金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

売りの5月は杞憂に終わりそうだ

2014年05月28日 | 投資

米国株にはSell in Mayという格言があるが、今年に関しては杞憂に終わりそうだ。

昨日S&P500は最高値を更新、11.38ポイント(0.6%)上昇して1,911.91ポイントで引けた。いくつかの経済指標が好調だったことや、ECBの利下げ予想がプラスに働いた。

4月の耐久消費財受注は市場予想(▲0.7%)に対し、+0.8%。またカンファレンス・ボードが発表した5月の消費者信頼感指数は80.0(市場予想の中央値と一致)と前月の81.7より上昇した。これは2008年以降で2番目に高い数字だ。

20の大都市圏のケースシラー指数が0.9%(予想は0.7%)と上昇したことも好材料だった。

ECBのドラギ総裁はユーロ圏のデフレ懸念に言及し、来週にも利下げの可能性があると示唆し、欧州株が堅調だったことも好材料だった。

ということで比較的順調に米国株は5月末を迎えそうである。

そして日本株も平穏な5月末を迎えそうである。

もっともモノゴトは下駄を履くまで分らない。

紀元前44年の3月15日に暗殺されたシーザーは占い師から「3月15日は危険な日だから気おつけなさい」と忠告を受けていた。元老院に向かおうとするシーザーに妻が「おやめにになったら」と懸念を示したところ、シーザーは「3月15日になったけれど何も起こらないじゃないか」と反論した。これに対し妻は「3月15日はまだ終わっていません」と答えたという話が残っている。

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エマージングマーケットは再びキャッチアップ?

2014年05月27日 | 投資

「金は天下の回り物」というが、投資家の資金はめまぐるしく世界を回っている。

昨年5月に米連銀が債券購入プログラムの縮小を示唆してから、それまでエマージング市場に流れ込んでいたホットマネーが流出し、新興国の株式パフォーマンスは先進国に比べて大きく悪化した。また今年に入ってアルゼンチンのペソやトルコリラが急落したことも痛手になっている。

日本株も年初来12%ほど下落しているが、その大きな理由は外国人投資家が日本から資金を引き揚げていたことによる。日本株は中国など新興国経済の代理指標になっているのだろう。

だがCNBCによると目端のきいた投資家は再びエマージング市場に資金を戻し始めている。キャピタルエコノミストによると、先月4月は過去1年間で初めてエマージング市場のETFと投資信託で資金流入がプラスになった。

資金はエマージング市場全般に流れ込んでいるというよりは、インドやインドネシアなど特定の国に流れているようだが、それでもエマージング市場全体のパフォーマンスは先進国のそれと拮抗してきた。

もっとも中国経済にはハードランディングするリスクがあるので、大方の人はエマージング市場全体が先進国のパフォーマンスを上回るとは考えていない。

日本株については、4月の消費税引き上げによる景気減速が予想より少ないのではないか?という見方広がりつつある。日銀のインフレ予想は市場予想より強気で今のところ2015年に2%の目標を達成することに自信を持っていると思われる。

とすれば早期にこれ以上の金融緩和が行われる見込みは高くないが、仮に特別の支援なく消費税引き上げを乗り切ることができるとすれば、長期的に投資家にはプラスの話であろう。

金は再び日本にも戻ってくるかもしれない。

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GPIFの株式運用拡大、期待と懸念

2014年04月21日 | 投資

先週水曜日に麻生財務相が「6月にGPIFの動きがでて、それにつれて外国人投資家が動く可能性がある」と発言。この発言を受けて日経平均は400円を超す値上がりをした。私たちの年金資金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、6月に基本ポートフォリオを見直し、現状6割を超える国内債券運用を削減し、株式投資に資産を振り向けるのではないか?という憶測で日本株が買われた訳だ。

GPIFが株式運用を増やすことになれば、短期的には株価は上昇することは間違いないだろうから、(多少なりとも日本株を持つ身としては)歓迎したいところなのだが、単純に喜べないところがある。

その一つはGPIFから大量の資金が株式市場に流れ、株価が上昇するということで、今でも規律と緊張感を欠いている株を発行している企業が益々弛緩する恐れを感じるからだ。

先週金曜日に生保協会は「株式価値向上に向けた取り組みについて」http://www.seiho.or.jp/info/news/2014/0418.htmlという調査結果をリリースしている。

このことはWSJも取り上げていた。外国人投資家が注目すると思われる記事のポイントを紹介すると次のとおりだ。

  • 日本の金融機関は日本株の約3割を保有し、生保の保有比率は4%。今までのところこれら金融機関は企業が稼いだ金の使い方にあまり口を挟んでこなかった。
  • 金融機関を除く日本企業が保有している現預金は220兆円を超える。しかし生保協会のレポートによると、日本企業は純利益のたった10%しか自社株買いに充当していない(米国では純利益の半分以上を自社株買いに充当するのが一般的)
  • 生保協会は500社以上の企業を調査対象している(正確にいうと時価総額上位1,129社にアンケートを送り575社が回答してきた)が、その半分以上の企業がROE(自己資本利益率)の目標を定めていなかった。また目標を定めている企業でもその2/3以上の目標は10%以下だった。
  • 生保協会によると、米国企業のROEが16%なのに比べ、日本企業は5%に過ぎない。自己資本利益率が低い原因は、日本企業の売上高純利益率が2.1%と米国企業の8.5%に較べて極めて低いことに起因する。

