詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

セバスティアン・ボレンステイン監督「明日に向かって笑え!」(★★★)

2021-09-23 16:31:27 | 映画

セバスティアン・ボレンステイン監督「明日に向かって笑え!」(★★★)(2021年9月21日、KBCシネマスクリーン2)

監督 セバスティアン・ボレンステイン 出演 リカルド・ダリン

 リカルド・ダリンは何本か見ている。「瞳の奥の秘密」が有名だ。シリアスな役者かと思っていたら、コメディーも演じる。スペイン語の練習もかねて、見に行った。「字幕」があるのでついつい字幕を見てしまう。それに、喜劇の方が、深刻な劇よりも「ことば」を理解するのがむずかしい、というようなことを考えながら、それでも笑ってしまう。
 何がおかしいかというと。
 出で来るアルゼンチン人が、みんな正直なのだ。銀行の頭取(?)と弁護士に、農協設立のために出し合った資金をだまし取られる。どうも、その金は、山の中の厳重な金庫に隠してあるらしいという情報を手に入れ、奪われた金を取り戻そうとする。「でも、全部はダメ。自分たちが奪われた分だけ」などと、真剣に相談する。まあ、他人のものまで取り出すと「盗み」になるからね。
 このあたりのやりとりは、私が真っ正直な人間ではないので、やっぱり笑ってしまう。そこまで正直にならなくていい、と。結局、奪い返した金の残りは慈善団体に寄付しよう、という結論にたどりつくのだが、これだって、なんというかアルゼンチン気質をあらわしているなあ、と思う。かたくなに信念を守る、というところがある。
 見どころは、どうやって警報装置のついた厳重な金庫を破るか。二面作戦が楽しい。ひとつは、物理的に金庫を破るためには警報装置が働かないようにしないといけない。簡単に言えば、停電。この簡単(?)なことも、奇妙に失敗してしまうところに味がある。根っからの悪人ではないので、上手くできないのだ。もうひとつが心理作戦。金庫のことが気になってしようがない弁護士を、警報装置を誤作動させることで、ふりまわす。警報装置から携帯電話にメッセージが流れてくるたびに、弁護士は山の中まで車をぶっとばす。何度も何度も。そんなことしなくたって、停電で警報装置を止めてしまうだけでいいじゃないか、というのではちょっと味気ない。単なる金庫破りになる。そうではなくて、金を奪った人間を精神的に追い詰める、という復讐がおもしろいのだ。これは「怒ってるんだぞ」と相手に分からせることだね。相手が、それに気づくかどうかは別問題。自分たちが憂さ晴らし(?)ができればいい。
 これは、最後の最後。悪徳弁護士が、正直者集団の車修理屋へやってくる。彼にオーナーがマテ茶を出す、というシーンに、さらっと描かれている。「何も知らないばかな弁護士」と、ちらっと思う。この「ちらっと」という感じがいいんだなあ。

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オリンピックは中止すべきだった(35)

2021-09-23 08:29:37 | 考える日記

 9月23日の読売新聞(西部版・14版)の2面のコロナ感染症に関する見出し。(番号は私がつけた。)
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①宣言解除 27日にも判断/「まん延防止」一部移行も
②3回目接種 12月100万人/厚労省案 医療従事者が対象
③コロナワクチン追加提供を表明/首相、計6000万回分
↑↑↑↑
 ①を読むと、「宣言解除」へ向けて動いていることが分かる。総裁選、衆院選とつづくから、なんとしても宣言を解除したいのだろう。しかし、本当に感染症対策は大丈夫なのか。コロナは終息するのか。
 ②は、①とは反対の動きである。ワクチン接種は2回では不十分。3回目を実施することにした。まず医療従事者から、という。医療従事者の次は高齢者、それから一般の人ということだろう。少なくともコロナは年内には終息はしない。来年も拡大すると予測するから3回目の接種があるのだろう。
 ①と②は、あきらかに「矛盾する」対策である。もちろん、規制を緩和しながらワクチン接種をつづけるということなのだが、そのバランスの取り方が、どうにも「うさんくさい」。
 ③はワクチン不足の国へワクチンを提供するという内容だが、これはワクチン接種が進んでいない国が多いから。つまり、国内対策だけではコロナは防げないということ。たとえ国内の感染が減ったとしても海外から「新株」を含めてコロナ感染が侵入してくる危険性があるということ。

 こんなさなかに、国会も開かず、そのことを追及するでもなく、読売新聞は「総裁選」の報道をつづけている。同じ2面の見出し。
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こども庁創設 3氏意欲/高市氏は言明せず 河野・岸田・野田氏
↑↑↑↑
 コロナ対策についての候補者の「政策」は報道済みなのかもしれないが、単なる「宣伝の言い合い」を紙面化するよりほかに報道することがあるだろう。
 しかしなあ、と思うのは、見出しの順序である。
↓↓↓↓
こども庁創設 3氏意欲/河野・岸田・野田氏、高市氏は言明せず 
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 にしないと、「3氏」と「河野・岸田・野田氏」が離れてしまう。「3氏=河野・岸田・野田氏」がわかりにくくなる。これはね、うがった見方をすれば、読売新聞は安倍の意向を受けて、高市をアピールしているのである。
 総裁選報道は、マスコミの「権力すり寄り合戦」という感じだ。コロナ報道がおろそかになっている。
 それは、たとえば29面に書いてある「感染者状況」の記事を見ても分かる。
↓↓↓↓
 国内の新型コロナウイルス感染者は22日、全都道府県と空港検疫で新たに3245人確認された。重症者は前日から46人減って1383人、死者は54人だった。
 東京都では537人の感染が判明。1週間前から515人減り、1日当たりの感染者数は31日連続で前週の同じ曜日を下回った。
↑↑↑↑
 これは、このとおりである。しかし、昨日(22日)の記事には、こうある。
↓↓↓↓
 東京都の新規感染者は253人で、1週間前より751人減少した。300人を下回るのは、6月21日(236人)以来3か月ぶり。
↑↑↑↑
 計算してみよう。537(22日)-253(21日)=284。前日よりも284人も増えている。21日に比べると2倍になっているのだ。
 数字は「基準」を何に置くかによって、評価が違ってくる。一週間前に比べたら「改善」、きのうに比べたら「悪化」。簡単に一方の「基準」だけで判断してはいけない。直前の「連休」の影響があるのかもしれない。連休の影響があるのだとしたら、きょう23日の「秋分の日」の休日も影響するかもしれない。

 東京オリンピック前から、コロナ隠し報道が横行している。政府の発表をそのまま鵜呑みにして報道している。最初にとりあげた①②の「報道内容」自体には間違いがないだろう。政府の発表を忠実に、そのまま提供している。政府の提供するニュースに何の疑問も持っていない。
 私はオリンピックの記事はほとんど読んでいないが、あの大宣伝は、菅の失政をごまかすためのものでしかなかっただろう。

 つくずく思う。東京オリンピックは中止すべきだった。コロナ対策も不完全だったが、オリンピック批判をしなかったマスコミは、いまは、そのまま完全に「自民党の宣伝紙」としかいいようのない状態だ。
 9月4日に書いたことだが、なぜ、衆院議員の任期が切れるのが分かっているのに、衆院選挙が任期切れのあとなのか。それをなぜマスコミは追及しないのか。
 こういうことも東京オリンピック後遺症なのだ。

 

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