金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

リモートワークの生産性が会社の業績を変える

2021年01月03日 | 社会・経済
 首都圏1都3県の知事は昨日(1月2日)は政府に緊急事態宣言の再発令を要請した。政府が直ちに緊急事態宣言を再発令するかどうは不明だが、企業に出社抑制を求めることは間違いなく、年明けから多くの企業が出社率を落とし、在宅勤務比率を高める動きにでると思う。本心はリモートワークを増やしたくないと思っている企業が多いが、悪者扱いされるのは嫌なのでreluctantlyに「当面在宅勤務比率を高めてください」という会社が多いだろうと私は考えている。
 なぜ日本企業にはリモートワークを増やしたくないと考える会社が多いのか?というとリモートワークは生産性を低下させると考える会社が多いからである。
 たとえばNTTコムが行った「テレワークと会社満足度に関する調査 」によると、個人の生産性については、テレワークで向上したと思う人(24.0%)と低下したと思う人(24.9%)とほぼ拮抗している。しかしチームの生産性については向上したと思う人(15.8%)に対し、倍近い人(29.2%)が低下したと考えている。
 リモートワークの生産性に関する米国の調査がWSJに出ていた。Is a Home Office Actually More Productive?である。
 その調査によると在宅勤務の方が会社に行くより効率的と答えた人が41.2%で同じが43.5%、悪いと答えた人は15.3%だった。また「在宅勤務は期待に対してどうだったか?」という質問に対しては、61%の人が期待より良かったと答え、26.2%の人が期待通り、期待より悪いと答えた人は12.7%だった。

 この二つの調査から大雑把に、アメリカでは在宅勤務が生産性向上につながると考える人が多く、日本の場合はトータルで見ると生産性の向上につながらないと考える人が多いということができる。
 なぜこのような違いがでるのか?という点について、最大の理由は「アメリカでは一人一人の社員の職務記述書が明確で在宅勤務でもやることが明確だが、日本では職務記述書がない・またはあっても不十分で、会社にきて日々上司の指示を仰がないと職務遂行が滞る」ことにあると私は考えている。
 在宅勤務が会社に行くよりも生産性があがる理由は「通勤時間がない」ことと「雑用に取られる時間がなく本業に集中できる」ことである。
 もちろんリモートワークに馴染む職種と馴染まない職種があることは明白だ。WSJの記事によるとコロナでテレワークが増えた業種は、教育サービス(60%)、金融・保険(60%弱)、企業経営(50%強)、テクニカルサービス(50%)、電気・ガスなど公益事業(50%弱)、不動産(40%弱)などだ。
 コロナはやがて終息するだろうが、コロナ対策で行ったリモートワークの内、生産性の向上につながったものは会社は残すだろう。つまりプラスの財産となる訳だ。そして中期的に見るとリモートワークで生産性を高めた会社の業績が向上することになるだろう。いたずらに忌避するなかれ、リモートワークである。


 

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コロナ騒動が終わっても出張は最大36%減が永続する~米国での調査より

