金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

消費者物価の大幅上昇、市場に与える影響は?

2014年06月18日 | 投資

昨日(6月17日)米国労働省が発表した5月の消費者物価は前月比0.4%上昇。これは過去1年以上で最大の上昇幅だった。前年比では2.1%の上昇でこれは連銀が物価上昇率のターゲットとしてきた年2%をわずかに超えるレベルだ。

もっとも連銀が物価指数より重視しているいわれる商務省のPCE指数では1.6%とまだターゲットより低い。もっともPCE指数とCPIの間には過去25年間の平均では0.5%の差があるといわれているので、両方の指数は整合的だと考えられる。

今日明日と続くFOMC会議で連銀が政策金利の引き上げ時期を予想(2015年のある時点)より早める議論がでるのではないか?という観測からドルが買われている。

注目点は今日リリースが予定されている連銀の経済成長とインフレ見通しだ。

ドル高・円安基調なので、日本株は堅調だと私は思う。最近の日本株の動きの中で私が注目しているのは野村證券など証券会社株の底堅さだ。多少市場が下げる局面があってもしっかりしている。ベータ値の大きい証券株は市場の動きを先取りすると考えられる。アベノミクス第三の矢に対する内外投資家の一定の評価・GPIFの株式配分引上げ、ドル高基調などで日本株上昇への期待が高まっていることの表れだろう。

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笑いそうになった証券会社の粗品ティッシュ

2014年06月14日 | 投資

昨日(6月13日)日本橋に出かけたついでに、以前から「来てください」と言われていた某証券会社のいわゆるVIPルームに立ち寄った。VIP扱いされるような預かり資産がある訳ではないので多少気が引けたが、セール担当女性が頻繁に電話をくれるので立ち寄った次第。比較的新しい複合ビルの十数階にあるそのフロアは中々お金のかかった作りだ。エレベータホールやエレベータの中に行き先の案内がない。案内がないのもちょっと秘密クラブ的でVIPをくすぐるものがあるのかもしれないが、一般的には不便だろう。

しばらく雑談して帰り際に粗品としてくれたのが、その証券会社の名前がデカデカと入ったサランラップとポケットティシューだった。どちらも良く使う消耗品なので有難いのだが、VIPルームの豪華な雰囲気とまったく合わないので思わず笑いそうになった。

店舗を構える証券会社は内装にお金をかけて豪華な雰囲気を作り出している。自宅に近い田無駅前の野村證券なども場違いなほど内装にお金をかけている。訪問する顧客や見込み客のVIP心をくすぐる仕掛けなのだろうが、実質主義の私からすると無駄なお金をかけている以外の何物でもない。そのお金の出どころは株の売買を委託する顧客が支払う手数料から出ているのだから、個人的には「内装に無駄なお金をかけないで委託手数料を安くする方が良いですよ」と言いたいところである。

店舗にお金をかけないで委託手数料や信託報酬を安くしている意味ではネット証券やネット投信の方が実質的なメリットがある。当然私もネット証券(ないしは大手証券会社のネット取引)やネット投信を中心に使っているが、某証券会社もたまにIPO銘柄などを回してくるので、多少おつきあいをしている。

しかしこのような「店頭(ないしはセールスパーソンによる勧誘)+高い委託手数料を敬遠する顧客を引き留めるための引受銘柄の紹介」といったビジネスモデルが長続きするとは思えないのである。

今国内株式や外国株・外国証券への資産配分比率が話題になっているGPIFだが、その過去7年間(2013年まで)の年平均運用利回りは2%を切っている。プロがやってもこの程度の利回りなので、一般の個人投資家が1.5%以上の手数料(投信の信託報酬など)を支払って証券会社や投信委託会社に運用を委ねても、実質的なリターンは微々たるものだろう。個人投資家がリスクをとって稼ぐグロスの運用成果の大きな部分は証券会社等に流れ、それが豪華なVIPルームにつながっているのである。

「リスクマネーを証券市場に呼び込む」こともアベノミクスの一つの看板。そのことには基本的に賛成なのだが、あくまでお金を流し込む先は株式市場であり、その先の事業会社でなくてはならない。別の言い方をすると、手数料等で証券会社に流出する水漏れをminimaizeしなければならない、と思う。そのためには個人投資家が賢くならないといけないのだが、そのようなことは証券会社や銀行では絶対に教えてくれないのである。

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GPIFの資産配分変更、次の影響は?

2014年06月11日 | 投資

6月初め頃、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が資産配分を見直し、国債運用比率を下げ、株式運用比率を上げるというニュースが流れてから日本株が上昇を続けている。昨日は利食いに押されて、日経平均は129ポイント(0.85%)下落したが、私の小さなポートフォリオを見ていると、相場上昇を牽引してきたベータ値の高い株が売られて、出遅れていた株が買われているようだった。しばらくこのような動きで株価を固めていくのではないだろうか?

