風のこたろう

'05年4月6日~'07年4月7日 ウランバートル生活日記
'09年8月~  詩吟三昧の徒然日記

母の車椅子

2006年10月28日 | チンゲル亭裏日記

最初は、赤いシートの車椅子でした。
デイケアでご一緒でとても気の合うIさんという方がいらっしゃいました。
母の境遇とよく似た方で、何かと話題に出て、保護者としてのIさんの娘さんと私も同じ立場として、親しさを増して居たのです。

そのIさんの使っていた車椅子をもらってくださいと申し出られたのは、Iさんの四十九日が過ぎたころでした。
一人暮らしをなさっていて、娘さんがいつものように朝、様子を見に立ち寄られたら、夕飯がきちんと食べてあって、今にも流しに持って行こうと立ち上がったら、あまりに夕焼けがきれいで、ソファーにゆったり座って眺めているうちに、静かに旅立たれた様子だったとのことでした。

Iさんの住むマンションは、ほんとに夕日がきれいに見える部屋で、しばし見とれていることが多かったそうです。
そして、その日、あまりにきれいな夕日だったので、娘さんも「あぁ、きれい、母もみとれているな」と思ったそうです。
まだ、私の母は元気で自分の足で歩いていたころです。
ただ、デイ ケアで遠出をするときは、施設の車椅子をお借りしていたことを私より先に職員の方から小耳に挟んでいたようでした。
それで、遠からず必要になりそうだと思って、貰ってくださいと野申し出でした。

Iさんも、母と同様、車椅子を常用しているわけではなかったし、その大往生の様子が、あやかりたいくらいでしたから、喜んで頂いたのです。

数年使った後に、体の状態が進行したので新しい車椅子を注文しました。
その車椅子のフレームは、母の好きな緑色を選びました。
そして、やがてその車椅子の主は眠るような最後を迎え、次の知り合いへともらわれていきました。

やがて、二人目の主も逝ってしまわれました。
まもなく2年になろうとする先日の事、大事に保管しているのを見た人から、使いたいと、申し出があったそうです。
2年もの間、場所ふさぎな車椅子を保管してくださっていたことに感謝し、また、母とそして友人のおばあ様についで3人目の重宝してくださる方が現れてほんとに良かったと思いました。

きっと、母も喜んでくれていることでしょう。
車椅子は、使い方を誤ると危険なことがあります。しっかり、母に監視してもらいましょう。私は、使われる方の安全をお祈りしたいと思います。
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