和田まさ子「ブエノスアイレス」(「something 」27、2018年06月30日発行)
和田まさ子「ブエノスアイレス」は『かつて孤独だったかは知らない』収録作品。
たんたんと「論理」が動いていく。「入っては消えてゆく」はホテルのなかに消えていくではなく、そのご知らない街に行ってしまうということ。「知らない街」だから「消える」。この「論理」の確かさを、どうとらえるべきか。
さらに、その「知らない」と「消える/行く」を、「わたし」の方に方向転換し「わたしもやがて/あなたたちの知らない街に行く」と言い直し、「わたしも消える」を暗示させる。「消える」ということばをつかわずに「消える」と言いなおす。
うまいね。
最終連は、こうである。
手慣れている。
私は、この「手慣れた感じ」が好きではない。安定感があるけれど、タイトルは忘れたが「壺」だとか「金魚」を書いていたときのような、どこへいくのかわからないおもしろさがないからだ。
と和田は逃げているが、否定するから「たやすい」のである。肯定すると、とたんにむずかしくなる。「迷路」を迷路ということばをつかわずに書かないと迷路にならないからだ。
私が和田の詩を最初に読んだころは、そういう詩を書いていた。
いまは「うまい」けれど、見慣れた感じがしてしまう。「手慣れ」は「見慣れ」につながる。
*
評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』を発行しました。190ページ。
谷川俊太郎の『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
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「詩はどこにあるか」5、6月の詩の批評を一冊にまとめました。
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(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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和田まさ子「ブエノスアイレス」は『かつて孤独だったかは知らない』収録作品。
ここから見えるのは向かいのホステル
入れ替わり人が入っては消えてゆく
みんな一泊か二泊かすると
どこか知らない街に
行ってしまう
知らないというのはわたしの方で
わたしもやがて
あなたたちの知らない街に行くのだが
たんたんと「論理」が動いていく。「入っては消えてゆく」はホテルのなかに消えていくではなく、そのご知らない街に行ってしまうということ。「知らない街」だから「消える」。この「論理」の確かさを、どうとらえるべきか。
さらに、その「知らない」と「消える/行く」を、「わたし」の方に方向転換し「わたしもやがて/あなたたちの知らない街に行く」と言い直し、「わたしも消える」を暗示させる。「消える」ということばをつかわずに「消える」と言いなおす。
うまいね。
最終連は、こうである。
キッチンの壁には
ブエノスアイレスの夜の街角で
少年が横向きに立つ大きな写真
ここで迷路に入ったと
もっともらしくいうのはたやすいが
おそらくちがう
懐かしい夢をまだ見ているのだ
手慣れている。
私は、この「手慣れた感じ」が好きではない。安定感があるけれど、タイトルは忘れたが「壺」だとか「金魚」を書いていたときのような、どこへいくのかわからないおもしろさがないからだ。
ここで迷路に入ったと
もっともらしくいうのはたやすい
と和田は逃げているが、否定するから「たやすい」のである。肯定すると、とたんにむずかしくなる。「迷路」を迷路ということばをつかわずに書かないと迷路にならないからだ。
私が和田の詩を最初に読んだころは、そういう詩を書いていた。
いまは「うまい」けれど、見慣れた感じがしてしまう。「手慣れ」は「見慣れ」につながる。
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評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』を発行しました。190ページ。
谷川俊太郎の『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
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(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
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