2020年12月02日 | 社会・経済
 WSJは「コロナ騒動が収束しても、ビジネストラベル(出張)は19%~36%の範囲で永久的に減少するだろう」という記事を掲載していた。
 まずこのような推測の根拠から紹介しよう。
 出張は目的から「セールス・顧客管理(約25%)」「テクニカルサポート(約20%)」「コンベンション・展示会(約20%)」「社内講習・研修(20%)」「通勤(5%)」等に分けることができる(合計が100%にならないが記事のとおりなのでご容赦を)。
 例えば「セールス・顧客管理」は対面の交渉が必要なので、コロナ騒動が収束すれば元の水準に戻ると見込まれる。
 一方社内講習・研修は、インターネットを利用したヴァーチャルな開催で成果を上げることがコロナ経験を通じて確認できたので、コロナが収束してもヴァーチャルに開催されることが多くなると予想される。またテクニカルサポートもかなりヴァーチャル化が可能だ。
 以上のように分析を進めた結果、この分析レポートは飛行機を使った出張は最低でも19%、最大では36%の範囲でコロナ騒動後も減少したまま戻らないと予想している。なお記事ではビジネストラベル=航空機を使った出張としているが、これはアメリカの実態にそった記事で、当然のことながら日本にそのまま当てはめることはできない。
 さて仮にビジネス客が3割も減るとどのようなことが起きるだろうか?
第一に航空会社の売上が落ちる。ビジネス客は世界的な航空会社の乗客の10%~15%を占めるが売上については約40%を占めている。バンクオブアメリカによると航空業界全体の1兆1千億ドルの収入の内30%に相当する3,340億ドルはビジネス客によるものだ。
第二にビジネス客の減少の影響は、一般旅行客にもマイナスの影響を及ぼす。何故かというと航空会社はビジネス客から相対的に高い料金を取っているので、エコノミーシートを安く販売することができた。エコノミーで旅行する一般旅行客は価格面でメリットを得ていた訳だが、ビジネス客が減ってくると航空会社は一般旅行客の航空運賃を引き上げようとすると考えられる。もっとも格安航空会社が頑張っている(アメリカでシェアは約2割)ので、実際はかなり難しいだろうが。そこでコスト削減のためにフライト数を減らすなどサービスの低下が起きることが想像される。
 記事はそれ以上の波及効果については言及していないが、旅行客の減少はホテルや飲食業にもダメージを与える。コロナウイルスがもたらす経済的なダメージはこの種の業種には長続きしそうである。
 
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会社はコロナ対策でどこまで従業員をコントロールできるか?(アメリカの話だが)

