大西若人「3分割された謎の背景」(朝日新聞2010年01月06日夕刊)
大西若人の文章が好きだ。変な言い方かもしれないが、漢字・ひらがなのバランスがここちよく、段落のバランスも新聞という媒体にとてもよくあっていて、ともかく読みやすい。そのうえ、文章自体がとても華麗で、ひきつけられる。
今回の文章は、安井曽太郎の「金蓉」を紹介したものだ。いつもの華麗さはない。いや、華麗でもあるのだが、華麗さのなかに「他者」を導入し、それがとてもいいアクセントになっている。「他者」の重みが文章を落ち着かせ、それが刺激的なのだ。あ、引用というのはこんな具合にすべきなのか――と手本を見せられた感じがする。
大西の文章を読んでいることを忘れ、安井自身の「解説」を聞きながら絵を見ている感じになる。絵の紹介は、あくまで画家が主役。その主役を引き立てるように、「不思議」という感想だけで大西は身を引いている。
あ、いいなあ。
こういう身の引き方、作者の存在の際立たせ方――まねできるならまねしたい。盗めるものなら盗みたい。
安井の絵の実物も見たくなるし、その絵を見ている大西の姿も見てみたい。そんな気持ちにさせられた。
大西若人の文章が好きだ。変な言い方かもしれないが、漢字・ひらがなのバランスがここちよく、段落のバランスも新聞という媒体にとてもよくあっていて、ともかく読みやすい。そのうえ、文章自体がとても華麗で、ひきつけられる。
今回の文章は、安井曽太郎の「金蓉」を紹介したものだ。いつもの華麗さはない。いや、華麗でもあるのだが、華麗さのなかに「他者」を導入し、それがとてもいいアクセントになっている。「他者」の重みが文章を落ち着かせ、それが刺激的なのだ。あ、引用というのはこんな具合にすべきなのか――と手本を見せられた感じがする。
この作品もまた、写真的な写実性とはかけ離れている。色の塗り方はどこか平板で、陰影も大胆。とりわけ不思議なのが、3分割された背景だろう。床と壁にしては、一関係が不自然なのだ。
だがこれが、三角形構図の中でうねりながら流れるチャイナドレスの曲線を受け止める。薄ピンクの色調も、華やかな衣装や顔を際立たせる。
安井はポーズと背景を重視し、「人物よりも、背景の方がむしろむつかしいかも知れない」と認識。3分割も、考え抜かれたものに違いない。
大西の文章を読んでいることを忘れ、安井自身の「解説」を聞きながら絵を見ている感じになる。絵の紹介は、あくまで画家が主役。その主役を引き立てるように、「不思議」という感想だけで大西は身を引いている。
あ、いいなあ。
こういう身の引き方、作者の存在の際立たせ方――まねできるならまねしたい。盗めるものなら盗みたい。
安井の絵の実物も見たくなるし、その絵を見ている大西の姿も見てみたい。そんな気持ちにさせられた。