なお生保レポート(サマリー)を読むと、配当水準については6割弱の投資家は「半分程度は満足できる水準」としているが、3割強の投資家は満足できる企業はあまり多くないと判断している。

投資家と企業で意見の対立が顕著なのは自社株買いだ。投資家の73%がもっと積極的に自社株買いを行うべきだと考えているのに対して64%の企業は自社株買いに消極的である。

話を本題に戻すと、もしGPIFが上場企業の株式全部を時価ウエイト比率で買う(つまりTOPIXに投資する)ような投資をすると、「株主から見て良い会社」の株価だけでなく「株主から見て悪い会社」(つまりROEが低く、株主還元度合いも低い会社)の株価もそれなりに上昇する可能性がある。つまりGPIFの巨大資金が「株主から見て悪い会社」の経営陣を甘やかすことになる可能性があると私は考えている。

もっともGPIFも単純なインデックス投資だけではなく、優良企業をピックアップしたJPX日経400などの新株価指数に投資するから、良い会社と悪い会社の株価の差は拡大するかもしれない。

GPIFの日本株投資が企業の株主への利益還元に対する緊張を高める上でプラスに働くのであれば歓迎だが、そうでないと我々国民が積み立ててきた年金原資は効率の悪い企業の延命策に使われる可能性もあるのではないか?というのが私の懸念だ。

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ユニクロ、商品は割安でも株価は割高

2014年04月15日 | 投資

このブログはWSJの記事Uniqlo Parent Fast Retailing is No Bargainをベースに書いている。

記事が書かれた先週金曜日時点でユニクロの親会社ファーストリテイリングの株価は今年に入って22%下落した。同社の中間決算(2月)は24%の増収ながら純利益は1.4%の減益だった。これは値引き販売強化の結果だ。

同社の予想収益に基づく株価収益率PERは34倍で、世界的にみた競争相手であるスペインのインディテクス(ザラ)の25倍や米国のギャップ13倍よりも高い。

さらに株価との相関関係が高いとされるPEGレシオ(株価収益率を一株当たり株価の予想成長率で割ったもの)でみると、ファーストリテイリングは3.5、インディテクスは2.5でギャップは1.1だ。

PEGレシオが低ければ割安、高ければ割高である。

ピーター・リンチ氏は「株価が適切に評価されている企業の株価収益率は成長率に等しい」と述べている。

PER=成長率として、両辺を成長率で割ると

株価成長率/成長率=PEGレシオ=1となる。つまり理論的にはPEGレシオが1以上であれば割高、1以下であれば割安と考えらえる訳だ。

業種によってPEGレシオは異なるが、同業の中でもファーストリテイリングは相当割高と判断される訳だ。

記事はファーストリテイリングが日経平均225の1割を構成する銘柄であるため、同社の株価下落が日経平均225の下落を加速する問題も指摘している。

このような問題を避けながら効率よく日本株に投資するのであれば、JPX日経インデックス(上場約3,400社の中から投資家に魅力的な400社を選択した指数。時価総額ベースで加重平均)のETFを購入する方法が考えられる。

またPEGレシオの低い株を集めるGARP(Growth At a Reasonable Price)戦略に基づくアクティブ投信もあるようだが、これについては私は詳しくないので今日の話はこのあたりで終わりにする。

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make or break the market?

2014年04月14日 | 投資

今朝(4月14日月曜日)テレビ東京のモーニングサテライトで先週米国株、特に相場を牽引してきたモメンタム株が急落した原因の一つに納税のため株を売る人が多かったのではないか?という分析を紹介していた。納税資金のための売りがどれほど影響したかどうかは分らないが、今週も市場は米国企業の決算発表で大きく動く可能性がある。

第1四半期の決算発表を控えているのはシティ、コカ・コーラ、IBM、グーグルなどでアナリストの予想では利益は前年同期比1.6%の減少である。

もっともCNBCによると過去3年間を見るとS&P500社の71%の会社はアナリストの業績予想を上回っているので、この傾向が今年も続くとすると1.8%程度の増益になるのではないか?という見方もあるようだ。

また企業業績がぱっとしない場合はそれが冬の荒天の影響によるものか景気が減速していることによるものか等の解釈で市場は動きそうだ。

第1四半期決算が相場を作る(make the market)か相場を崩壊させる(break the market)のカギを握るようだ。

なおmake a marketというと特定の証券について証券会社が売り買いの値建てをすることを指す。

証券会社といえば、ここしばらく日本株は下落する見込みだが、このような時期になると証券会社から「買い場ですよ」という勧誘の電話がかかってきそうだ。これを賢明なアドバイスと考えるか法律に違反しない一種の振込詐欺と考えるか?さてどちらだろう。

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