2020年11月20日 | 社会・経済
 今日(11月20日)の朝刊にイオンのブラックフライデーセールのチラシがはいっていました。ブラックフライデーとはThanksgiving Day(11月の第4木曜日)の翌日の金曜日から始まるアメリカのバーゲンセールです。この金曜日は最も売上高が多い日で、店が黒字になるのでブラックフライデーと言われるようになりました。Thanksgiving Day(感謝祭)には全米各地に散らばっている家族が一同に会し、ターキーを食べる日になっています。
 日本の年末年始の帰省休暇に該当するのがこのThanksgiving Dayの休暇です。
 しかし今年はコロナウイルスの感染が拡大する中、多くの会社は従業員にThanksgivingの儀式を小さなものにして大掛かりの会食や長距離移動の自粛を求める傾向にあります。
 これにともない会社・従業員双方で感染防止について双方の権利と責任を整理して法的リスクを事前に回避しておこうという動きがでています。
 WSJのThe Coronavirus and Your Jobと記事はQ&Aの形で論点をまとめていました。
 日米ではベースとなる法律や雇用契約が異なるので、そのまま参考にできないところもありますが、会社全体の健康管理や事業の継続と個人のプライバシーのバランスを考える上で参考になるところは多いと思います。
以下記事の一部を紹介します。
 【従業員の個人旅行
(質問1) 会社は私の休暇をキャンセルして私を働かせることができますか?
(回答1) 大部分の職場で答はイエスです。インディアナ大学の労働法教授のDau-Schmidt氏は「連邦法の下で大部分の会社は休暇をキャンセルし、職場に戻るよう従業員に求める権利を持っています。例外は組合契約または特別な雇用契約で休暇保護が行われている場合です。」と回答しています。しかし休暇のキャンセルは従業員に不人気なので実際の運用には歯止めがかかっています。
(質問2)上司が私の個人旅行をキャンセルするように告げるとすれば、それは適法でしょうか?
(回答2)会社は従業員に旅行や旅行先について勧告を行うとしても、個人の時間をどのように使うかを従業員に指示することはできません。
(質問3)会社は休暇をキャンセルした場合、キャンセル料を払う必要がありますか?
(回答3)上司が旅行の打ち切りを主張した場合、従業員がキャンセル料の補填を求めることについて合理的な要求と考える会社はあるでしょう。しかし法的には雇用契約がそのように定めていない限り、法的には支払う義務はありません(前述のDau-Schmidt教授)
リモートワーク
(質問1)私は通勤してコロナウイルス感染リスクに晒されることに本当に不安を感じています。私は自宅勤務を行う権利を持っているのでしょうか?
(回答2)一般的に会社はテレワークを認める義務はありません。例外は「アメリカ障がい者法」でテレワークが認められている障がいのある従業員です。
 また政府が隔離を命じる場合はテレワークを認める義務が発生する可能性があります。
(質問2)私はオフィスで勤務することにリスクを感じていませんが、上司は在宅勤務を主張しています。私は在宅勤務をする必要がありますか?
(回答2)はい、会社は差別と思われる方針を取っていない限り、従業員にテレワークを求める権利があります。
 例えばイタリアなど感染拡大した地域を旅行した従業員に対して一定期間在宅勤務を命じることは合法的です。しかし善意によるものにしろ、70歳以上の従業員に一律に在宅勤務を命じることは合法的ではありません。
職場の問題
(質問1)会社は従業員の体温を測ることができますか?
(回答1)「アメリカ障がい者法」に従えば、会社が従業員の体温を測定することは健康診断に該当すると判断され、会社が行えることや求められていることの範囲を超えています。しかし悪性のインフルエンザが蔓延した場合に検温は許容されます。コロナウイルス感染についてもこのルールが適応されるでしょう。
 しかし従業員の検温が適法なものとしても、多くの弁護士や健康問題の専門家は検温が役に立つとは考えていません。「熱のある人はインフルエンザかもしれない」し「コロナウイルスに感染しても多くの人は発熱しない」からです。
プライバシー
(質問1)会社は同僚の一人がコロナウイルスに感染していることを他の従業員に直ちに伝えませんでした。会社は伝えることを求められていたのではありませんか?
(回答1)一般的にはコロナ感染者と接触した可能性のある人に警告を発する義務があります。また地方の保健当局が感染情報の公開を求める場合があります。ただし会社が感染者の名前を出して特定することはまずあり得ません。それは「アメリカ障がい者法」が求める守秘義務に抵触する可能性があるからです。会社は感染者が働いていたフロアなど場所を他の従業員に知らせることが多いでしょう。
(質問2)私がコロナウイルスに感染した場合、会社に感染を伝える必要がありますか?単に病欠したいということはできないでしょうか?
(回答2)恐らく法律上の要請はありませんが、倫理的な要請はあります。もしオフィスで働いていて、同僚と接触するのであれば、会社に診断結果を伝え管理職から従業員に情報を伝えてもらうというのが良い方法です。
 もしテレワークをしていて同僚、顧客や他の人々と仕事上直接コンタクトすることがない場合は、コロナ感染を会社に伝える必要はないかもしれません。


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コロナは株主総会を変える

2020年08月09日 | 社会・経済
コロナウイルス感染拡大は色々なものを変えています。
満員電車での通勤を避け、テレワークを選択する人、時差出勤をする人、自転車通勤をする人が増えました。お盆の帰省者は減り、お祭りも中止あるいは規模縮小となっています。
 
コロナウイルスは株主総会も変えています。
先日送られてきた株主総会招集通知には「株主の皆様の感染リスクを避けるため、本年は株主総会当日のご来場をお控えいただき、書面の郵送またはインターネットによる議決権の行使をご検討ください」とありました。
会社提案に賛成な先なので、インターネットで議決権を行使しておしまい、とすることにしました。
過去に私は何度かPCを使って議決権を行使していますが、今回はスマートフォンでQRコードを読み取る方法で議決権を行使することにしました。
 
これが実に簡単で、QRコードを読み取ると私の名前と議決権数が出てきます。また最初に「すべての会社提案に賛成する」というボタンがでてくるので、これをクリックするとそれで終わりです。実に簡単。
 
コロナは株主総会を変えると思います。
 
  • 企業は株主に総会に来ないでくれと頼み、これまで出席者にお土産を渡していた企業はお土産を廃止する。
  • スマートフォン経由の議決権行使の便利さを知った株主はそれ以降スマートフォン行使を行うようになる。
  • ついつい「すべて会社提案に賛成」がデフォルトモードになり、すべて賛成の人が増えるかも? まあ、これは根拠の薄い推量ですが。

スマートフォンが経済活動に占める役割はますます大きくなるでしょう。企業側としては株主総会の時だけ議決権行使を依頼するのではなく、スマートフォンを通じて、日頃から企業の状況を分かりやすく説明することが求められる時代が来る、と私は考えています。

もしそうなればそれはコロナの数少ないプラス効果かもしれません。

 



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オリンパスの撤退も「消費者選択減少」の流れの一環か?

