池田康『エチュード 四肆舞』(洪水企画、2018年07月30日発行)
池田康『エチュード 四肆舞』の作品には番号だけがついている。個別のタイトルはない。
音楽(曲)と言語が「イヤホン」のなかで交錯する。それが簡単に「意味」に変わっていく。
私は、こういう「意味」へ向かって動くことば、しかも他人のことばが抱えている「意味」を利用して動くことばが好きになれない。「もつれをほどく」のなかには「もつれる」と「ほどく」という二つの動詞が出会っている。その出会いを「意味」ではなく「現実」として書かないと詩にはならないのではないか、と思う。
ここは、非論理的でおもしろい。「耳から入ってくる」のは「肉体」のなかへ入ってくるということだと思うが、毛布をたたくとき、その人は「肉体の外」。こういう「矛盾」が動いてしまうのが詩だ。「怖い」と「やさしい」は反対の概念だと思うが、反対のものがいっしょになって動く。
怖い人が耳から入ってくるなら、それは怖い人を池田が待っているからだろう。
でも、こういうことも「論理的」に書いてしまうと「意味」になってしまう。この作品の最終連は「意味」に閉じこめられている。
「だから」は「論理」のことば。池田はいつも論理を探している。人の書かなかった論理を詩に書きたいのだと思う。
でも私は「意味」ではないものを読みたい。
*
評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』を発行しました。190ページ。
谷川俊太郎の『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2000円(送料、別途250円)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
「詩はどこにあるか」5、6月の詩の批評を一冊にまとめました。
詩はどこにあるか5、6月号注文
オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
池田康『エチュード 四肆舞』の作品には番号だけがついている。個別のタイトルはない。
イヤホンコードのもつれをほどく間に
現代人の一生は終わる
曲と曲の間の
リズムの途切れる須臾
イヤホンコードのもつれの迷路は
二十一世紀の心をパズルにし
左右の耳はばらばら
違う言語を聞こうとする
音楽(曲)と言語が「イヤホン」のなかで交錯する。それが簡単に「意味」に変わっていく。
どうしてイヤホンはもつれるのか
無意識の反映だ とフロイトは言うだろう
いい子じゃないから
とnobodyは言いたい
私は、こういう「意味」へ向かって動くことば、しかも他人のことばが抱えている「意味」を利用して動くことばが好きになれない。「もつれをほどく」のなかには「もつれる」と「ほどく」という二つの動詞が出会っている。その出会いを「意味」ではなく「現実」として書かないと詩にはならないのではないか、と思う。
耳から怖い人が入ってきたら
ぼくはどこに隠れたらいいのか
毛布の下に身をひそませても
怖い人はやさしく毛布をたたく
ここは、非論理的でおもしろい。「耳から入ってくる」のは「肉体」のなかへ入ってくるということだと思うが、毛布をたたくとき、その人は「肉体の外」。こういう「矛盾」が動いてしまうのが詩だ。「怖い」と「やさしい」は反対の概念だと思うが、反対のものがいっしょになって動く。
怖い人が耳から入ってくるなら、それは怖い人を池田が待っているからだろう。
でも、こういうことも「論理的」に書いてしまうと「意味」になってしまう。この作品の最終連は「意味」に閉じこめられている。
鳥は種を食べるのが好きだ
彼らは種が醸している時間を食べるのだろう
だから彼らは飛べるのだろう
鳥は種を探して飛ぶ
「だから」は「論理」のことば。池田はいつも論理を探している。人の書かなかった論理を詩に書きたいのだと思う。
でも私は「意味」ではないものを読みたい。
*
評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』を発行しました。190ページ。
谷川俊太郎の『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2000円(送料、別途250円)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
「詩はどこにあるか」5、6月の詩の批評を一冊にまとめました。
詩はどこにあるか5、6月号注文
オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
エチュード四肆舞 | |
クリエーター情報なし | |
洪水企画 |