詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(42)

2019-07-01 10:07:02 | 嵯峨信之/動詞
* (失われた恋は)

眠りに刻まれた笑い顔のように
つかのまになぜ消えてしまわぬのか

 恋は失われても、消えない。記憶は消えない。「失われた」という意識が残る。
 この「抒情の論理」よりも、「眠りに刻まれた笑い顔」という比喩が生々しい。
 「笑い顔」はだれの笑い顔だろうか。恋人のか、嵯峨自身のか。恋人の顔と受け止めるのが自然なのかもしれないが、私は恋が失われたことに気づき、むりやり笑った自分の顔かもしれないと、ふと思った。
 なぜ笑ったのか。
 悲しいのに、笑った。その「矛盾」が記憶に残る。後悔よりももっと深く。









*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
『誤読』販売のページ
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私あてにメール(yachisyuso@gmail.com)でも受け付けています。(その場合は多少時間がかかります)

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