GPIFの資産配分変更は当然のことながら外国人投資家の関心も高い。それは単にGPIFが126兆円の年金資産を運用する世界最大の年金基金というだけでなく、日本の企業年金のポートフォリオの一つのモデルになっているので、GPIFが資産配分を変えると企業年金が追随する可能性が高いからだ。

株式市場は先取りを常とするから、GPIFの資産配分変更が日本株を押し上げる効果は既にある程度先取りしたと見るべきだろう。

GPIF運用委員長の米澤氏はWSJのインタビューに次のように答えている。

  • 個人的には新しいポートフォリオを9月か10月に構築する必要があると考えている。遅らせる理由は何もない。
  • 資産配分比率の変更は、日本国債の比率を現在の60%から40%に減らし、国内株・外国株(各々12%)を17%に増やし、外国債券を11%から16%に増やし、新たに代替投資を5%入れるというのが試案だ。ただし今後運用員会での検討をへて変わりうる
  • 資産配分比率を変更する目的は「年金基金のリターンを高め年金支払いの確実にする」「成長企業に資金を流し込むことで国内におけるリスクテイクを刺激する」

GPIFの資産配分変更については色々な批判がある。たとえば「株式運用にシフトすると株価が下落した場合、税金で穴埋めするリスクが高まる」「株高で支持率を維持してきた安倍内閣だが、春先の株価下落・集団的自衛権問題等で支持率が下落している。内閣の支持率低下のために国民の金である年金基金を株式投資に振り向けるのは問題だ」「米澤委員長は学者だが運用の素人だ。素人に国民の年金基金のかじ取りを任せて良いものだろうか?」などだ。

GPIFの過去7年間(2013年3月まで)の平均運用利回りは年1.99%。国債運用比率が6割という比較的保守的な運用によりリーマンショックの影響を緩和することができたと厚労省等は判断している。

だが米澤氏は「デフレの時代は日本株に投資することは必ずしも良いことではなかった。しかしアベノミクスにより日本企業の株式リターンは高まっているし、コーポレートガバナンスの強化にシフトしている。今はインフレヘッジに注目するべきだ」

批判はさておき動き始めたGPIFの資産配分変更。既に初期の影響は6月初旬の日本株の株価上昇に織り込まれたとして次なる影響は何か?

一つは私はGPIFがどのような日本株をピックアップするか?ということにあると判断している。「成長企業に投資する」「コーポレートガバナンスがしっかりした会社に投資する」ということであれば、そのような個別企業をピックアップする必要があるが、国民の年金を運用するGPIFが個別企業を選別することは難しい。そこで考えられるのが、優良銘柄を束ねたJPX日経400のようなインデックスだ。

年金基金が成長戦略を取るということは、資産配分を通じて企業に優勝劣敗を迫っていくということでもある。安売り戦略で生き延びてきた企業は退場を強いられる、ということだ。その結果価格決定力のある企業が生き延びて、インフレ基調が持続するという訳だ。

日本経済がデフレを脱却してインフレに向かうとすれば、GPIFがインフレヘッジ力のある株式比率を高めることは合理的な判断である。だがもしそのシナリオが崩れた場合のリスクは大きい。我々はインフレに対して大きな駆けをすることになる。

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米国株が好調な5つの理由

2014年06月07日 | 投資

昨日(6月6日)発表された米国の雇用統計は、ほぼ市場予想どおりだった。5月の非農業部門雇用者増は217千人。これで4か月連続で20万人以上の雇用者増が続いた。これは2000年1月以降初めてのことだ。失業率は6.3%で変わらず。市場予想は記憶では6.4%だったと思うのでこちらも好感された。

これを受けて米国株は続伸し、ダウ・S&P500は新高値を更新した。S&P500のセクター別では下落したのはディフェンシブ銘柄のヘルスケアだけだった。さらなる株価上昇を期待して、投資家はデフェンシブ銘柄を売り、ベータ値の高い銘柄にギヤをシフトしたのだろう。

恐怖指数と呼ばれることもある株価のボラティリティ指数は10.73と2007年2月以降で最低レベルに下落している。

株価が堅調になってくると、春先に横行したコレクションが起こるだろうという説は影をひそめ、何故株式市場は堅調なのか?といったコメントが増えてくる。USA Todayに5 reasons why the stock market is shining brightという記事がでていた。これから日本株のラリーが続くかどうかを判断する上でも参考になるところがあると思う。

1.モメンタム株の売りが優良銘柄の売りにまで広がらなかった

昨年後半から値を飛ばしてきたバイオやインターネット関連(モメンタム株)は今年に入って大きく値を下げた。しかしモメンタム株の売りはブルーチップ(優良銘柄)の売りには広がらなかったので、株式市場全体がコレクション(10%以上の下落)を起こすことはなかった。「話題株」の温床であるナスダックは、今年に入って一時昨年のピークから8%以上下落した(現在は1%の下落まで回復)が、S&P500の下落は4%にとどまり、現在は高値を更新中である。

★   ★   ★

日本株について考えてみると6月に入って急速に値を戻しているものの春先の下落幅は大きかった。米国株の下落にレバレッジをかけて下落している感さえあった。これは投機筋の売りにBuy in dip(底値買い)で買い向かう腰の入った長期投資家が少なかったことの表れだろう。優良銘柄、たとえばJPX日経400銘柄をコンスタントに買うような機関投資家の資金がコンスタントに流れ込むようになると日本株ももっと安定するのだが・・・・

