)
監督 ギリーズ・マッキノン 出演 グレゴール・フィッシャー、ナオミ・バトリック、エリー・ケンドリック
あ、この手のタイプの映画は、一番好きな映画だなあ、と見ながら思った。
何が好きか。
役者がのびのびしている。楽しんでいる。「作品の意図」というのはどういう作品にでもあるだろうけれど、それはそれとしてそれに縛られない。好き勝手というのではないけれど、こういう「役」はこれくらいでいい、という軽い感じ。「役」を演じると同時に「自分」を解放する。
ちょっと「堅物」の「大尉」が出てくる。島民に規律を守らさせようとしている。妻が、そこまでしないていい。もっとみんなに溶け込んでほしいと思っている。で、妻からもちょっとばかにされている。いいようにあしらわれている。こういう「役」で自分を出すというのは、なんというか、「ばか」をさらけだすようであまり「特」とはいえないのだが、軽く立ち回っている。
もちろん、そういう「損」な役以外の人は、もっと楽に演じている。いっしょに「作品」を楽しんでいる。「共同体」をつくっている。ルノワールとか、タビアーニ兄弟の映画には、こういうのが多いなあ。ウディ・アレンの「世界中がアイ・ラブ・ユー」も、そうだなあ。役者と知り合いになった気持ちになる。この人、知っている、という感じ。
で。
ウィスキーにまつわる映画で、飲むシーンもとっても多い。それが、とてもいい感じ。いいなあ、飲みたいなあ。ピートの香りの違いが楽しいだろなあ、なんて思うのだが。
クレジットの最後の最後に、「撮影中は飲んでいません」という註釈が出る。
えっ、うそだろう。飲んでるから「飲んでいません」というんだろう、とツッコミたくなる感じなんだなあ。
と、書けば、たぶんこの映画の楽しさがわかる。
ということとは別に、私がこの映画が好きな理由はもう一つある。
舞台はスコットランドの島なのだが、海の色がとても美しい。スコットランド(イギリス)やアイルランドの海、空気の感じは、私が育った海の感じに似ている。見ていて、なつかしく感じられる。これが海の色だよなあ、こういう湿気のある空気なんだよなあ、と思う。
最初の海の色は、氷見沖(富山湾)にある虻が島のまわりの海の色に似ている。ちょうど寒流と暖流が交錯するようなところなのだが、その「寒流」の色に近い。あ、この色、見たことがある、となつかしくなる。
昼の海も、夜の海も、太平洋や地中海とは違う。
ものに対する「感性」は、大人になるまでにつくられてしまうんだなあ、と思う。
この映画の舞台の島の人は、やはり、やっぱりここで「感性」をつくる。ウィスキーを飲まないこどもまで、ウィスキーの「文化」を身につけて育つ。飲み始めてからウィスキーを知るのではなく、飲む前からウィスキーが「いのちの水」であることを知る。
そして、その「感性」が共有される。
こういうことと関係があるかどうかわからないが。
座礁した船からウィスキーを盗み出すとき、島から船を出そうとすると日付がかわり日曜になる。そうすると神父が「日付が変わった。安息日だ。何もしてはいけない」と出港する船を止めてしまう。これにみんなが従う。盗んだウィスキーは神父も飲むのに、「日曜は安息日」ということだけは守るのである。
この「文化」がおもしろい。「文化」が「感性」を作り上げていく。これが、さりげなく描かれている。
(KBCシネマ1、2018年03月09日)
*
「映画館に行こう」にご参加下さい。
映画館で見た映画(いま映画館で見ることのできる映画)に限定したレビューのサイトです。
https://www.facebook.com/groups/1512173462358822/
監督 ギリーズ・マッキノン 出演 グレゴール・フィッシャー、ナオミ・バトリック、エリー・ケンドリック
あ、この手のタイプの映画は、一番好きな映画だなあ、と見ながら思った。
何が好きか。
役者がのびのびしている。楽しんでいる。「作品の意図」というのはどういう作品にでもあるだろうけれど、それはそれとしてそれに縛られない。好き勝手というのではないけれど、こういう「役」はこれくらいでいい、という軽い感じ。「役」を演じると同時に「自分」を解放する。
ちょっと「堅物」の「大尉」が出てくる。島民に規律を守らさせようとしている。妻が、そこまでしないていい。もっとみんなに溶け込んでほしいと思っている。で、妻からもちょっとばかにされている。いいようにあしらわれている。こういう「役」で自分を出すというのは、なんというか、「ばか」をさらけだすようであまり「特」とはいえないのだが、軽く立ち回っている。
もちろん、そういう「損」な役以外の人は、もっと楽に演じている。いっしょに「作品」を楽しんでいる。「共同体」をつくっている。ルノワールとか、タビアーニ兄弟の映画には、こういうのが多いなあ。ウディ・アレンの「世界中がアイ・ラブ・ユー」も、そうだなあ。役者と知り合いになった気持ちになる。この人、知っている、という感じ。
で。
ウィスキーにまつわる映画で、飲むシーンもとっても多い。それが、とてもいい感じ。いいなあ、飲みたいなあ。ピートの香りの違いが楽しいだろなあ、なんて思うのだが。
クレジットの最後の最後に、「撮影中は飲んでいません」という註釈が出る。
えっ、うそだろう。飲んでるから「飲んでいません」というんだろう、とツッコミたくなる感じなんだなあ。
と、書けば、たぶんこの映画の楽しさがわかる。
ということとは別に、私がこの映画が好きな理由はもう一つある。
舞台はスコットランドの島なのだが、海の色がとても美しい。スコットランド(イギリス)やアイルランドの海、空気の感じは、私が育った海の感じに似ている。見ていて、なつかしく感じられる。これが海の色だよなあ、こういう湿気のある空気なんだよなあ、と思う。
最初の海の色は、氷見沖(富山湾)にある虻が島のまわりの海の色に似ている。ちょうど寒流と暖流が交錯するようなところなのだが、その「寒流」の色に近い。あ、この色、見たことがある、となつかしくなる。
昼の海も、夜の海も、太平洋や地中海とは違う。
ものに対する「感性」は、大人になるまでにつくられてしまうんだなあ、と思う。
この映画の舞台の島の人は、やはり、やっぱりここで「感性」をつくる。ウィスキーを飲まないこどもまで、ウィスキーの「文化」を身につけて育つ。飲み始めてからウィスキーを知るのではなく、飲む前からウィスキーが「いのちの水」であることを知る。
そして、その「感性」が共有される。
こういうことと関係があるかどうかわからないが。
座礁した船からウィスキーを盗み出すとき、島から船を出そうとすると日付がかわり日曜になる。そうすると神父が「日付が変わった。安息日だ。何もしてはいけない」と出港する船を止めてしまう。これにみんなが従う。盗んだウィスキーは神父も飲むのに、「日曜は安息日」ということだけは守るのである。
この「文化」がおもしろい。「文化」が「感性」を作り上げていく。これが、さりげなく描かれている。
(KBCシネマ1、2018年03月09日)
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