30 無名の川
この一連目は、こう言いなおされる。
「死」と「詩」が交錯する。「憑かれる」と「心ひかれる」が交錯する。川を挟んでむきあっている。川の「ながれる」という動詞の中で出会っている。「ながれる」は移動するだから、それは「川を越える(むこうへ行く)」と交錯していることになる。
「そこ」とは「こちらの岸」ではなく「あちらの岸(彼岸)」。川を越えた「岸」。
彼らはなぜ、そこに「立つている」のか。「こちらの岸」を見つめるためである。
「彼岸」から見れば、それは「ふるさとの方角へ流れている」ということになる。
嵯峨は、こちらの岸から「ふるさとの方角へ流れている」と、一連目で書いていた。
「ふるさと」と「死」もまた交錯する。
名詞にとらわれるのではなく、「交錯する」という「事実」を見つめる必要がある。「交錯する」という動詞は、ことばとしては書かれていない。しかし、「事実」がそこにある。それにどんな「名前」をつけるか。
この詩には、新しい名前をつけることが「詩を書く」という定義が隠されている。
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谷川俊太郎の『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
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死への途上に
大きな川が流れている
ふるさとの方角へ流れている無名の川だ
この一連目は、こう言いなおされる。
ただひとり残つているぼくが詩に憑かれるのは
魂のなかをながれるその川の名を知ろうとするからだ
ぼくが死につよく心ひかれるのは
その川を越えていつた人々がそこに立つているからだ
「死」と「詩」が交錯する。「憑かれる」と「心ひかれる」が交錯する。川を挟んでむきあっている。川の「ながれる」という動詞の中で出会っている。「ながれる」は移動するだから、それは「川を越える(むこうへ行く)」と交錯していることになる。
「そこ」とは「こちらの岸」ではなく「あちらの岸(彼岸)」。川を越えた「岸」。
彼らはなぜ、そこに「立つている」のか。「こちらの岸」を見つめるためである。
「彼岸」から見れば、それは「ふるさとの方角へ流れている」ということになる。
嵯峨は、こちらの岸から「ふるさとの方角へ流れている」と、一連目で書いていた。
「ふるさと」と「死」もまた交錯する。
名詞にとらわれるのではなく、「交錯する」という「事実」を見つめる必要がある。「交錯する」という動詞は、ことばとしては書かれていない。しかし、「事実」がそこにある。それにどんな「名前」をつけるか。
この詩には、新しい名前をつけることが「詩を書く」という定義が隠されている。
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嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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