2.寒波による経済萎縮は解消

第1四半期のGDP成長率はマイナス1%だったが、第2四半期は3%前後の経済成長が期待される。

3.中央銀行の金融緩和策

春先には世界経済の足取りが弱いのも関わらず、主要中央銀行が金融緩和方針を変更するのではないかという懸念を抱く投資家がいた。しかし米連銀は時期尚早な政策金利金利引上げは行わないことを明確にした。またECBも政策金利の引き下げを実施し、必要があれば米国スタイルの債券購入に乗り出すことを検討するとして、その役割を果たした。

★   ★   ★

消費税引き上げのマイナス影響が当面限定的、ということで日銀の早期の追加緩和策実施は遠のいていると思われる。もしこのまま株価が堅調に推移し、資産効果が消費効果に及び始めると追加緩和はないかもしれない。これは私は歓迎するべきことだと思っている。一消費者としては辛い話だが、まだまだ消費税を引き上げないと日本の財政はやがて立ち行かなくなる。その時に備えて日銀は弾を残しておくべきである。

4.ウクライナ危機は制御不能にまで拡大しない

5.弱気筋が見方を変えた

記事によるとコレクションリスクを警鐘していたヘッジファンドAppaloosa ManagementのTepper氏が「市場の主な懸念要因は緩和された」とトーンダウンした。

★   ★   ★

しかし米連銀の幹部の中には、株価のボラティリティが下がり過ぎていることに懸念を示す人もいた。市場参加者のリスクに対する警戒心が交代し過ぎると、相場が過熱し大きなコレクションにつながる可能性があるからだ。

市場が注目していた米国の雇用統計は、米国経済が緩やかながらも着実な回復を続けていることを裏付けるものとなった。だがその回復はまだ主要中央銀行の緩和政策に支えられたものである。株式投資に過大な期待を抱かず、着実に成長を続けるブルーチップを選択する時期なのだろう。

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日本経済のインフレ予想で投資家ギャシフト?

2014年06月03日 | 投資

アナリストやストラテジストなどと呼ばれる人の予想はあまり当たらない。正確にいうと短期的な予想は特によく外れると思う。たとえば昨日(6月2日)日本株は大反発して日経平均は300ポイント以上上昇して、節目の15,000ポイントまで後一歩の14,035.92 ポイントで引けた。昨日のシカゴ先物市場では15,000ポイントを超えているから、今日(6月3日)オープニングで15,000ポイントを超えることは間違いないだろう。

だがこのラリーが始まる前の大方の評論家の予想は今週の日本株の頭は重たいというものだった。

株価が急上昇すると今度はなぜ上昇したのか?という分析が始まる。今朝のWSJにはInflation prospect changes Japanese stock strategiesという記事がでていた。

記事は「幾つかの長期投資家は近頃株価が下がっている環境を利用して、今後のインフレ環境に強い会社の株を拾い上げようとしている」と述べている。そしてそのような動きにより昨日の2%を超えるラリーが起きたと解説している。

先週金曜日に発表された4月の消費者物価指数は消費税増税の影響を取り去った後で前年同月比1.5%の上昇。確かにインフレの到来を予想して、インフレに強い会社の株を仕込んでおく時かもしれない。

ではインフレに強い会社とはどのような会社か?というとWSJは「価格決定力」と「成長余地」を持っている会社だ、と述べている。そして10億ドルのグローバル株式のファンドを運用するWebber氏の日立製作所を推奨する声やアムンディ社の鎌田部長の共英製鋼を推奨する声を紹介していた。

「価格競争力」を持っている会社とは市場占有率が高いとか製品の質が高い等の理由で、原材料価格の上昇により製品価格を引き上げても顧客がついてくる企業のことである。

一般的にいうと競争相手が多くかつ製品の差別化を図り難い原材料(コモディティ)の提供者は価格競争力が低く、ハイエンドな商品の提供者は価格競争力が高いと考えられる。

そのようなインフレに強い会社を探し出して、その会社の株が割安かどうかを判断しながら株を買っていくというのは、好きな人には面白い作業だろう。

だが「それほど好きではない」「時間がない」「強い会社を発見できたとしても、幾つかの会社の株を買うほど資金的に余裕がない」という人には簡単な方法がある。

それは専門家が選んでくれた優良な会社の株をまとめて買う方法である。

その一つがJPX日経400だ。http://www.tse.or.jp/market/topix/jpx_nikkei.html

これは東証と日経が一定の基準で投資家にとって魅力のある400社を選んだものだ。これは上場型投信として東証に上場されている(理論的には1口現在1千円程度から売買できる)ので通常の株式のように簡単に売買できる。

N400

写真のグラフの青線は日経平均株価、赤線はJPX日経400の株価の推移を示している。4月中頃からJPX日経400が日経平均をアウトパフォームしているが、これは優良と思われる会社の株がそれ以外の会社の株よりも買われていることの一つの証拠であると私は考えている。

ただし評論家(私を含めて)の話は当たらないことも多いのでご用心(笑い)

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