「青の奇跡」は居酒屋と小さな芝居小屋を兼ねたようなアングラ色漂うスペース。不二稿さんご自身がやっておられる店だそうです。
本当は午後4時から上映ということで、その時間に合わせて自転車で出かけたのですが、お店に入ると「新しく編集し直していて、それがもうすぐ届くのですが、上映開始は30分ほど遅れます」という。その後、監督も駆けつけて来て「どうもすみません、もう少しお待ちください。本当はあと一箇所、手を入れたいところがあるのだけど……」というような意味のことをおっしゃる。一度完成しても、手を入れ続けているらしい。
やがて始まった映画は大変に不気味で気色の悪いものでした。途中、「オレの内臓は映画が終わるまで持ち堪えられるだろうか」と心配になったほど。
血と贓物と暴力とフリークが織り成す地獄の祝祭。
町工場と養豚所のある線路沿いの小さな街の路地の中央には不思議な井戸があり、大きなネジでしっかりと蓋がされている。しかし、その蓋を突き破って時折り、水だか血だかが噴出してくる。
森で目覚めた殺人鬼(記憶をなくしているらしい)がその街に住みつき、それを追って刑事もやって来る。やたらに食事をさせられ並はずれて大きくなった小学生、その小学生にいじめられる精神的に発達の遅れた男、警官を誘惑する女装の男子高校生、一家惨殺事件でひとり生き残った女などが入り乱れるうちに、暴力沙汰が起き、工場長は殴り殺される。工場従業員が死体を隠すが、騒ぎはさらに拡大してゆく……。
寺山修司の映画をもっと絶望的に、その上、血まみれにしたような感じとでもいえばいいでしょうか。気持ちの悪い映像ですが、よくこれほどのイメージが作れるものだと感心しないわけにはいきませんでした。
物語の根底には「畜生」としての人間への凝視があるのでしょう。何が人をこれほどまでに悲観的にさせるのか、考えさせられてしまいました。
一度観ただけでは、よくわからないところも多い。かといって何度も観る気には、今のところ、なれません。なんとも困った映画というべきか。
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