金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

30人の不明者は話題になるが、8万人の家出人は?

2010年08月05日 | 社会・経済

昨今100歳以上の高齢者で所在不明になっている人のことが話題になっている。今日(8月5日)の朝刊によると100歳以上で所在が確認できない人の数は全国で30人を超えた。所在を確認できない人の数は今後調査が進むともっと多くなるだろう。このような話題性のある数字はニュースになる。

これに関連して日本でどれ位行方不明者がいるのか興味がわいたので調べてみた。警察白書によると平成21年度に提出された家出人捜索願の件数は81,644件で内訳は男性が51,828名、女性は29,816人だ。男女の比率は約63:37だ。家出人捜索願の件数は平成17年の90,650件から一貫して低下しているが、男女の比率はほとんど変化していない。

家出人捜索願が減っていることは好ましいことだが、内訳を見ると非常に気になるデータがある。それは「特異家出人」が一貫して増えていることだ。特異家出人とは警察白書の注記によると「犯罪に巻き込まれたり自殺したりするおそれ等がある家出人」だ。つまり問題含みの家出人である。

この「特異家出人」の数は平成17年の30,125人から平成21年の36,109人へ一貫して増えている。家出人総数に占める特異家出人の比率は17年の33%から21年の44%に高まっている。

つまり「家出人総数は一貫して減っているが、シリアスな特異家出人は増え続けている」ということだ。

30人の高齢者の行方不明者は大きなニュースになるが、その100倍を超える特異家出人の問題も気になるところである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

円は金より強い?

2010年08月05日 | 金融

ファイナンシャル・タイムズにPeter Tasker氏が「円は金よりも優位性で優っている」Yen has edge over gold in battle for supremacyというエッセーを寄せていた。

彼は2008年9月のリーマンショック前よりも今日の価格が高い金融資産は多くはなく、円と金はその代表的なものだと書き出す。そして金と経済成長力が弱く巨大が政府債務を抱える円との間に共通するものはほとんどない、だが円の方が優位性で優っているのではないかと続ける。

金融危機以降、金投資が高まり価格は上昇しているが、歴史的にみると80年代に高値をつけた金は下落を続け、その後の20年間で実質価値は8割以上減少している。

Tasker氏は「不都合な真実は金を保有することは投資ではないということだ。何故なら金は配当を生まないので(金融資産として)本源的な価値はない。金の買い手は単純にBigger fool theoryを信じているからだ」と述べる。Bigger fool theory直訳すると大馬鹿理論とは「自分が買ったものを後で誰かに高く売ることができる」と信じる理論だ。

だが「円は金と違い、非居住者は円をキャッシュにしろ、債券にしろほとんど持っていない。中央銀行の保有も少ない。だから中国政府が最近少額の日本国債を購入したというニュースが円を押し上げる力を持っているのだ」とTasker氏は述べる。

どのようなセクターが日本国債を保有しているか?ということについては財務省がデータを公表している。http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/saimukanri/2010/saimu01-3.pdf

それによると、2009年12月末時点で海外の保有割合は5.2%。ピークは2008んん9月の7.8%だから海外勢の保有比率は低下していることが分かる。

Tasker氏は「円は金のように配当を生まない資産ではない。CPIは1.5%下落しているので円を保有していると購買力において年に1.5%の非課税の利益を得ていることになる」と述べる。

また彼は昨今円高が進んでいるが、実質実効為替レートベースでみるとそれ程円高ではない。瞬間的1ドル=79円をつけた1995年に較べると円は50%はまだ50%の上昇余地があると述べている。

☆  ☆  ☆

円に50%の上昇余地がある・・というのはかなり極論だと私は思っている。例えばエコノミスト誌が発表しているビッグ・マック指数という購買力平価に基く通貨の強弱判断指数があるが、その最新版(7月22日公表)によると円は対ドルでほぼ妥当な価格となっている。その時点でビッグ・マック1個の値段は米国で3.73ドル、日本で320円である。ビッグ・マックから計算される妥当なドル円レートは85.79銭(320÷3.73)だ。当時の市場レートは87.20銭だったから円はドルに対して2%アンダーバリューだったが今の為替水準はほぼビッグ・マック指数に一致するものだ。

因みに人民元の市場レートに基いて中国のビッグ・マック1個の値段を計算すると

1.95ドルで買うことができる。つまりビッグ・マック指数から見ると人民元は約48%ドルに対して過小評価されているということができる。

☆  ☆  ☆

ところで「円は金より強い」といって喜んでいて良いのだろうか?

これについては、立場によって意見は分かれるはずだ。今円を持っている人や年金受給者のように名目価値で将来円を受け取ることが決まっている人にとっては「円の実質価値」が高まることは好ましいことだ。

一方これから職に就く人やローンを抱えている人にとっては、デフレ圧力は応える。

政府が有効なデフレ対策をとらないことは、意図するかせざるかは別として高齢者に優しく若者に厳しい政策を実施しているといわざるを得ない。

だがもう少し長い目でものを考えると国の経済基盤が衰退すれば国の年金も危うくなる。実力を伴う円高は良いかもしれないが、マネーゲームのアヤとしての円高であればそれは危険であるといわざるを得ない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする