朝刊で木村尚三郎先生が亡くなられたことを知る。
大学の一般教養課程で歴史をとった時の先生でした。1970年で、確か先生はドイツから帰られたばかり。まだまだ少壮気鋭という感じでした。
あまり大柄ではなく、秀でた額と眼鏡の奥のキラキラと輝く瞳が印象的でした。そして何よりお話が面白い。学識に裏打ちされた見晴らしのよい視点をお持ちでした。
「世の中にはこんなに知識が豊富で、こんなに頭の良い人がいるんだ!」と驚いたものでした。私の人生で出会った、もっとも知性溢れる人の一人。
試験の小論文では、生意気にも先生が講義で述べられた世界史の潮流(農業社会から工業社会への転換が中心だったと思います)に反論するようなことを書いてしまい、それでも良い点数をいただいたことを覚えています。
あれほどの知識と優れたものの見方が日本から消えてしまうなんて……。享年76。合掌。