2020年06月28日 | 社会・経済

コロナウイルス感染拡大は、社会や経済のトレンドを変えつつある。

例えば過去数十年にわたり、企業は商品の細分化を図ることで消費者の細かなニーズをくみ取ろうとしてきた。

だがコロナウイルス感染拡大はこのトレンドを変えつつある。WSJはWhy the American consumer has fewer choices-maybe for good「なぜアメリカの消費者は購入商品の選択肢が少なくなったのかーおそらく永久に」という記事で、今米国の消費市場に起きている現象を説明していた。

たとえばIGAというスーパーマーケットでは数カ月前には40種類もあったトイレットペーパーを4種類に絞っている。

商品の種類を絞った直接の原因は、3月に起きたパニック的な買い漁りだった。店舗の棚から商品が消え、スーパーマーケットは商品の補充に苦労し、アイテム数を減らすことにしたのだ。

商品の種類を減らす動きは各方面ででている。Outbackというステーキハウスはメニューの約4割を削った。調査会社ニールセンによると6月13日までの4週間の間にスーパーマーケットは平均7.3%商品数を減らしている。

これは過去に商品数を増やし過ぎた反動でもあるだろう。1975年に米国のスーパーマーケットは平均約9千点の商品を販売していたが、現在では3倍以上の3.3万点の商品を販売している。

日本の小売業・飲食業でも同じようなことは起きているのではないか?と思うが寡聞にして具体的な記事は目にしていない。

ただ先週耳目を集めたオリンパスのカメラ事業からの撤退(投資ファンドへの売却)もこの流れと軌を一にしていると私は判断している。過去数10年にわたってメーカーは、商品の多様化を行うことで消費者の購買意欲を刺激してきた。

それは少量多品種の販売を招き、膨大な部品数の調達・管理が必要になった。だがコロナウイルス感染拡大は、選択的消費財について消費需要の減退と部品の供給難を招いた。

カメラについていうとスマートフォンとの競合も大きい。スマートフォンは一台で電話・メールやSNSの通信・ウエッブサイトの検索など通信機能・支払い決済・静止画や動画の撮影機能など実に多くの役割を果たす。

小型録音機などこれまでにスマートフォンに殺された商品は多いのではないか?と私は考えている。そして今回はオリンパスのカメラがその犠牲者に加わった。

そもそもカメラにしても車にしても日本はメーカーが多く、かつ各々のメーカーが似たような商品を出しているので、非常に商品点数の多い国になっている。はっきり言って消費者の選択能力を超えているのではないだろうか?

そんな中で起こったコロナウイルス感染拡大問題。総じて消費力は低下し、選択的消費財(贅沢品と考えて概ね正しい)市場は縮小するはずだ。

注意深く観察しているとレストランや飲み屋でもメニュー数が減っていくかもしれない。いや3密防止で客席数が減っているのだから、メニューやサービスのレベルを減らさないと採算が取れないはずだ、と思う。

商品数で消費者の眼を奪う時代は終わり、本当に消費者が欲しがるものを絞り込んで提供しないと生き残ることができない時代が到来した、と思う。

最後にオリンパスのカメラの愛好家として一言オリンパスを擁護しよう。オリンパスがマイクロフォーサーズという小型で取り回しが良くかつフルサイズに較べると手ごろな値段で一眼カメラを提供してきたことに感謝したい。軽くて防塵防滴性能が高いカメラは山登りの頼りになるパートナーだったことを付け加えておきたい。

 

 

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