午後、神保町まで出かけ、文房堂ギャラリーで「挿絵画家 依光隆展」を見ました。
依光隆さん(1926-2012)は、SFファンならば〈ペリー・ローダン〉シリーズの文庫表紙でお馴染みの方。
最初に手がけたのが1956年の瀬川昌男『火星にさく花』だといいますから、SFには縁が深いのですが、お仕事の範囲は児童向けの小説、伝記、一般向けノンフィクション、戦記もの、果ては新聞報道用の法廷スケッチまで、多岐にわたっていたそうです。
今回の展覧会は、その全容とまではゆきませんが、幅広い範囲の作品約250点と、それらが使われた書籍などを展示、依光さんの活躍ぶりを振り返るもの。年明けに、出身地・高知の県立美術館での展示の後、東京展が開催されています(31日土曜日まで)。
私の印象では、やはりSF、それにルパンやホームズの児童書だったのですが、こんなにたくさんの仕事をなさっていたことを知って驚きました。50年以上にわたって挿絵や装丁画の第一人者だったのですから、それも当然なのかもしれません。
今回、動物画や戦艦、戦闘機などにも素晴らしい腕を揮ったことを知りましたが、依光さんといえばなんといっても人物。特に、その表情が印象的。リアルでいて、内面の輝きを感じさせ、やはり児童書にはぴったりだったと思います。戦後の前向きなドラマに向いていたのではないでしょうか。
展示された絵のなかに、確か「ショートショート集」用のものがあり、福島正実さん・眉村卓さん・小松左京さん・光瀬龍さんとおぼしき4人が描かれていたのですが、どなたも、とてもハンサムで凛々しいので、思わず微笑んでしまいました。
人を見る依光さんの目が優しく、長所をしっかり捉えられていたということだと思います。
次女の坪野亜朱(あす)さんへのインタビューからは、生前の依光さんがいかに多忙だったかが伝わってきます。
小松崎茂さんの絵とはまた違った魅力に溢れた零戦画の数々が収録されています。
本棚でこれを見つけた時は結構嬉しかったです。この画集を持ってるのはささやかな自慢です。
本当に、同じ飛行機でも描く人によって質感や重量感、迫力などが違ってきて、印象が変わるのが不思議です。見るものすべてが、人によって違っているのでしょうね。