詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

25 岬から牧場への道(嵯峨信之を読む)

2018-07-04 23:59:36 | 嵯峨信之/動詞
25 岬から牧場への道

壊れるものはみな消える名で残る

 「壊れる」は「消える」と言いなおされ、「残る」という動詞と向き合う。「消える」と「残る」が拮抗する。
 その拮抗の真ん中に「名」という名詞がある。
 「名」は動詞にすると、どうなるか。
 「名づける」(名前をつける)になる。「名」は最初からあるのではなく、「名づける」とき「名」が生まれる。
 「壊れ、消える」ものをそのままにするのではなく、消えるものに名前をつける。そうすると名前が残る。「消える」と「残る」の間には「名づける」という動詞がある。

 「名づける」を「詩を作る」と言いなおすと、何かが壊れ、消えたとしても、そのことを詩にすれば、それが詩として「残る」ということ。



*

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ESTOY LOCO POR ESPANA(8) (番外)

2018-07-04 20:01:43 | estoy loco por espana
Miguel González Díaz



en este viaje a Espana, visite el taller de Luciano. Hablando alli, sabía que Luciano es gemelo. Luciano me mostro un folleto de la exposicion.
"ten, este es Miguel. el y yo se parecen, ¿no? "
por supuesto que sois gemelos, por lo que se parecen.



sus trabajos tambien son similares. sus pasons son delgados como obras de Giacometti.
hay un pueblo en el trabajo de Luciano. pero en el trabajo de Miguel hay dos personas. dos personas estan equilibrando. tal vez Miguel es consciente de que es un gemelo.



Miguel esta haciendo obras que usan la pintura de Velázquez como tema. Una mujer.
ellos tienen dos tendencias
una es hacer simetría. El otro es romper la simetría. Me gusta este ultimo.
de cualquier manera, Miguel consciente simetrico o equilibrio.
hace que los gemelos sean asi?
cuando vere su trabajo realmente, podre tener otra impresion.


*


 今回のスペイン旅行で、最初に訪問したのはルシアーノのアトリエ。そこで話していて、ルシアーノは双子だと知った。ルシアーノが展覧会のパンフレットを見せてくれた。
 「ほら、私と彼は似てるだろ? ミゲールだ。」
 もちろん双子だから似ている。


 作品も似ているところがある。人物がジャコメッティの作品のように細い。
 でも、ルシアーノの作品には人物はひとり。ミゲールの作品にはふたりが登場する。ふたりはバランスをとっているように見える。ミゲールの方が「双子」(二人)の感覚が強いのかもしれない。



 ミゲールはベラスケスの絵を題材にした作品もつくっている。女官。
 これには、二つの傾向がある。一つは左右対称を感じさせるもの。もうひとつは左右対称を破るもの。私は後者の方が好きだ。どちらにしろ、左右対称、バランスが意識されている。
 双子であることが、そうさせるのか。
 実際に作品を見ると、また違った感想を持つかもしれない。







 スペイン旅行記を一冊にしました。
 ミゲールの作品は紹介していないけれど、双子の兄弟のルシアーノの作品などを紹介しています。
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ロマン・ポランスキー監督「告白小説、その結末」(★★★)

2018-07-04 18:55:53 | 映画
ロマン・ポランスキー監督「告白小説、その結末」(★★★)

監督 ロマン・ポランスキー 出演 エマニュエル・セニエ、エバ・グリーン

 うーん、気持ち悪さは「ローズマリーの赤ちゃん」以来か。途中から「ミザリー」みたいな雰囲気になるが、気持ち悪い分だけ、この映画の方が上手か。

 「事実にもとづく小説」というのが最後に出てくるが、この「事実」というのがくせものだね。
 作家(エマニュエル・セニエ)に近づいてくる「エル」と名乗るファン(エバ・グリーン)はゴーとライターをやっている。この段階で、すでに「ニセモノ」がまぎれこむのだが、「ニセモノ」だけれどゴーストライターは「事実」。でっちあげの話かもしれないけれどね。そのエバ・グリーンには架空の友達キキという人間がいる。ということは、そのキキというのはエバ・グリーンがでっちあげた「ニセモノ」。でも、それは「事実」として存在する。
 で、問題は。
 「エル(彼女)」は実在する人間なのか。それともキキのように架空の存在なのか。エマニュエル・セニエの空想なのか。架空の人間なのか。空想・架空だとしても、エマニュエル・セニエにとっては「事実」として存在する。
 「事実」というのは、なかなかむずかしい。
 この映画の主人公の作家は、家庭の秘密(個人的事実)を書いて、小説家として成功した。そのときの「事実」とは、読者にとっては単なる「事実」だが、家族にとっては「存在してほしくない事実(事実であるけれど、それは公開したくない事実)」。言い換えると、家族にとっては、それは「客観的事実」であるよりも前に「主観的事実」なのだ。できることなら、「主観的事実」のままにしておきたい。「客観的事実」にしたくない。
 これが、問題をややこしくする。
 「主観的事実」というのは「客観的事実」よりも重い。個人にとって、重くのしかかってくる。
 さて、ここから、少し逆戻りするのだが。
 「エル(彼女)」がキキと同様に、客観的事実ではなく主観的事実だとすると、どうなるのか。殺鼠剤で毒殺を図るというのは架空の物語で、自殺を図ったというのが事実になってしまう。「エル(彼女)」がゴーストライターとして書き上げた小説が主観的事実ではなく、客観的事実になる。
 そして、その主観と客観を区別する(判断する)のは、作家(エマニュエル・セニエ)でしかない。

 この主観的事実、客観的事実というのは、ロマン・ポランスキーにとっての、永遠の課題なんだね。アメリカを追放された原因の「少女暴行」。これも、主観的事実と客観的事実のあいだで揺れ動いているということだろうなあ。

 それにしてもなあ。
 ポランスキーの「好み」って、どうも健康的じゃない。病気(?)といいたくなるような、いやあな感じを含んでいる。「ローズマリーの赤ちゃん」のミア・ファロー(その後、ウディ・アレンと結婚したけれど)も何か暗くて気持ち悪い感じがするけれど、今度のエバ・グリーンは、もっとすごい。私は、あ、一緒にいたくない、と思ってしまうんだけれど、ポランスキーには刺戟的なんだろうなあ。
 しかし、こんなふうに、こんな女は嫌い、近づきたくないと実感させる映画というのは、きっといい映画。この女に近づきたいと思わせる映画よりも、すっと変なパワーをもっている。
 そうわかっていても、私は★4個にはしない。


 *

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