今日(2月27日)からベトナムのハノイで米朝トップ会談が始まった。
北朝鮮にとってトップ会談の場所としてハノイはうってつけの場所だ。ベトナム戦争の後、1986年にベトナムは対外経済開放など資本主義的政策(ドイモイ政策)を導入し、経済成長路線を採用した。かっては世界の最貧国の一つと言われていたが、今のベトナムはインテル・サムソン・ナイキなどの世界企業が拠点を置くアジアの製造業のハブの一つになっている。世界中のスマートフォンの10台に1台はベトナム製らしい。
今回の米朝トップ会談が具体的成果をあげるかどうかは分からないが、会談がハノイで開催されること自体象徴性が高いと私は考えている。
それは「北朝鮮が経済開放政策を採用してベトナム型路線を歩く可能性がある」ことを示唆していると思われるからだ。ベトナムと北朝鮮の関係は、金正男暗殺事件以降冷え込んでいた(北朝鮮の元ベトナム大使の息子が事件に関与していたらしい)と言われているが、少し前に北朝鮮が非公式にベトナムに謝罪して関係は改善しつつあるようだ。
また北朝鮮はベトナムのドイモイ政策を研究しているといわれているから、ハノイで米中会談を開くということは、北朝鮮がドイモイ路線の追従を視野に入れているというメッセージ効果があると私は考えている。
もっとも北朝鮮が単純にベトナム型の経済政策を展開できるとは考え難い。それは朝鮮半島が韓国と北朝鮮に分かれているからだ。だが韓国・北朝鮮の距離は以前より縮まっている。もし米朝間で朝鮮戦争の終戦宣言に向けて前向きな議論が進むと距離はさらに縮まるだろう。
世界的な投資家ジム・ロジャースは近著「お金の流れで読む日本と世界の未来」の中で「朝鮮半島はこれから世界で最も刺激的な場所になる」と述べ、北朝鮮のポテンシャルの高さを評価している。
ロジャースは「歴史は韻を踏む」と述べ、北朝鮮がベトナムの経済発展をフォローする可能性を示唆している。
私はロジャースほど朝鮮半島のポテンシャルを楽観視している訳ではないが、米中首脳会談という瓢箪から駒が飛び出す可能性はあるとも考えている。