ラウル・ペック監督「私はあなたのニグロではない」(★★★)
監督 ラウル・ペック 出演 ジェームズ・ボールドウィン、メドガー・エバース、マルコムX 、マーティン・ルーサー・キング・Jr.
ジェームズ・ボールドウィンの未完の小説をもとにしたドキュメンタリー。
そこに描かれている黒人差別の問題を日本の「非正規雇用」と重ね合わせてみると、それはそのまま日本の問題に見えてくる。
正規雇用(正社員)は非正規雇用の実体をよく知っている。「知らない」と言い張る人もいるだろうが、それは「考えない」ことにしているだけだ。実際に同じ職場で、同じように仕事をしているのだから。
いま、かつての「非正規雇用」あるいは「派遣」は「子会社での正規雇用」という形で隠蔽されつつある。子会社をつくり、そこで正社員として雇う。ただし給料は本社の水準とはあきらかに違う。低賃金である。そうすることで浮かした金を「親会社の正規社員」の賃金に回す。もし、この問題に気づき、「親会社の正規社員」が「格差はおかしい」と言えば、その人はすぐに「子会社」に出向ということになるだろう。出向の場合、賃金は「親会社」での賃金がベースになる。ただし、ずーっと同じ基準が適用されるわけではなく、賃金改定のたびに「子会社」の基準が適用される。つまり、切り捨てられるのである。そういう仕組みを知っているから、「親会社の正規社員」は何もいわない。自己保身に懸命で、いま起きていることに目を向けない。そればかりではなく「派遣」が「子会社での正規雇用」という形で身分保証ができたのだから、それはいいことだ、と経営者の代弁さえする。
また海外研修生という形での「雇用」も重ねて見ることができる。低賃金で労働力を確保するために、海外から「研修生」を受け入れる。「研修生」は日本で学んだ技術を母国に持ち帰り、母国の発展につなげるという「名目」でつけられた「名称」に過ぎない。労働力として恒久的に受け入れる(移民として受け入れる)と賃金を上げつづけなければいけない。賃金が高くならないうちに母国に返してしまう。つぎつぎに低賃金の労働者を確保しつづけるための「方便」である。
こういうことも実際に同じ仕事をしている人間にはわかることである。それがわからないなら、一緒に仕事をしていることにはならない。現実に起きていることは、だれにでもわかる。わかっているが、何も行動を起こさない。それがいまの日本である。
アメリカでは黒人が自己主張したが、日本では非正規雇用の人も、子会社の正規社員も、海外研修生も声を上げない。もちろん親会社の正規社員は声を上げるはずがない。なぜか。そういうことをすれば、即座に失職するからである。
安倍の独裁(アベノミクス)は、そこまで日本人を萎縮させている。そういうことを思いながら、見た。だれもが知っている。だれもが実感している。それなのに、その「実感」は声になって広がっていかない。それだけではなく、安倍批判をすると「反日」ということばで集団攻撃が始まる。「アメリカ」をあくまで白人を中心にした国家と見るように、政権批判をしない人だけを「日本人」と定義し、批判する人を「非日本人」として排除する。「反日」を口にする人は、「反日」と他人を排除すれば「愛国者」になったつもりでいる。だが、彼らは「国家」を考えたりはしない。自分の「いま」を守るために、個人的な理由で「反日」ということばをつかって他人を排除する。
日本には、いま「排除」の構造がどんどん広がっている。
(2018年07月28日、KBCシネマ1)
*
「映画館に行こう」にご参加下さい。
映画館で見た映画(いま映画館で見ることのできる映画)に限定したレビューのサイトです。
https://www.facebook.com/groups/1512173462358822/
監督 ラウル・ペック 出演 ジェームズ・ボールドウィン、メドガー・エバース、マルコムX 、マーティン・ルーサー・キング・Jr.
ジェームズ・ボールドウィンの未完の小説をもとにしたドキュメンタリー。
そこに描かれている黒人差別の問題を日本の「非正規雇用」と重ね合わせてみると、それはそのまま日本の問題に見えてくる。
正規雇用(正社員)は非正規雇用の実体をよく知っている。「知らない」と言い張る人もいるだろうが、それは「考えない」ことにしているだけだ。実際に同じ職場で、同じように仕事をしているのだから。
いま、かつての「非正規雇用」あるいは「派遣」は「子会社での正規雇用」という形で隠蔽されつつある。子会社をつくり、そこで正社員として雇う。ただし給料は本社の水準とはあきらかに違う。低賃金である。そうすることで浮かした金を「親会社の正規社員」の賃金に回す。もし、この問題に気づき、「親会社の正規社員」が「格差はおかしい」と言えば、その人はすぐに「子会社」に出向ということになるだろう。出向の場合、賃金は「親会社」での賃金がベースになる。ただし、ずーっと同じ基準が適用されるわけではなく、賃金改定のたびに「子会社」の基準が適用される。つまり、切り捨てられるのである。そういう仕組みを知っているから、「親会社の正規社員」は何もいわない。自己保身に懸命で、いま起きていることに目を向けない。そればかりではなく「派遣」が「子会社での正規雇用」という形で身分保証ができたのだから、それはいいことだ、と経営者の代弁さえする。
また海外研修生という形での「雇用」も重ねて見ることができる。低賃金で労働力を確保するために、海外から「研修生」を受け入れる。「研修生」は日本で学んだ技術を母国に持ち帰り、母国の発展につなげるという「名目」でつけられた「名称」に過ぎない。労働力として恒久的に受け入れる(移民として受け入れる)と賃金を上げつづけなければいけない。賃金が高くならないうちに母国に返してしまう。つぎつぎに低賃金の労働者を確保しつづけるための「方便」である。
こういうことも実際に同じ仕事をしている人間にはわかることである。それがわからないなら、一緒に仕事をしていることにはならない。現実に起きていることは、だれにでもわかる。わかっているが、何も行動を起こさない。それがいまの日本である。
アメリカでは黒人が自己主張したが、日本では非正規雇用の人も、子会社の正規社員も、海外研修生も声を上げない。もちろん親会社の正規社員は声を上げるはずがない。なぜか。そういうことをすれば、即座に失職するからである。
安倍の独裁(アベノミクス)は、そこまで日本人を萎縮させている。そういうことを思いながら、見た。だれもが知っている。だれもが実感している。それなのに、その「実感」は声になって広がっていかない。それだけではなく、安倍批判をすると「反日」ということばで集団攻撃が始まる。「アメリカ」をあくまで白人を中心にした国家と見るように、政権批判をしない人だけを「日本人」と定義し、批判する人を「非日本人」として排除する。「反日」を口にする人は、「反日」と他人を排除すれば「愛国者」になったつもりでいる。だが、彼らは「国家」を考えたりはしない。自分の「いま」を守るために、個人的な理由で「反日」ということばをつかって他人を排除する。
日本には、いま「排除」の構造がどんどん広がっている。
(2018年07月28日、KBCシネマ1)
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