千人のオフィーリア(メモ25)
三日後のオフィーリアが侮辱する。
「あなたの連れ、にぶいんじゃない?」
振り返ると鏡の中に一時間前のオフィーリア、
自分の目しか見えないくらいに目をみひらいて、
「どうして?」
訪ねる声がふるえるのは憎しみの予感か、恐怖か。
「三日前、ドアを開いて入ってきた男にあなたが目を向けたすきに、
彼は私を見たのよ。私は横を向いていたけど気づいたわ。
でも、なんてにぶいんだろう。
私がわざと横を向いているのに気づかないなんて、
盗み見している男に気づいていないと思うなんて、」
「長い廊下をつけてくる足音を聞いたとき、
私がどんなに振り返りたいこころを抑えていたか知らないなんて、
ゆるせないわ。」
「待って」
四日後のオフィーリアはさえぎる。
「それ、私が書いた手紙よ。
ラブレターまで盗むの?
何の権利があって?」
「私がオフィーリアだからよ」
八十五歳になったオフィーリアが笑う。
*
詩集「改行」(2016年09月25日発行)、残部僅少。
1000円(送料込み/料金後払い)。
yachisyuso@gmail.com
までご連絡ください。
三日後のオフィーリアが侮辱する。
「あなたの連れ、にぶいんじゃない?」
振り返ると鏡の中に一時間前のオフィーリア、
自分の目しか見えないくらいに目をみひらいて、
「どうして?」
訪ねる声がふるえるのは憎しみの予感か、恐怖か。
「三日前、ドアを開いて入ってきた男にあなたが目を向けたすきに、
彼は私を見たのよ。私は横を向いていたけど気づいたわ。
でも、なんてにぶいんだろう。
私がわざと横を向いているのに気づかないなんて、
盗み見している男に気づいていないと思うなんて、」
「長い廊下をつけてくる足音を聞いたとき、
私がどんなに振り返りたいこころを抑えていたか知らないなんて、
ゆるせないわ。」
「待って」
四日後のオフィーリアはさえぎる。
「それ、私が書いた手紙よ。
ラブレターまで盗むの?
何の権利があって?」
「私がオフィーリアだからよ」
八十五歳になったオフィーリアが笑う。
*
詩集「改行」(2016年09月25日発行)、残部僅少。
1000円(送料込み/料金後払い)。
yachisyuso@gmail.com
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